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京の腕の中で眠りたい ♢壱成♢
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鼻をくすぐるほのかな石鹸とシャンプーの香り。
電話のあとにシャワーを浴びる時間があったとは思えない。
さっきまで仕事だったはずなのにどう言い訳するつもりなんだ、とおかしくなって口元がゆるんだ。
そんな危険にも気づいているはずだ。それでも会いに来てくれた。嬉しい。可愛い、京。
「ノブ。シャワー浴びてくるから。ちょっと待っててくれ」
「じゃあ、一緒に入ろ。俺が壱成の準備したいから」
「……ノブはそんなに準備が好きなのか?」
「好きだよ? 壱成限定な?」
「……ノブがやると、気持ちよすぎて……だな……」
「いいよ、我慢できなくなったらすぐ入れてあげる」
ささやくような耳打ちにゾクゾクし、そのまま耳にチュッとキスをされ、それだけでもう期待で後ろがうずいた。
シャワールームでグズグズにされ、ベッドの上ではドロドロに京に愛された。
京と一緒に過ごす時間は、いつでも俺の心と身体が満たされる。
京の愛に包まれ優しさにふれるたびに、俺はいつもこの上ない幸福感に包まれる。
もうなにがあっても京を手放したくない。……そんなことを心から思っている俺は、本当にマネージャー失格だ……。
バレなければいいという話ではない。わかっている。わかってはいるが、京を手放せない俺を……どうか許してほしい……。
いつものように京の腕の中で幸せの余韻にひたる。
そろそろ京が腰を上げるだろう。そしてスマホのメッセージを見る振りをして『明日仕事が入った』とでも言うんだ。そのあとはきっと『午前中で終わるから午後から会おう』と……。
京が身体を起こしてスマホを手に取った。
「壱成ごめん、明日仕事が――――」
「もう嘘はいいよ、ノブ」
「……っえ」
「俺には理由はわからないが、ノブは泊まることができないんだろ?」
「え、あ……」
「前日から来て泊まってもいいのにそうしなかったのは、なにか泊まれない訳があるんだろ?」
京が真っ青になって必死に言い訳を考えているような顔をする。
「ノブ。理由は聞かないからそんな顔するな。だから、嘘はもういいよ」
「い、壱成……。ご、ごめ……」
京は青ざめてオロオロしていた。
俺は京の手を引いてベッドに再び寝かせ、胸にすり寄った。
「泊まってほしいなんて言わない。一度帰ってもいいから、明日はいつもどおり朝から会いたい」
「壱成……っ」
「それから、次からは休みの前日も会える日は会いたい。……だめか?」
「だ……っだめじゃねぇよっ。だめなわけねぇし……それより……」
「それより?」
「……それ許されたら俺、全部会いに来ちゃうぞ……?」
「俺も、全部会いたいよ。だから会いに来てくれ。いつでも……会いたい」
「壱成……っ。めっちゃ嬉しい……っ。嘘、ついててごめん……。理由、話せなくてごめん……」
息が止まりそうなほど強く抱きしめられた。
京が自分の嘘に苦しんでいるのが痛いほど伝わってきて、胸が苦しくなる。
もう、京だと知ってることを話してしまいたい。
でも、そうしてしまうと俺たちは……そこで終わる。こんなことを続けるわけにはいかなくなる。
ごめんな、京。俺のエゴでお前を縛り付けて……本当にごめん。
お前を愛してしまって、本当にごめんな……。
「ノブが俺を大好きなのは充分知ってるから大丈夫だ。なにかよっぽどな理由なんだろ」
「壱成……っ。ごめんっ」
「もういいって。気にするな」
「壱成っ。マジでほんと、大好きっ」
「俺も、大好きだ」
それでも、京の嘘がひとつ減った。理由は話せなくても、嘘をつくより気が楽なはずだ。
そうか。こんなに簡単だったのか。
会いたいという気持ちを我慢せず、もっと早くこうすればよかった。
「許してやる代わりにさ……。もうひとつ、わがまま言ってもいいか?」
「なに? なんでも言ってっ」
「泊まらなくてもいいから、俺が眠るまでここにいてほしいんだ」
「……い、いっせ……」
京の胸に顔を押し付けるように、さらにすり寄った。
「このまま、ノブの腕の中で眠ってみたい」
「壱成っ。そんなの、これからは毎回そうするよっ」
「休日前だけな」
「毎回っ」
「仕事がある日はだめだ」
「…………っ、……わかった」
ものすごく残念そうに大きなため息をつく。本当に俺は、お前が可愛いよ、京。
「よし、えらい」
「くはっ、褒められた」
二人で顔を見合わせて笑った。
「もう寝る? もう寝るだろ? いいよ、ずっと抱きしめてるからゆっくり寝ろな。鍵はポストに入れるから」
「……ノブ。明日は、ゆっくりでいいからな。ちゃんと寝てから来いよ」
「うんうん。わかった」
絶対にわかってないだろうな、と心の中で苦笑した。
京は俺をぎゅっと抱きしめ頭にキスを落とす。
「おやすみ、壱成」
「……おやすみ、ノブ」
