ふれていたい、永遠に

たっこ

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最終話 LIVE〜みんなの前で✦side秋人✦5

 MCになると京とリュウジがよく喋る。
 俺はいつも、相づちをうったり横やりを入れたり。
 でも今日は違う。俺はどうしても今日ここで、やりたいことがある。

「そういえば、今日は秋人の大好きな人が来てるんだよな?」

 リュウジがナイスなフォローを入れてくれた。
 会場に、悲鳴か歓声か分からない声が響き渡った。

「そうなんだよ! 実は今日、俺の恋人が来てくれましたーーーー!」

 たぶんこの瞬間、会場のみんなが同じ人を連想した。
 はっきりとした歓声だけが、再度響き渡る。

「上がってこいよ! 蓮っ!!」

 割れんばかりの歓声と拍手。
 何も伝えてなかったから、蓮は驚いた顔で俺を凝視して首を横にふった。

「ごめんみんな、照れ屋な蓮をみんなで誘導してくれますか? そこにいまーす!」

 蓮は会場から注目と歓声と拍手を浴びて、諦めたように重そうな足取りでステージまでやってきた。

「俺の恋人、蓮くんでーーす!」
「……ど、どうも。神宮寺蓮、です」

 あきれんーーー!
 蓮ーーー!
 という声が次々と上がった。

「本当、めっちゃ照れ屋だねー」
「ドラマとのギャップやばいな」

 楽屋では俺の変化に驚愕していたメンバーも、何事もなかったかのように蓮を構う。
 蓮を見ると、ちょっとホッとしたように笑みを浮かべた。

「なんかあきれんてさ。ドラマとは立場が逆転してる感じが面白いよな」
「だろ? もう俺、蓮が可愛くって、めっっっっちゃ大好きなの!」

 俺は叫ぶように言って、蓮の手を握った。

「え、え、え、秋さん!?」

 驚いて顔を赤らめてあたふたする蓮に、会場中が笑った。
 俺の発言も行動も蓮の反応も、もはや通常運転。ファンの子たちも誰も驚かない。
 
「あのドラマ、ほんとキスシーンすげー多かったよな」
「あれだけやったら、なんかもう普通にできちゃったりする?」
 
 メンバーの質問に、真っ赤な顔で首をふって「できません!」と蓮は答える。
 
「俺はできるよ? ここでやっちゃう?」

 きゃーーー!
 やってーーー!
 あきれんーーー!
 会場の声がすごいことになった。
 
 俺の言葉に、何言い出すの!? と言わんばかりの顔で蓮が怒り出した。
 
「無理だってっ!! 無理っ!! 今は撮影じゃありませんっ!!」

 ドッと会場が爆笑した。
 本当に可愛くてどうしよう。
 ステージの上なのに抱きつきたくなった。
 抱きついてもたぶん平気そうだけど、それよりも……――――。

「実は今日ここで、ちょっと宣言したいことがあるんだよね。みんな、聞いてくれるーーー?」

 なぁにーーー!?
 という声と歓声と少しのざわめき。
 繋いだ手をぎゅうっと握り直すと、いったい何を言うのかと蓮が瞳をゆらしてオロオロとした。
 声を出すとマイクが拾う可能性があるので、俺は唇だけで、大丈夫と蓮に伝えた。
 
 深く息を吸って深呼吸をする。
 目を閉じて、想像した。

 本番は、二人でタキシードがいいかな。
 神前式で羽織袴もいいな。
 きっと蓮は、どっちも格好良い……――。

 ゆっくりと目を開く。
 俺は、大きく息を吸って、会場に叫んだ。
 
「俺たちはっ!! ドラマが終わってもっ!! これからもずーーーっとっ!! ニコイチでいることをっ!! 誓いまーーーーすっ!!」

 今日一番の歓声と拍手が沸き起こった。
 ざわめきはたぶんない。
 良かった、と安堵する。
 
 俺は蓮を見て、優しく微笑んだ。
 
 伝わったかな。
 伝わったよな?
 蓮にだけ伝わればいい。
 これは俺たちの、人前式。
 ずっとずっと先の……本番までの、仮の結婚式――――。

 蓮の瞳にじわりと涙が浮かんだ。
 ちゃんと俺の気持ちが伝わった。
 俺も嬉しくて泣きそうになる。
 
「異議のあるものはいませんかーーー!?」
 
 リュウジが叫んだ。

 いませーーーーん!!
 まるで事前練習でもしたかのように、奇跡的に揃う会場からの声。
 ぶわっと感情が高ぶって、涙がこぼれそうになる。なんとか必死で耐えた。
 蓮を見たら、同じように耐えている顔。

 やっぱり、キスがしたい。
 今、この誓のあとのキスがしたい。
 
 ほっぺにチュ、くらいならいいかな。
 ファンサービス、ファンサービス。
 アリだよな?
 これはファンサービス。
 自分に何度も言い聞かせた。

 俺たちの人前式。
 大勢の前で誓った言葉は『ニコイチ』だけど、俺たちの中ではもうニコイチは親友という意味じゃない。
 
 蓮を見上げて、ゆっくりと顔を近づける。
 蓮の頬にチュッとキスをした。
 俺たちだけの誓のキス。
 
 蓮はもう驚かなかった。
 感極まったような顔で俺を見つめて、繋いだ手に力がこもった。
 会場の歓声と拍手が、まるで祝福のように降ってくる。

 俺は我慢ができなくなって、マイクの頭を背に押し付けて音を遮断する。
 蓮の耳元に唇を寄せて、小さく小さく、ささやいた。

「蓮、愛してる……」
「お……俺も、愛してる……秋さん……」

 初めて伝えた、愛してるの言葉。
 幻想的にゆれる青い光の粒の中、二人で涙を浮かべて微笑み合った。

 二人で一つのニコイチ。
 もう二度と離れない、ニコイチ。
 俺たちはこれでもう、本当にずっとニコイチだ……――――。



 
 
end.
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