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58 朝から心臓壊れます
気持ちいい。
優しく頭を撫でられる感触。
ずっとこうされていたい、ずっと……。この手……好き。
とろとろとまどろみながら、まだ夢の中に俺はいた。
「あー……かわい……」
大好きな人の声が耳の届いて、まどろみから一気に覚める。
目を開くと冬磨のとびきりの笑顔が目の前にあって、心臓が跳ね上がった。
「おはよ。天音」
「……お、はよう……冬磨」
冬磨の顔を見ると、反射的にビッチ天音のスイッチが入りそうになった。
違う……もうビッチ天音は封印だった……。
ゆっくりと冬磨の顔が近づいてきて、心臓がドキドキと高鳴る。そっと唇が合わさった。優しくふれるだけのキス。リップ音で唇が離れていって、冬磨がとろけるような笑顔を見せた。
朝から……心臓壊れちゃいそう……。
「……いつから……起きてたの?」
どれくらい寝顔を見られてたんだろうと恥ずかしくなった。
「ずっと」
「え……ずっと、って……?」
「寝て起きたら夢でしたってオチだったら怖いだろ。だから、ずっと起きてお前見てた」
「え……っ、寝てないの……っ?」
驚く俺に冬磨が笑う。
「あー可愛い。ほんと可愛いしか出てこねぇわ……。んじゃ、起きて飯食うか」
「と、冬磨、本当に寝てないの?」
起き上がってベッドを降りる冬磨に俺も続く。
「ふはっ。冗談だよ。ちゃんと寝たって。お前よりちょっとだけ早く起きただけだ」
「な……んだ。そっか。びっくりした」
ホッとする俺に冬磨は微笑んで、ほら準備するぞ? と俺の背中を押した。
昨夜は二人でシャワーを浴びたあと、ベッドの中で眠るまで色々な話をした。
冬磨は今二十八歳で、俺とは五歳差だとわかった。
誕生日は俺が十二月で冬磨が五月。冬磨の誕生日がもうすぎていて残念だった。
俺の家族のこと、会社のこと、冬磨の話、色々話して気がつくと眠ってた。
お互いの知らなかったこと、聞きたくても聞けなかったことをたくさん知ることができて、それだけで自分がすごく冬磨の特別になれた気分で本当に幸せ。
「朝からちゃんと線香上げたの何年ぶりだろ」
仏壇に手を合わせたあと、冬磨はそうつぶやいて苦笑した。
俺も冬磨のあとに手を合わせる。朝からごあいさつできる日が来るなんて……本当に幸せだった。
朝食を二人で一緒に準備してテーブルにつく。
解凍してトースターで焼いたロールパンを頬張って「やっぱり焼きたてみたいっ」と笑顔になると、冬磨が額に手を当てて下を向いて何かをボソッとつぶやいた。
聞こえなかったけれど、たぶんまた「可愛い」と言ってるんだろうなと、さすがに自惚れじゃなくわかってしまって顔が火照った。
一緒に家を出て手を繋ぐ。朝は人の目が多いからやめとくか? と繋いでから言われたけれど、俺は離さなかった。
せっかく冬磨と恋人になれたのに、手を繋ぐのを我慢するなんてもったいない。繋げるときは繋ぎたい。
そう伝えると、めずらしく冬磨の耳が赤くなって可愛いかった。
「天音、今日さ」
「うん?」
「帰りは送ってくから……また家来ないか?」
「行くっ!」
あ、食い気味に答えちゃった。
だって冬磨に会えるなら毎日会いたいもん。
冬磨は小さく吹き出して、でも嬉しそうに「じゃあ、仕事終わったら来て」と優しく微笑んだ。
「今度からスーツ二着置いとけな?」
「……うん。そうする」
冬磨との会話、全部が幸せ……。
地下鉄で並んでゆられて、二駅しか乗らない俺が先に降りる。振り返って手を振ると、冬磨の唇が「好きだよ」と動いた。そう見えた。
一気に顔が火照った俺を見て冬磨が破顔した。
そんな冬磨を乗せた地下鉄がゆっくり動き出して、あっという間に目の前から消えてしまう。
どうしよう……もう寂しい。
また夜になったら会えるのに、すごく寂しい……。
◇
出勤したとたん、松島さんに拉致られた。
「えっ、あの、松島さんっ?」
会議室に連れ込まれ、首周りをジロジロと舐めるように見られた。
「やっぱり」
「え……?」
心配そうな表情。でも、ぎゅっと眉を寄せて怒ってるようにも見える。
「星川は無事だって佐藤が報告してきたけどさ。冬磨って奴もどうなのよ。全然無事に見えないわ。また腕にもいっぱい付いてるんでしょう?」
「え……っと」
腕にも、と言う言葉で、キスマークのことだとわかった。
やっぱり腕も見られちゃってたんだ。
松島さんの中で冬磨ってどんなイメージなんだろう。
『天音、金曜泊まりで。強制。以上』
たまたま見られたメッセージがあれだもんな。
いいイメージなんてないんだろうな……。
「あの、松島さん。実は……ですね」
「うん、実は?」
「えっと、その……冬磨と……」
「冬磨と? なによ、冬磨と何かあった?」
すごく心配そうな松島さんの表情に、本当に申し訳なく思った。
昨夜、詳細を松島さんに話してしまったと敦司から謝罪のメッセージを受け取っていた。松島さんはすべてわかっているから、こんなに俺を心配してくれているんだ。
だから、もう本当に心配ないってことを伝えなくちゃ。
「あの、俺、冬磨と……正式にお付き合いすることになりました」
松島さんの目を見て、はっきりと伝えた。
すると、松島さんの眉がさらに寄って、どんどん顔が青ざめていく。
「嘘でしょ……」
あれ? なんで?
