ふれていたい、永遠に

たっこ

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一緒に観る?✦side秋人✦2

 テレビ局で榊さんと別れて、蓮のマネージャーの車に乗せてもらった。
 マネージャーのテンションが謎に高かった。車の中でいつもこうだとしたら、蓮は毎日疲れるだろうなとちょっと心配になる。
 車の後部座席に二人で座ると、いつもなら無い距離ができて無性に寂しい。かといってぴったり座ると、誰がどう見ても変なので我慢した。

 蓮のマンションは俺と同じ一LDKで、広さもそれほど変わらない。
 リビングの床に漫画が積んであったり、隣の部屋のドアが開きっぱなしで、ベッドの布団が寝たままの状態なのが丸見えだった。ここで生活してる蓮が見えてきて嬉しくなった。

 帰る途中にマネージャーが買い込んでくれた飲み物などを、蓮が冷蔵庫にしまって、俺はつまみやお菓子をテーブルに広げた。

「秋さん、とりあえずビールでいい?」
「うん、サンキュ」

 ニコニコとご機嫌な蓮から缶ビールを受け取った。蓮も同じビールを持っている。

「あれ、お前二十歳になったばっかりだよな? ビール飲めんの?」
「いつもは酎ハイなんだけど。でも秋さんと同じの飲みたいから」

 ちょっと照れくさそうにする蓮に、来て早々やられた。可愛すぎる。どうしてくれよう。
 
「うわ、もう始まるね。早くテレビ、リモコン!」
「なあ、もう今から写真撮ってアップしようぜ。リアルタイムでファンと楽しむの、どう?」
「うん、SNSよく分かってないけど楽しそう」

 よく分かってない蓮に笑ってしまいながら、テレビをバックに二人並んでスマホで写真を撮った。
 SNSに投稿するとすぐにどんどん反響があって、蓮は俺のスマホを見て目をパチパチしている。

「すごいね。ファンの人たちがこんなに近くに感じるの初めて」
「楽しいだろ? 今日はファンのみんなと一緒に、ドラマ観ようぜ」

 蓮に言った言葉を、そのままSNSにも上げた。
 反響がありすぎて通知が鳴り止まなくなり、蓮と二人で苦笑した。仕方なくスマホはマナーモードに切り替えて、テーブルの端に置いた。

 ドラマが始まった。オープニングの映像と一緒にまた二人並んだ写真をアップ。蓮とお互いに、撮り合った物もどんどんアップした。

「うわ。これ一緒に観るの、恥ずいな……」
「うん、だね」

 ソファを背に、テーブルのつまみが届く位置に二人で並んで座ってテレビを観る。
 ドラマが始まって静かに観ていたら、しばらくして蓮がもそっと動いて俺たちの間に隙間ができた。
 一瞬胸が痛くなったけど、蓮がそんなことする理由ってなんだろう。と疑問がわいて隣に目をやった。
 耳を赤くした蓮が俺の視線に気付いてあたふたしだし、ちょうどCMに切り替わると立ち上がった。

「あ、ビ、ビール持ってくるね」

 冷蔵庫からビールを二缶取り出して、戻ってくる途中でコケて倒れそうになる。
 俺は慌てて立ち上がって蓮を受け止めた。
 
「あっぶなっ」
「ご、ごめん、秋さん」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。あ、ビールセーフかな?」

 赤い顔で目をとろんとさせて、蓮がビールを確認してる。
 
「……お前、まさかもう酔ってる?」
「ん……なんかふわふわしてる」
「まじか、早っ」
「あ、CM終わったよ、秋さん早く」

 腕を引っ張られて座ると、ビールのプルトップまで開けて手に持たされた。
 でもやっぱり俺たちの間には微妙な隙間。

「……なんで離れて座んの?」
「えっ、別に離れてないよ」

 言い張る蓮に密着して座り直すと、また少し離れた。
 俺はムッとして無理やり密着して蓮の腕を取ると、俺の首に回して肩を組ませる。離れていかないように、腕をしっかりつかんで固定した。

「あ、秋さん、駄目だって離れて。お願い」
「やだ。なんで?」
「俺、無理だからっ」
「何が無理なんだよ?」

 すごい拒否をされてショックを受けたけど、蓮のことだからまた何か俺の考えもつかないような理由があるのかも、とも思っていた。 

「だって、今日はキスシーンがあるからっ」
「……え」
「秋さんにくっついて観るなんて、ちょっと心臓が……無理だ、から」

 そうか。今日は、初回のキスシーンの放送日だった。すっかり頭から抜けていた。
 あれが、とうとう今日……放送されるのか。
 俺の腕の力がゆるんだせいで、蓮の腕が離れていったが止めなかった。

 俺の本気のキスが、今これからテレビに流れる。
 初めて一緒にドラマを観るのが、まさかキスシーンの日だなんて……。

 

  
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