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39 俺との約束は……?
事後の処理をして、冬磨に布団をかける。
脱ぎ捨てられたスーツを着て、冬磨の頬にキスをして寝室を出た。
一瞬迷ったけれど、俺は玄関に行く前にリビングに寄ると、隣の和室に入って仏壇の前にゆっくりと正座をした。
勝手にお線香は……だめだよね。
そう考えて、俺は手だけ合わせた。
あいさつをしてから、冬磨がいつもどれくらい優しいのか、俺がどれほど冬磨を好きか、ご両親に報告した。
また冬磨に長いって笑われるかな?
そう思いながら最後に一礼をして、和室を出た。
リビングを出ようとして、ローテーブルの上にある冬磨のスマホに気づいた。
冬磨の目覚ましはスマホかな。目覚まし時計かな。もしスマホなら、このままだと明日寝坊するかも……。
余計なお世話かもしれないと思いながらも、俺は勝手にさわってごめんなさい、と心の中で謝って、冬磨のスマホを手に取り寝室に戻る。
冬磨はさっきの状態から微動だにしないで眠っていた。枕元にスマホを置く。冬磨の涙が乾いていてホッとした。
「冬磨……また、明日ね」
聞こえないとわかっていても声をかけて部屋を出た。
鍵はどこかな……。玄関の棚を見ると、カゴの中にいろいろ鍵が入れてあるのが目に入る。
車の鍵、自転車の鍵……。冬磨、自転車も乗るんだ、と思わず笑みがこぼれる。
家の鍵はこれかな。
俺はそれを手に取って靴をはき、音を立てないように玄関を出てドアを閉め、鍵をかけた。鍵はポストに入れる。
これで大丈夫だよね。
俺はスマホを取り出し、冬磨にメッセージを打った。
『明日も仕事だから帰る。鍵はポストに入れたから』
素っ気ない……。でもビッチ天音ならこうだよね。仕方ない。
冬磨、起こしちゃったらごめん。お願い、起きないで寝ててね。そう願いながら送信を押した。
◇
朝から俺は落ち着かなかった。
冬磨寝坊しなかったかな……。体調大丈夫かな……。昨日のこと、覚えてるかな……。
でも、昨日の冬磨は、いつもの優しすぎるくらい優しい冬磨ではなかった。もし記憶が残っていたら、あんな風に俺を抱いたことを気にするんじゃないだろうか。
それなら、覚えていない方がいい。
昼をすぎても、夕方になっても、冬磨からの連絡はなかった。
約束の日だからといっていつも連絡があるわけじゃない。
でも、昨日の今日だから、何も連絡が無いことが不安だった。
初めて冬磨の家で待ち合わせなのに、何も連絡が無いのも変だと思った。
昨日の『帰る』という俺のメッセージへの既読は、朝起きた時点で付いていた。
メッセージに返信が無いことが初めてで不安で落ち着かなかった。
仕事が終わって、俺はまっすぐ冬磨の家に行った。
待つかもしれないけれど、早く行って待っていた方が落ち着くと思ったからそうした。
冬磨の無言の返事に、なにか嫌な予感がして怖くて、メッセージを送る勇気は出なかった。
途中でケーキ屋さんのプリンを買って、マンションの前でじっと冬磨を待つ。
昨日偶然出会った時間は過ぎた。残業じゃなければもうすぐ来るはず。
それでも冬磨はなかなか帰って来ない。
勇気を出して連絡してみようかな……どうしようかな……。とソワソワしてきたころ、冬磨の姿がやっと見えてきた。よかったっ。
そう思ったけれど、冬磨は別の誰かと一緒に歩いてくる。
心臓がドクンと鳴った。
その人には見覚えがあった。
まだビッチ天音として出会う前に、何度か見かけた冬磨のセフレの一人。
どうして……。今日は俺と約束してるのに、どうして……。
冬磨の家に呼ぶのは俺だけだって言ったのに……どうして……。
どうして……冬磨……。
でも、まだわからない。たまたま偶然一緒になっただけかもしれない。なにか理由があるのかもしれない。そう信じて俺は冬磨を待った。
「天音……」
声の届く距離まで来て、冬磨は俺に呼びかけた。
「冬磨……」
冬磨と一緒の彼は、俺をチラッと見てから冬磨に言った。
「俺、エントランスで待ってるわ」
「ああ」
冬磨から鍵を受け取った彼は、俺に見向きもせずに通り過ぎて、エントランスの入口をくぐって行った。
俺は立ち止まっている冬磨のそばまで近寄った。
「冬磨……なんでだよ。今日の約束は俺とだろ?」
泣きそうだったけれど、必死で無表情を装った。
それでも、いろいろ勘違いや思い込みで思い上がっていた俺は、演技なんてまともにできないほど動揺していた。
「……お前、もう来ないと思って。ほか呼んじゃったわ」
「な、んで……」
「天音……昨日、ごめん。あんま覚えてねぇんだけど、ひどくした事はなんとなく覚えてる。お前を絶対傷つけないって約束したのに、ほんと……ごめん」
冬磨は頭を下げて、何度もごめんとくり返した。
「俺、なんも傷ついてねぇし。もう来ないとか勝手に決めんなよ」
やっぱり冬磨は昨日のことを気にしてた。
でも、ほかのセフレを呼んだ理由がそれなら、誤解をとけば大丈夫だよね……?
