ふれていたい、永遠に

たっこ

文字の大きさ
76 / 173

恋人の距離✦side秋人✦4

 迎えの時間になって、俺たちはエレベーターで駐車場に向かった。
 
「そういえば……俺たち、距離感どう取ればいいんだろ……」
「あ……そうだよね、何も決めてなかった。どうしよう?」

 もう最初から、クランクインからずっと距離感がおかしかったから、こうなったあとで人前での正しい距離がどうにも分からない。
 駐車場の来客用スペースに、マネージャー二人が車を並べて停めていた。
 俺たちが近づくと榊さんが車から降りてくる。
 蓮にあいさつをしたあと、話がありますと言って、蓮のマネージャーの車に三人で乗り込むことになった。後部座席に俺と蓮。助手席に榊さん。運転席に蓮のマネージャー。

「えっと……あの、榊さん……その、俺たち……」
「秋人。分かってる。良かったな」

 目を細めて優しい目で笑いかけてくれる榊さんに、思わず目頭が熱くなった。

「それで、今後なんですが。全力で隠す方針でいいですか? 事務所等にも」
「もちろんですっ! 事務所に報告なんてしたら引き離されますっ!」

 蓮のマネージャーが力強く声を上げた。
 
「では、要は男女の恋愛と同じですから。そういう対応でやっていきます」
「榊さん、言うことが素敵!」

 蓮のマネージャーのテンションが、妙に高すぎる。
 あれ、こんな感じの人だったっけ?

「それから、今後の二人ですが」
「……はい」
「こじれる前の、ベッタリの距離感でやってください。バレないために」

「…………へ?」
「…………え?」
「えっ!!」
  
 バレないためにベッタリ?
 意味が分からなくて二人で困惑した。
 
「変に隠そうとすると余計にバレます。元々距離感がおかしかったのだし、そのままが一番安全だと考えましたがどうでしょうか」
「あ、確かにそうよねっ。そのほうが自然に振る舞えるし、今まで通りなんだからバレようがないものっ!」

 榊さんはすごいことを思いつくな、と心底驚いた。
 まるで隠さなくていいと言われたようなものだ。何も困ることはない。
 俺たちは顔を見合わせた。お互いにゆるんだ顔を隠しきれない。
 蓮が榊さんを真っすぐに見て口を開いた。

「分かりました。……あの、色々とご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、秋人をよろしくお願いします」

 反対されるどころか、榊さんも蓮のマネージャーも俺たちのために動いて協力してくれる。なんて幸せなんだろう。
 これ以上困らせたくはないけれど、でもどうしても今聞いておきたいことがある。

「あの……榊さん。俺…………」
「なんだ?」
「俺……蓮の家に出入りし過ぎたら……やっぱ駄目ですか……?」

 どこでリークされるか分からない。出入りし過ぎれば相当なリスクだ。分かっているけど……。

「本当は……毎日来たくて……。できるなら一緒に住みたくて……。できないって分かってるけど……」
「秋さん……」
「秋人くん……っ!」
 
 やだ、もう、素敵、と運転席からつぶやきが聞こえて来た。

感想 7

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ
BL
帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──! ……男です。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年後。 静は玲に復讐するために近づくが…

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……