ふれていたい、永遠に

たっこ

文字の大きさ
77 / 173

恋人の距離✦side秋人✦5

「なんだ。喜ばそうと思ってたのに、先を越されたな」
「……え?」
「神宮寺くんの知名度が上がったことで、今よりセキュリティの高い所を探していると聞いていてな。事務所で押さえていた秋人のマンションの空き部屋を紹介したところだ」
「…………え。蓮が、同じマンションに住むってこと……?」
「み、美月さん、本当ですかっ?」

 蓮が身を乗り出して声を上げた。

「うん。すぐ入居手続き済ませるからっ。あとはもう自由に部屋を行き来できるよっ。まあ退去はすぐ無理かもだけど、被っても一ヶ月くらい事務所に負担させるからっ」

 それを聞いて、俺は思わず蓮の手をぎゅっと握った。蓮も握り返してくれる。

「秋さん……」
「蓮……」
 
 さっき話していた夢のような話が現実になる。
 信じられなくてまるで夢みたいで、握った手が震えた。

「そろそろ時間だ。秋人、行くぞ」
「あ……は、はい」

 蓮と目を合わせて微笑み合ってから、手をそっと離した。
 それでは、と言って榊さんが車から降りて行く。
 俺も追いかけようとドアに手をかけて、あ、と思い出して蓮のマネージャーに声をかけた。

「あの、マネージャーさん」
「あ、私のことは美月でいいですよっ。もう長ーいお付き合いになるでしょうしっ」
「あ、はい。そうですよね。じゃあ美月さん」 
「はいっ、なんでしょう?」
「あの、なんで榊さんが俺の気持ちを知ってるって分かったんですか?」

 時計を見たらもうちょっと大丈夫そうだなと思って、気になりすぎて聞いてしまった。

「もうね、探り合いをしててすごく感じたのっ。絶対に秋人くんは蓮くんが好きで、榊さんはそれを知ってるって。こっちは蓮くんの気持ちを知ってるし、もう言っちゃいたくて!」

 美月さんは、よくぞ聞いてくれましたとばかりに興奮したように話してくれた。
 
「でも違ったら大変だし、お互いに口を割れなくて本当にもどかしかった! 昨日聞いたら、やっぱり榊さんも同じだったって」
「……そう……だったんですね」
「秋人くん、蓮くんをよろしくお願いしますね」

 と頭を下げた美月さんに、俺も慌てて頭を下げた。
 今度こそ本当に降りようとして、お礼を忘れてたと思い出した。
 
「あ、あと……昨日は、ありがとうございました」
「え?」
「その、荷物を、届けてくれて」
「ちょっ、秋さん……っ!?」

 蓮が驚いたように声を上げて、真っ赤になった顔を手で覆って、はぁぁ、と深く息を吐いた。
 美月さんは「はぅっ」とうめき声のようなものを発して、両手で顔を覆った。

「お、役に立てたようで……っ」
「はい。本当にありがとうございました」
「……もうっ、やめて……秋さんっ」

 力無い声で蓮がうったえる。

「え、だってもうバレバレだよな? よくね?」
「…………よくないよ?」
「え、そっか……なんか、ごめん……?」

 だって付き合ってお泊りして、準備も整ってたら普通するよな?

「ごちそうさまです……」

 美月さんが言った。
 車内の妙な空気に困って、俺は首の後ろをポリポリとかいた。

 
感想 7

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ
BL
帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──! ……男です。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年後。 静は玲に復讐するために近づくが…

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……