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キスの意味✦side秋人✦1
撮影後、蓮の楽屋を訪れた。
俺のせいでこじれた仲を戻してほしいと、二人に直接はっきりと言おうと思った。
守りたかったニコイチの居場所を失った俺には、怖いものはもう何もない。
「あら、秋人くん」
「あの、話たいことがあるんですけど、少しだけいいですか」
奥のソファに座っていた蓮が、立ち上がってこちらに来た。
「秋さん……どうしたの?」
「どうぞどうぞ。あ、じゃあ私ちょっと出てくるね」
出ていこうとしたマネージャーを俺は引き止めた。
「いえ、マネージャーさんも一緒にお願いします」
「えっ、あ、はい」
立ったまま三人で向かい合って、シンと静まる部屋。
どう切り出そうかと思ったら、想像よりも怖くなって喉が詰まった。
「あ、とりあえず座りましょうかっ。ね、座りましょうっ」
マネージャーに背中を押されて部屋の奥に行き、二人と向かい合ってソファに座った。
「……あの。何から話したらいいのか……頭の中、整理つかないんですけど」
「大丈夫ですよ。ゆっくりで。今日はもう帰るだけなので」
マネージャーはどこか楽しそうに、蓮はどこか不安そうにこちらを見ている。
「ええと……その。蓮が…………俺とのことで、罪悪感みたいなのを感じてるみたいで……」
少しだけ、もうどうにでもなれという投げやりな気持ちで押し掛けたせいで、言葉がうまく出てこない。
「その……蓮とマネージャーさんとの仲がこじれちゃっったみたいで……すみません。でもあの、蓮が気にしすぎなだけなんです。俺たち本当に別に何もないので、仲直りしてほしいんです」
そう切り出した俺に、二人とも困惑した顔を見せた。
「…………秋さん、ちょっとなんの話か、よくわかんない……」
「秋人くん、よくわかんないけど、私たち別に喧嘩とかしてないですよ?」
膝の上で、手をぎゅっと強く握りしめた。
「俺たちの立場上、隠さなきゃいけないからそう言うしかないって分かってます。でも俺…………二人が付き合ってたこと知ってるんです」
室内がシンと静まって、目の前の二人が息をのむように俺の顔をまじまじと見つめていた。
「………………秋さん、それなんの話?」
やっと口を開いた蓮は、怪訝そうな顔を俺に向けた。
「…………やっぱ、知ってるって言っても認めないよな……。俺、聞いちゃってさ。ここで二人が話してるの」
「何を、聞いたの?」
蓮が眉を寄せた。
「台風の日に、俺と何かあっただろってお前が責められてて……。何もなければ急に終わりにしたいなんて言わないだろって」
「…………?」
「お前が、気持ちは言えないから諦めてって。マネージャーさんが…………好きって言ってって。ずっと待ってるのにって」
そこまで言うと蓮がみるみる顔を赤らめて、マネージャーは「ああっ!」と納得したように手をたたいて声を上げた。
それを見て、また胸が苦しくなった。
俺以外の人を理由に赤面する蓮を、初めて見た。
やっぱり俺は、色々と自惚れていたんだな……。
本当にバカだな……と心の中で笑った。
「……蓮はバカみたいに誠実で、罪悪感で苦しかったんだと思います。でも本当にあの日のことは大したことじゃなくて……。俺たちは別に何もないので、二人が別れる必要はないんです」
「待って秋さん、俺と美月さんは――――」
「ちょっと蓮くん黙っててっ」
マネージャーが、蓮の口を手でふさいで俺に言った。
「何もないっていうのは嘘よね。罪悪感を持つような何かがあったってことでしょう? それは見過ごせないわ」
「ちょ、美月――――」
「うるさい。黙ってなさい」
口をふさがれてモゴモゴ言ってる蓮を見て、やっぱり仲がいいんだなと落ち込んだ。
二人を見ていられなくて、俺は下を向いた。
「それは……蓮は何も悪くないんで。俺が、全部悪いから」
「どうして、秋人くんが悪いのかしら?」
「…………その…………蓮は俺に、ただ騙されただけだから」
結局、俺が酔ったフリをしたことを話すことになるんだな、と心が沈んだ。
話さずに納得して仲を戻してほしかったけど、やっぱり無理だった。
