ふれていたい、永遠に

たっこ

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番外編

ドッキリ✦side蓮✦1

※※※秋人がめちゃくちゃ弱ります。苦手な方は読まないほうがいいです……。と、一応注意書きを……。※※※



 秋さんが仕事で不在の中、俺の家には美月さんと榊さんが来ていた。
 三人で深刻な顔で黙り込む。

「本当に……断ることは出来ないんですか……?」

 もう何度も聞いているのに、確認せずにはいられない。

「もう無理なのよ……」
「いやでも……どう考えてもできませんよ……」
「あの秋人じゃ、シャレにならないだろうな……」

 榊さんが青い顔をしてるのを初めて見た。
 それくらい、誰もが無理だと思うことなんだ。

「放送事故……いや生放送じゃないからそれはないけど。放送出来なくなる上に全部バレますよ……」
「事前に話してしまいましょうか……」
「やっぱりそれしかないですよ……」
「いや……それは……まずいだろう……」

 俺の手に握られたドッキリの台本を、三人で途方に暮れたように見つめた。
 秋さんの事務所がドッキリのオファーを受け、こちらの社長までもが勝手にOKを出してしまったのだ。
 ドッキリは別にいいが、その内容がひどかった。

「どうしてこんなドッキリ……誰が考えたんでしょうか……。『もし神宮寺くんに別のニコイチ相手が現れたら!』って……嘘でもやりたくないですよ……」

 俺はペラペラの台本をテーブルに投げるように置いた。
 こんなドッキリ……絶対にやりたくない。うそでも秋さんを傷つけたくない。

「やっぱり話しましょう。秋さんにはドッキリにかかったフリをしてもらって。それでいいですよね?」

 マネージャー二人は黙り込んだ。
 分かってる。簡単じゃないことはよく分かってる。事前に話すということは『やらせ』になってしまうからだ。
 でも、世間の思う俺たちのニコイチと、実際の俺たちのニコイチでは意味が全く違う。
 世間は『親友』のニコイチだと思っているが、実際の俺たちは『二人でひとつ』『唯一無二』『二度と離れない』そういう意味の……『恋人』という意味のニコイチだ。
 こんなドッキリ、本当にシャレにならない。
 俺たちは三人で、答えが出ないままずっと黙り込んでいた。


 
「秋さん、風邪ひいちゃうよ、ベッド行こう」
「んー……」

 結局答えが出ないまま数日が立ち、とうとう明日が撮影日となってやっと三人で苦肉の策を考えた。
 ドッキリだから、とにかくヤラセはダメだ。でもそんなことは言っていられないから、もうこの際、最初の驚いた自然な顔を撮れればいい。その後は合図を事前に教えてこっそりネタばらしをしよう……そういうことになった。
 ソファで寝てしまった秋さんを抱きかかえて寝室に移動する。どうしよう……合図の話をしなければならないのに秋さんが寝てしまった。明日の朝、絶対に話す時間を作らなきゃ。
 ベッドに寝かせ、俺も一緒に横になる。
 電気を消していつものように腕枕をすると、ゆっくりと目を開けた秋さんがトロンとした瞳で「蓮……ぎゅってして……」と抱きついてきた。
 秋さんは時々ぎゅってして、と言う。俺はこれに弱い。腰砕けになりそうなほど可愛い。俺がぎゅうっと力を込めて抱きしめると、同じだけ秋さんも抱きしめてくれた。

「蓮、愛してる……」
「秋さん、俺も……愛してる。ずっとずっと……俺には秋さんだけだから……」

 抱きしめる腕にさらに力がこもる。

「ん……蓮……苦し……」
「あ、ご、ごめんっ」
「ど……した? 何かあった……?」

 眠い目を一生懸命開いて、俺を心配そうに見つめてくる。
 秋さん……ごめんね。どうしても、ドッキリは断れなかった。だから少しでも秋さんが傷つかないようにしたい……。

「秋さん、これだけは絶対に覚えていてほしいんだ」
「ん……? なに?」
「俺はどんなことがあっても、秋さんを愛してるから。ずっとずっと秋さんだけを愛してるから。絶対に、それだけは信じてて」

 眠そうだった目が大きく開いて、パチパチとまたたいた。

「蓮、何があった? どうした?」
「秋さん、それから、もし何かあった時のために、合図を考えたんだ」
「合図?」
「うん。俺がいま、演技中だよっていう合図」
「ん? どんな時に使うんだ? それ」
「えっと……」

 ドッキリだよって言ってしまいたい気持ちを、グッと我慢した。

「俺たちの関係がバレそうになった時とか……。慌てて演技してるとこに秋さんに会ったりすると、演技中だって分からないとびっくりすることもあるかなって」
「……うん、確かにな……。で、どんな合図?」
「耳たぶをさわるってどうかな?」

 身体を起こした秋さんに、耳たぶをさわって見せた。
 
「耳たぶ……。もし蓮が耳たぶをさわってたら、演技中なんだな?」
「うん。秋さんも、もしもの時は耳たぶさわってね」
「……ん、分かった。でも急にどうしたんだ?」
 
 不思議そうに、ちょっと怪訝そうに問う秋さんに俺はなにも答えられなかった。
 秋さんを抱き寄せて腕の中に閉じ込める。

「秋さん、愛してる……」
「ん……俺も、愛してる……。……俺……ほんと幸せ……」

 そう言って俺の胸に頬を擦り寄せる秋さんに、胸が苦しくなって涙がにじんだ。
 秋さん……明日すぐ俺を見てね。
 ちゃんと合図送るから、見てね。
 絶対に……見てね。

 
 
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