おやすみ、京。
お前に抱きしめられながら眠れるなんて、幸せすぎて怖いよ。
…………眠れるのか、俺。
電話のあとにシャワーを浴びる時間があったとは思えない。
さっきまで仕事だったはずなのにどう言い訳するつもりなんだ、とおかしくなって口元がゆるんだ。
そんな危険にも気づいているはずだ。それでも会いに来てくれた。嬉しい。可愛い、京。
「ノブ。シャワー浴びてくるから。ちょっと待っててくれ」
「じゃあ、一緒に入ろ。俺が壱成の準備したいから」
「……ノブはそんなに準備が好きなのか?」
「好きだよ? 壱成限定な?」
「……ノブがやると、気持ちよすぎて……だな……」
「いいよ、我慢できなくなったらすぐ入れてあげる」
ささやくような耳打ちにゾクゾクし、そのまま耳にチュッとキスをされ、それだけでもう期待で後ろがうずいた。
シャワールームでグズグズにされ、ベッドの上ではドロドロに京に愛された。
京と一緒に過ごす時間は、いつでも俺の心と身体が満たされる。
京の愛に包まれ優しさにふれるたびに、俺はいつもこの上ない幸福感に包まれる。
もうなにがあっても京を手放したくない。……そんなことを心から思っている俺は、本当にマネージャー失格だ……。
バレなければいいという話ではない。わかっている。わかってはいるが、京を手放せない俺を……どうか許してほしい……。
いつものように京の腕の中で幸せの余韻にひたる。
そろそろ京が腰を上げるだろう。そしてスマホのメッセージを見る振りをして『明日仕事が入った』とでも言うんだ。そのあとはきっと『午前中で終わるから午後から会おう』と……。
京が身体を起こしてスマホを手に取った。
「壱成ごめん、明日仕事が――――」
「もう嘘はいいよ、ノブ」
「……っえ」
「俺には理由はわからないが、ノブは泊まることができないんだろ?」
「え、あ……」
「前日から来て泊まってもいいのにそうしなかったのは、なにか泊まれない訳があるんだろ?」
京が真っ青になって必死に言い訳を考えているような顔をする。
「ノブ。理由は聞かないからそんな顔するな。だから、嘘はもういいよ」
「い、壱成……。ご、ごめ……」
京は青ざめてオロオロしていた。
俺は京の手を引いてベッドに再び寝かせ、胸にすり寄った。
「泊まってほしいなんて言わない。一度帰ってもいいから、明日はいつもどおり朝から会いたい」
「壱成……っ」
「それから、次からは休みの前日も会える日は会いたい。……だめか?」
「だ……っだめじゃねぇよっ。だめなわけねぇし……それより……」
「それより?」
「……それ許されたら俺、全部会いに来ちゃうぞ……?」
「俺も、全部会いたいよ。だから会いに来てくれ。いつでも……会いたい」
「壱成……っ。めっちゃ嬉しい……っ。嘘、ついててごめん……。理由、話せなくてごめん……」
息が止まりそうなほど強く抱きしめられた。
京が自分の嘘に苦しんでいるのが痛いほど伝わってきて、胸が苦しくなる。
もう、京だと知ってることを話してしまいたい。
でも、そうしてしまうと俺たちは……そこで終わる。こんなことを続けるわけにはいかなくなる。
ごめんな、京。俺のエゴでお前を縛り付けて……本当にごめん。
お前を愛してしまって、本当にごめんな……。
「ノブが俺を大好きなのは充分知ってるから大丈夫だ。なにかよっぽどな理由なんだろ」
「壱成……っ。ごめんっ」
「もういいって。気にするな」
「壱成っ。マジでほんと、大好きっ」
「俺も、大好きだ」
それでも、京の嘘がひとつ減った。理由は話せなくても、嘘をつくより気が楽なはずだ。
そうか。こんなに簡単だったのか。
会いたいという気持ちを我慢せず、もっと早くこうすればよかった。
「許してやる代わりにさ……。もうひとつ、わがまま言ってもいいか?」
「なに? なんでも言ってっ」
「泊まらなくてもいいから、俺が眠るまでここにいてほしいんだ」
「……い、いっせ……」
京の胸に顔を押し付けるように、さらにすり寄った。
「このまま、ノブの腕の中で眠ってみたい」
「壱成っ。そんなの、これからは毎回そうするよっ」
「休日前だけな」
「毎回っ」
「仕事がある日はだめだ」
「…………っ、……わかった」
ものすごく残念そうに大きなため息をつく。本当に俺は、お前が可愛いよ、京。
「よし、えらい」
「くはっ、褒められた」
二人で顔を見合わせて笑った。
「もう寝る? もう寝るだろ? いいよ、ずっと抱きしめてるからゆっくり寝ろな。鍵はポストに入れるから」
「……ノブ。明日は、ゆっくりでいいからな。ちゃんと寝てから来いよ」
「うんうん。わかった」
絶対にわかってないだろうな、と心の中で苦笑した。
京は俺をぎゅっと抱きしめ頭にキスを落とす。
「おやすみ、壱成」
「……おやすみ、ノブ」
おやすみ、京。
お前に抱きしめられながら眠れるなんて、幸せすぎて怖いよ。
…………眠れるのか、俺。
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