俺のせいでこじれた仲を戻してほしいと、二人に直接はっきりと言おうと思った。
守りたかったニコイチの居場所を失った俺には、怖いものはもう何もない。
「あら、秋人くん」
「あの、話たいことがあるんですけど、少しだけいいですか」
奥のソファに座っていた蓮が、立ち上がってこちらに来た。
「秋さん……どうしたの?」
「どうぞどうぞ。あ、じゃあ私ちょっと出てくるね」
出ていこうとしたマネージャーを俺は引き止めた。
「いえ、マネージャーさんも一緒にお願いします」
「えっ、あ、はい」
立ったまま三人で向かい合って、シンと静まる部屋。
どう切り出そうかと思ったら、想像よりも怖くなって喉が詰まった。
「あ、とりあえず座りましょうかっ。ね、座りましょうっ」
マネージャーに背中を押されて部屋の奥に行き、二人と向かい合ってソファに座った。
「……あの。何から話したらいいのか……頭の中、整理つかないんですけど」
「大丈夫ですよ。ゆっくりで。今日はもう帰るだけなので」
マネージャーはどこか楽しそうに、蓮はどこか不安そうにこちらを見ている。
「ええと……その。蓮が…………俺とのことで、罪悪感みたいなのを感じてるみたいで……」
少しだけ、もうどうにでもなれという投げやりな気持ちで押し掛けたせいで、言葉がうまく出てこない。
「その……蓮とマネージャーさんとの仲がこじれちゃっったみたいで……すみません。でもあの、蓮が気にしすぎなだけなんです。俺たち本当に別に何もないので、仲直りしてほしいんです」
そう切り出した俺に、二人とも困惑した顔を見せた。
「…………秋さん、ちょっとなんの話か、よくわかんない……」
「秋人くん、よくわかんないけど、私たち別に喧嘩とかしてないですよ?」
膝の上で、手をぎゅっと強く握りしめた。
「俺たちの立場上、隠さなきゃいけないからそう言うしかないって分かってます。でも俺…………二人が付き合ってたこと知ってるんです」
室内がシンと静まって、目の前の二人が息をのむように俺の顔をまじまじと見つめていた。
「………………秋さん、それなんの話?」
やっと口を開いた蓮は、怪訝そうな顔を俺に向けた。
「…………やっぱ、知ってるって言っても認めないよな……。俺、聞いちゃってさ。ここで二人が話してるの」
「何を、聞いたの?」
蓮が眉を寄せた。
「台風の日に、俺と何かあっただろってお前が責められてて……。何もなければ急に終わりにしたいなんて言わないだろって」
「…………?」
「お前が、気持ちは言えないから諦めてって。マネージャーさんが…………好きって言ってって。ずっと待ってるのにって」
そこまで言うと蓮がみるみる顔を赤らめて、マネージャーは「ああっ!」と納得したように手をたたいて声を上げた。
それを見て、また胸が苦しくなった。
俺以外の人を理由に赤面する蓮を、初めて見た。
やっぱり俺は、色々と自惚れていたんだな……。
本当にバカだな……と心の中で笑った。
「……蓮はバカみたいに誠実で、罪悪感で苦しかったんだと思います。でも本当にあの日のことは大したことじゃなくて……。俺たちは別に何もないので、二人が別れる必要はないんです」
「待って秋さん、俺と美月さんは――――」
「ちょっと蓮くん黙っててっ」
マネージャーが、蓮の口を手でふさいで俺に言った。
「何もないっていうのは嘘よね。罪悪感を持つような何かがあったってことでしょう? それは見過ごせないわ」
「ちょ、美月――――」
「うるさい。黙ってなさい」
口をふさがれてモゴモゴ言ってる蓮を見て、やっぱり仲がいいんだなと落ち込んだ。
二人を見ていられなくて、俺は下を向いた。
「それは……蓮は何も悪くないんで。俺が、全部悪いから」
「どうして、秋人くんが悪いのかしら?」
「…………その…………蓮は俺に、ただ騙されただけだから」
結局、俺が酔ったフリをしたことを話すことになるんだな、と心が沈んだ。
話さずに納得して仲を戻してほしかったけど、やっぱり無理だった。
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