ふれていたい、永遠に

たっこ

文字の大きさ
109 / 173
番外編

デートしたいっ!✦side秋人✦終

「……蓮不足すぎ……」

 やっと食事にありつけたが、当たり前だけど向かい合って座っている。寂しい。

「え? なに?」
「……あ、いや、なんでもねぇ」

 やばい。声に出すつもりはなかったのに思わず出てしまった。誰かに聞かれなかっただろうか。
 ここで慌てると余計にあやしまれるなと思い、冷静を装った。
 蓮にも聞こえなかったんだから大丈夫だろう。

「このあとはどうしようか。秋さん、パレードどうする?」
「うーん、蓮パレード見たい?」
「えっと……アトラクションいっぱいがいいな」

 ちょっと言いずらそうにする蓮に笑ってしまった。
 否定文で返さないところが蓮らしい。

「俺もパレードはいいや」
「あ、良かった」
「よしっ、いっぱいアトラクション行くぞっ」
「やったっ」

 レストランを出て少し歩くと「ああああの、すすすすみませんっ」と、もう今日何度目か分からない呼び止めに合った。
 真っ赤な顔で声をかけてきたのは、俺らと同世代くらいの女性。
 
「ああああの、しゃ、写真撮らせてもらってもいいですかっ?!」

 わざわざ声をかけてきたので一緒に撮ってください、かと思ったら違うらしい。一緒になら断るが、撮る分には構わない。というかみんな勝手に撮ってるのに律儀だなと思って笑った。

「どうぞ」
「ああああの、ず、図々しいお願い聞いてもらってもいいいいいいですかっ!」

 めちゃくちゃ必死でなんか可愛いなと思った。
 蓮を見ると同じ感想を持ったようで、二人で目を合わせ笑った。

「図々しいって何だろう? 言ってみて?」
「あああの、えっと、ドラマの大ファンなんですっ! だからその……手を……」
「手?」
「手を繋いでもらいたいんですっっ!」
「ん? 俺らがってこと?」
「はいっっ!!」

 天使が現れた、と思った。
 蓮とくっつけるっ! やったっ!
 思わずにやけそうになって慌てて顔を引き締めた。

「いいよ。あきれんドラマバージョンね。おっけー」
「え、秋さん本気?」

 目が大丈夫なの? と言っている。手つなぎ写真なんか撮らせていいのかってことだろう。
 あ、やばい。思わず嬉しくて独断で許可してしまった。

「あ、蓮のほうはダメか? NG?」
「え、いや俺よりも秋さんだよ」
「ただのポーズだろ?」

 手を繋いでるところを盗撮されればヤバいが、ただのあきれんポーズだ。問題ない。たぶん。

「ん」

 蓮に手を差し出すと、若干呆れた顔で笑ってぎゅっと握ってくれた。
 やっと蓮とくっつけた。『蓮ゲージ』が急速に回復していく。嬉しくて幸せで顔がゆるむ。写真を撮るために笑顔になってるだけ。大丈夫、そう見えるはず。

 数枚パシャパシャと写真を撮った天使が、「あああありがとうございましたっっ!!」と深々と頭を下げる。

 こちらこそありがとう、と言いそうになって飲み込んだ。なにか声をかけなくちゃと一瞬悩んだとき、わっと大勢に囲まれてしまった。
 今のを見ていた人達が、私も私もと口をそろえて言った。
 蓮と顔を見合わせる。これは全部OKすると大変なことになる。終わりの見えない撮影会になりそうだ。
 そのとき、撮影会でひらめいた。

「あ、じゃあ、今から十分間だけ俺らポーズとるから、撮りたい人は前に集まって自由に撮るっていうのでいいですか?」

 キャー! やったー! と喜ぶ人達。異論はなさそうでホッとした。
 みんなから「ハグしてください!」「腕組んでほしい!」と要望が次々と飛んでくる。
 色々ポーズをとるならさっきの天使も。そう思ってまわりを見渡すと、離れていく背中が見えた。
 待って天使!

「あの! 今写真撮った方! ちょっと待ってストップ!」

 俺が叫ぼうと思ったら蓮が先に叫んでいた。
 「え、私?」と天使が振り返る。

「なんか、ガッツリ撮影会になるみたいだから。せっかくだから全部撮って行ってください」

 優しく天使に笑いかける蓮がめちゃくちゃカッコイイ……本当に大好きだ。俺の蓮。
 天使が嬉しそうに戻ってきた。

「十分間だけね。過激なポーズなしでね!」

 俺の言葉にみんなが笑った。
 リクエストに答えて、ハグに腕組など色々ポーズをとった。
 もう『蓮ゲージ』は満タンで、俺はホクホクだった。
 
 写真を撮られながら、俺もみんなの撮ったその写真がほしいと思った。でももらえるわけがない。俺のスマホで誰かに撮ってもらうかと考えたが、スマホを預けるのは危険だなと諦めた。
 
 約束の十分間が終わると、さっきの天使が言った。

「あああのっ! この写真、SNSにあげてもいいですかっっ?!」

 やっぱり天使だ。俺のほしい言葉がなんで分かるんだ?
 みんなが俺たちの返事を期待の目で待っている。
 
「うん、いいよ。あ、でもちゃんと『あきれん撮影会』って書いてね? 勘違いした週刊誌が騒ぐと困るから」

 ドッとみんなが笑った。良かった、笑ってくれたとホッとする。
 半分本当で、半分うそだ。
 ただ俺が検索しやすくしてほしいだけだ。どうしてもその写真がほしいから。
 ありがとう天使。感謝の目で見ると、天使の目も潤んでいた。喜んでくれたのかなと思うと俺も嬉しくなった。
 みんながお礼を言ってはけていく。
 撮影会に間に合わなかった人達も、諦めるように離れて行った。ちゃんと約束を守ってくれた。みんないい人達だな……と胸があったかくなった。

「ごめんな、蓮。事務所大丈夫?」
「うん、たぶん大丈夫。なんか言われても美月さんがなんとかすると思う」
「……うん、だな」

 その美月さんの姿は簡単に想像できた。

 そのあとは時間いっぱいまでアトラクションを楽しんだ。慌てて自分たち用にお土産を買い、最後は花火を見ながらデートが終わっていく。
 めちゃくちゃ楽しすぎた。デート最高!

「蓮、ありがとな」
「え?」
「今日めっちゃ楽しかった」
「うん、最高に楽しかったねっ」
「また、来ような」
「うん、また絶対来ようね」

 いまくっついてるのは肩だけだ。
 だからまた空っぽになった『蓮ゲージ』はそれほど回復はしないが、もうため息は出ない。
 だってもうこのあとは、俺たちの家に帰るだけだから。
 もう好きなだけイチャイチャできるところに、帰るだけだから。

「早く帰りてぇ」
「うん、帰ろっか」
「ん」

 早く帰ろう、俺たちの家に。
 今日はもう朝までずっと、何も身にまとわずベッドでくっついていたい。
 ひとまず帰ったらすぐにキスがしたい。
 想像だけでゲージが回復していって、幸せすぎるな、と笑みがこぼれた。


 
end.

 
 次回、おまけのモブ視点です。
 
 
 
 
感想 7

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ
BL
帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──! ……男です。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年後。 静は玲に復讐するために近づくが…

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……