脱ぎ捨てられたスーツを着て、冬磨の頬にキスをして寝室を出た。
一瞬迷ったけれど、俺は玄関に行く前にリビングに寄ると、隣の和室に入って仏壇の前にゆっくりと正座をした。
勝手にお線香は……だめだよね。
そう考えて、俺は手だけ合わせた。
あいさつをしてから、冬磨がいつもどれくらい優しいのか、俺がどれほど冬磨を好きか、ご両親に報告した。
また冬磨に長いって笑われるかな?
そう思いながら最後に一礼をして、和室を出た。
リビングを出ようとして、ローテーブルの上にある冬磨のスマホに気づいた。
冬磨の目覚ましはスマホかな。目覚まし時計かな。もしスマホなら、このままだと明日寝坊するかも……。
余計なお世話かもしれないと思いながらも、俺は勝手にさわってごめんなさい、と心の中で謝って、冬磨のスマホを手に取り寝室に戻る。
冬磨はさっきの状態から微動だにしないで眠っていた。枕元にスマホを置く。冬磨の涙が乾いていてホッとした。
「冬磨……また、明日ね」
聞こえないとわかっていても声をかけて部屋を出た。
鍵はどこかな……。玄関の棚を見ると、カゴの中にいろいろ鍵が入れてあるのが目に入る。
車の鍵、自転車の鍵……。冬磨、自転車も乗るんだ、と思わず笑みがこぼれる。
家の鍵はこれかな。
俺はそれを手に取って靴をはき、音を立てないように玄関を出てドアを閉め、鍵をかけた。鍵はポストに入れる。
これで大丈夫だよね。
俺はスマホを取り出し、冬磨にメッセージを打った。
『明日も仕事だから帰る。鍵はポストに入れたから』
素っ気ない……。でもビッチ天音ならこうだよね。仕方ない。
冬磨、起こしちゃったらごめん。お願い、起きないで寝ててね。そう願いながら送信を押した。
◇
朝から俺は落ち着かなかった。
冬磨寝坊しなかったかな……。体調大丈夫かな……。昨日のこと、覚えてるかな……。
でも、昨日の冬磨は、いつもの優しすぎるくらい優しい冬磨ではなかった。もし記憶が残っていたら、あんな風に俺を抱いたことを気にするんじゃないだろうか。
それなら、覚えていない方がいい。
昼をすぎても、夕方になっても、冬磨からの連絡はなかった。
約束の日だからといっていつも連絡があるわけじゃない。
でも、昨日の今日だから、何も連絡が無いことが不安だった。
初めて冬磨の家で待ち合わせなのに、何も連絡が無いのも変だと思った。
昨日の『帰る』という俺のメッセージへの既読は、朝起きた時点で付いていた。
メッセージに返信が無いことが初めてで不安で落ち着かなかった。
仕事が終わって、俺はまっすぐ冬磨の家に行った。
待つかもしれないけれど、早く行って待っていた方が落ち着くと思ったからそうした。
冬磨の無言の返事に、なにか嫌な予感がして怖くて、メッセージを送る勇気は出なかった。
途中でケーキ屋さんのプリンを買って、マンションの前でじっと冬磨を待つ。
昨日偶然出会った時間は過ぎた。残業じゃなければもうすぐ来るはず。
それでも冬磨はなかなか帰って来ない。
勇気を出して連絡してみようかな……どうしようかな……。とソワソワしてきたころ、冬磨の姿がやっと見えてきた。よかったっ。
そう思ったけれど、冬磨は別の誰かと一緒に歩いてくる。
心臓がドクンと鳴った。
その人には見覚えがあった。
まだビッチ天音として出会う前に、何度か見かけた冬磨のセフレの一人。
どうして……。今日は俺と約束してるのに、どうして……。
冬磨の家に呼ぶのは俺だけだって言ったのに……どうして……。
どうして……冬磨……。
でも、まだわからない。たまたま偶然一緒になっただけかもしれない。なにか理由があるのかもしれない。そう信じて俺は冬磨を待った。
「天音……」
声の届く距離まで来て、冬磨は俺に呼びかけた。
「冬磨……」
冬磨と一緒の彼は、俺をチラッと見てから冬磨に言った。
「俺、エントランスで待ってるわ」
「ああ」
冬磨から鍵を受け取った彼は、俺に見向きもせずに通り過ぎて、エントランスの入口をくぐって行った。
俺は立ち止まっている冬磨のそばまで近寄った。
「冬磨……なんでだよ。今日の約束は俺とだろ?」
泣きそうだったけれど、必死で無表情を装った。
それでも、いろいろ勘違いや思い込みで思い上がっていた俺は、演技なんてまともにできないほど動揺していた。
「……お前、もう来ないと思って。ほか呼んじゃったわ」
「な、んで……」
「天音……昨日、ごめん。あんま覚えてねぇんだけど、ひどくした事はなんとなく覚えてる。お前を絶対傷つけないって約束したのに、ほんと……ごめん」
冬磨は頭を下げて、何度もごめんとくり返した。
「俺、なんも傷ついてねぇし。もう来ないとか勝手に決めんなよ」
やっぱり冬磨は昨日のことを気にしてた。
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