優しく頭を撫でられる感触。
ずっとこうされていたい、ずっと……。この手……好き。
とろとろとまどろみながら、まだ夢の中に俺はいた。
「あー……かわい……」
大好きな人の声が耳の届いて、まどろみから一気に覚める。
目を開くと冬磨のとびきりの笑顔が目の前にあって、心臓が跳ね上がった。
「おはよ。天音」
「……お、はよう……冬磨」
冬磨の顔を見ると、反射的にビッチ天音のスイッチが入りそうになった。
違う……もうビッチ天音は封印だった……。
ゆっくりと冬磨の顔が近づいてきて、心臓がドキドキと高鳴る。そっと唇が合わさった。優しくふれるだけのキス。リップ音で唇が離れていって、冬磨がとろけるような笑顔を見せた。
朝から……心臓壊れちゃいそう……。
「……いつから……起きてたの?」
どれくらい寝顔を見られてたんだろうと恥ずかしくなった。
「ずっと」
「え……ずっと、って……?」
「寝て起きたら夢でしたってオチだったら怖いだろ。だから、ずっと起きてお前見てた」
「え……っ、寝てないの……っ?」
驚く俺に冬磨が笑う。
「あー可愛い。ほんと可愛いしか出てこねぇわ……。んじゃ、起きて飯食うか」
「と、冬磨、本当に寝てないの?」
起き上がってベッドを降りる冬磨に俺も続く。
「ふはっ。冗談だよ。ちゃんと寝たって。お前よりちょっとだけ早く起きただけだ」
「な……んだ。そっか。びっくりした」
ホッとする俺に冬磨は微笑んで、ほら準備するぞ? と俺の背中を押した。
昨夜は二人でシャワーを浴びたあと、ベッドの中で眠るまで色々な話をした。
冬磨は今二十八歳で、俺とは五歳差だとわかった。
誕生日は俺が十二月で冬磨が五月。冬磨の誕生日がもうすぎていて残念だった。
俺の家族のこと、会社のこと、冬磨の話、色々話して気がつくと眠ってた。
お互いの知らなかったこと、聞きたくても聞けなかったことをたくさん知ることができて、それだけで自分がすごく冬磨の特別になれた気分で本当に幸せ。
「朝からちゃんと線香上げたの何年ぶりだろ」
仏壇に手を合わせたあと、冬磨はそうつぶやいて苦笑した。
俺も冬磨のあとに手を合わせる。朝からごあいさつできる日が来るなんて……本当に幸せだった。
朝食を二人で一緒に準備してテーブルにつく。
解凍してトースターで焼いたロールパンを頬張って「やっぱり焼きたてみたいっ」と笑顔になると、冬磨が額に手を当てて下を向いて何かをボソッとつぶやいた。
聞こえなかったけれど、たぶんまた「可愛い」と言ってるんだろうなと、さすがに自惚れじゃなくわかってしまって顔が火照った。
一緒に家を出て手を繋ぐ。朝は人の目が多いからやめとくか? と繋いでから言われたけれど、俺は離さなかった。
せっかく冬磨と恋人になれたのに、手を繋ぐのを我慢するなんてもったいない。繋げるときは繋ぎたい。
そう伝えると、めずらしく冬磨の耳が赤くなって可愛いかった。
「天音、今日さ」
「うん?」
「帰りは送ってくから……また家来ないか?」
「行くっ!」
あ、食い気味に答えちゃった。
だって冬磨に会えるなら毎日会いたいもん。
冬磨は小さく吹き出して、でも嬉しそうに「じゃあ、仕事終わったら来て」と優しく微笑んだ。
「今度からスーツ二着置いとけな?」
「……うん。そうする」
冬磨との会話、全部が幸せ……。
地下鉄で並んでゆられて、二駅しか乗らない俺が先に降りる。振り返って手を振ると、冬磨の唇が「好きだよ」と動いた。そう見えた。
一気に顔が火照った俺を見て冬磨が破顔した。
そんな冬磨を乗せた地下鉄がゆっくり動き出して、あっという間に目の前から消えてしまう。
どうしよう……もう寂しい。
また夜になったら会えるのに、すごく寂しい……。
◇
出勤したとたん、松島さんに拉致られた。
「えっ、あの、松島さんっ?」
会議室に連れ込まれ、首周りをジロジロと舐めるように見られた。
「やっぱり」
「え……?」
心配そうな表情。でも、ぎゅっと眉を寄せて怒ってるようにも見える。
「星川は無事だって佐藤が報告してきたけどさ。冬磨って奴もどうなのよ。全然無事に見えないわ。また腕にもいっぱい付いてるんでしょう?」
「え……っと」
腕にも、と言う言葉で、キスマークのことだとわかった。
やっぱり腕も見られちゃってたんだ。
松島さんの中で冬磨ってどんなイメージなんだろう。
『天音、金曜泊まりで。強制。以上』
たまたま見られたメッセージがあれだもんな。
いいイメージなんてないんだろうな……。
「あの、松島さん。実は……ですね」
「うん、実は?」
「えっと、その……冬磨と……」
「冬磨と? なによ、冬磨と何かあった?」
すごく心配そうな松島さんの表情に、本当に申し訳なく思った。
昨夜、詳細を松島さんに話してしまったと敦司から謝罪のメッセージを受け取っていた。松島さんはすべてわかっているから、こんなに俺を心配してくれているんだ。
だから、もう本当に心配ないってことを伝えなくちゃ。
「あの、俺、冬磨と……正式にお付き合いすることになりました」
松島さんの目を見て、はっきりと伝えた。
すると、松島さんの眉がさらに寄って、どんどん顔が青ざめていく。
「嘘でしょ……」
あれ? なんで?
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