ふれていたい、永遠に

たっこ

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抜き合いしよっか✦side蓮✦5 ※

「ん、……ぁ、……きもちぃ……蓮……」

 二人の息がどんどん上がっていく。さっきのしごき合いよりも、はるかに気持ちが良い。
 秋さんが肩にもたれてきて、耳元で漏らす熱い吐息で俺の耳を犯した。
 もう何度も達してしまいそうだったけれど、まだ終わらせたくないと必死でこらえる。

 キスがしたい。
 キスがしたくてもう死にそうだ。
 めちゃくちゃにキスをして、秋さんを愛したい欲望にかられて胸が苦しい。

 秋さんが俺の肩にもたれてるのをいいことに、すぐそこに見える首筋にまたキスをした。自分の気持ちを誤魔化すように何度も何度も。
 秋さんが吐息を漏らしながら、首へのキスがしやすいように少し体を起こしてくれる。そんな秋さんが愛おしい……。首とはいえキスをねだられた気分になる。
 
 あと数センチで唇に届くのに。
 噛みつくように首へのキスを繰り返していると、秋さんの手の動きが止まった。

「…………蓮、キス、してぇの?」
「……え?」
「首じゃなくて。……口に」
「…………っ」
 
 顔を上げた秋さんが荒く息を吐きながら、甘えたような、でもどこか切なそうな目を向けてきた。

「……違う? 首のキスが、何度も顎まで来るから」
「ち、ちが……」
「俺も、したい」
「……えっ?」
「キスシーン観たから、そんな気分なんだろ? …………俺もだから。そうかなって」

 胸にツキンと痛みが走る。
 秋さんもキスがしたいと聞いて期待した。バカだ。俺と同じ気持ちなわけがないのに。

「……あ、違った? ごめん――――」
「いいの? キスしても」

 無しにされそうで、慌てて被せるように口を開く。
 秋さんの気持ちが俺と違っても、それでも演技じゃないキスがしたい。どんな理由でも、俺とキスがしたいと思ってくれたことが嬉しい。

「うん。いいよ。しよっか」

 そう答えた秋さんは、どこかはにかんだような、びっくりしたような表情をしていた。

 あんなに焦がれた、秋さんとのキス。
 もうこれ以上はないというくらい、心臓がバクバクと暴れだす。頬の熱も極限に達したのが分かって焦ったけれど、撮影で散々見られている。今さらだと開き直った。
 
 この体勢では俺からはできない。
 引き寄せようとうなじに手を添えると、それに答えるように秋さんは俺の首に腕をまわし、見つめ合ったあとゆっくりと唇を重ねた。

 唇がふれた瞬間に何かが激しく込み上げてきて、泣いてしまいそうで、こらえるのに必死になった。

 撮影以外で初めての秋さんとのキス。
 唇の柔らかさも温もりも、すでに知ってるはずなのに何かが違う。
 たくさんの人や機材やライトの熱、撮影の独特な空気の中で台本通りに交わすキスと、この静かな二人きりの空間で交わすキスはどこか違う。
 嬉しくて嬉しくて、でも泣きたくなるくらい悲しい。
 
 撮影では、嘘でも想い合っている気分になれて幸せだった。
 でも今は違う。このキスは違う。俺だけ本気で自己満足なキス。
 俺はもう合わせるだけのキスじゃ満足できない。今は台本もなく自由なのに、だからといって深いキスが許されるわけじゃない。

 喜び以上に、悲しみで胸がいっぱいになった。
 
 幸せな気持ちになれると思った自分の愚かさに、嫌気がさす。
 なれるわけがないのに。
 心の通わないキスが、こんなにも虚しくて悲しいものだとは思いもしなかった。
 
 キスをしたって秋さんが俺のものになるわけじゃない。
 それでもいいからしたいと思ったキスなのに、手に入らないものを求めてつらくてたまらない。

 うなじに添えていた手を下ろすと、それが合図だったかのように秋さんは唇を離した。
 顔を見られる前に、慌てて秋さんの胸に顔をうずめる。
 自分が今どんな顔をしてるのか分からない。キスをして傷ついてる顔なんて見せられない。
 この気持ちを知られたくない。
 秋さんを失いたくない。
 せめてニコイチのままでいさせてほしい。

「……秋さん」
「……ん?」
「ありがとう」
「……うん……俺も、ありがと」

 ふわっと、頭を包み込むように抱きしめられた。
 傷ついた心が、それだけで癒やされる。
 胸が締め付けられるくらい嬉しかった。

 そのあとはまた、少し硬さの失ったお互いのものを合わせて二人で一緒にしごいて、秋さんが先に果てた。
 短い小さな悲鳴のようなかすれた声、体の痙攣、脈打つ竿、吐き出された精液。全てが刺激になって、すぐに俺も果てた。

 ふれあえるはずのなかった秋さんとの一夜。
 秋さんの表情も熱も、なにもかも。俺は今日のことを絶対に忘れない。
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