ふれていたい、永遠に

たっこ

文字の大きさ
79 / 173

恋人の距離✦side秋人✦7

 …………やばい。もう無理だ。役に……なりきれない。
 抱きしめられた瞬間に、蓮を好きな気持ちがあふれて止まらなくなった。
 今顔を上げたら確実に赤いと思う。
 NGにならないといいけど……。
 そっと顔を上げて、恋人を……蓮を見つめた。

「…………それ……本当……?」
「本当だ。ずっとお前だけが好きだ」
「…………お……れも、お前だけが……好きだ……」
「知ってるよ。……もう、一人で戦おうとするな。二人で戦えばいい」
「……二人で……戦うの……?」
「そうだ。二人でだ。俺は正直お前がいればそれだけでいい。周りが何を言おうとどうでもいい。でもお前が戦いたいなら、一緒に戦う」
「俺のことは……どうでもいいよ……。お前を守りたかっただけだから……」
「じゃあ周りもほっとこうぜ。もう全部どうでもいいだろ?」
「そう……だね。…………うん。どうでもいいかも……」

 二人で見つめ合う。心臓が破裂しそうだ。
 やば……。蓮がめっちゃ、カッコイイ……。
 
「また……俺を……恋人にしてくれる……?」
「……てか、俺は別れたつもりねぇよ。お前はずっと俺の恋人だ」

 そう言って、後頭部を押さえて引き寄せて俺の唇をふさいだ。
 
「……んっ…………」

 キスをしながら見つめ合う。何度も角度を変えて、深い口づけを交わした。
 
 …………あれ? なんか変。
 今までのキスシーンは、蓮とふれあえてただただ嬉しかったのに……何か違う。
 昨日の、今朝の、優しさの塊のような蓮とは違う、男らしい目つきで射抜かれるような感じに、ものすごい違和感。
 役が入り込んだ今の蓮はどこか違う。
 蓮だけど蓮じゃない。
 なんか、浮気でもしている気分になって複雑になった。
 …………そっか。本物の蓮のキスを知ったから。蓮の優しいキスを知ってしまったから。
 俺はもう、蓮の優しいキス以外ときめかないんだ……。



 監督のカットの声と、OKの言葉が響く。

 唇を離して息をついた。
 キスシーンのあとで、初めて冷静になれている自分と出会う。
 蓮を見上げると、少しだけ頬を染めて優しく俺を見つめている。
 いつもと同じ優しい蓮の瞳に、ものすごくホッとした。
 これが俺の蓮だ。大好きな俺の蓮。
 蓮の手を取って指を絡めると、きょとんと俺を見返してきた。
 もう一度キスがしたい。
 別に浮気をしたわけじゃないのに、本物の蓮とキスをやり直したいと思った。
 無性に蓮に甘えたくなった……。
 
「今日も最高に良かったよ、ありがとう! 最後のキスシーン、お疲れ様!」

 スタッフから拍手がわき起こった。
 二人で監督やスタッフにお礼を言いながら、仮設テントまで移動する。
 テントの中の椅子に座ると、俺は蓮に向かって言った。
 
「キスシーン、今日が最後で良かった」
「ん? どうして?」
「もう、やりたくねぇから」
「…………え?」

 俺のセリフに表情を曇らせる蓮を見て、内心ほくそ笑んだ。

「ど……いう意味……?」

 ショックを隠しきれない顔で、恐る恐る聞いてくる蓮の耳元に唇を寄せた。
 
「もう、俺の蓮だけがいい」
「…………ん? え?」

 まだ分かっていない蓮に、もう一度耳元でささやく。
 
「俺の優しい蓮とだけ、してぇの」

 意味を理解したのか、顔をみるみる真っ赤にして「な……」とだけ声を漏らし、口をパクパクさせる。
 たまらなく可愛くて、蓮の頭をワシャワシャと撫でた。

 
感想 7

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ
BL
帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──! ……男です。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年後。 静は玲に復讐するために近づくが…

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……