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冬磨編
4 可愛すぎるだろ
無理やりのようにバーから引っ張り出した天音は、なにを考えているのかまったく読めない無表情で、俺のあとを付いてきた。
「……大丈夫か?」
無理やりすぎたかな、と心配になって問いかける。
「なにが?」
淡々と返ってきたその返事に、俺はまた新鮮で楽しくなった。
本当にここまでの奴は初めてだ。
抱いたらどうなるんだろう。なんて、楽しみに思うことすら初めてかもしれない。
「天音、シャワー先入る? それとも……一緒に入る?」
ホテルに着いてすぐ、俺は天音の無表情を崩したくてからかうように耳元でささやいた。
ところが、返事が返ってくるどころか天音の顔色が悪い。
大丈夫かと聞いても「別に」と素っ気ない返事でシャワーに行ってしまった
ソファに座ってゆっくりと天音を待ちながら、少し心配になった。
天音の無表情とホテルに入ってからの青い顔。あの子、本当に大丈夫かな。
ちょっと落ち着かない気持ちでスマホをいじっていると、ヒデからメッセージが届いた。
『冬磨から誘うなんて初めてじゃん。もしかして ビビビってきちゃった?』
ヒデと出会う前は俺から誘うこともあったが、最近は本当になかった。
でも、ビビビって、と俺は苦笑する。
『ビビビはねぇよ。ただ、すげぇ理想的だったから』
そう返すと『なんだガッカリ』と送られてくる。
なんでヒデがガッカリするんだよ、とまた苦笑した。
ヒデは何かと俺を心配してくれる兄ちゃんみたいな存在だった。
たぶん年上なんだよな。聞いたことはねぇけど。
「……てか天音遅くね?」
心配になって声をかけると「湯船で寝ちゃった」と言う。
なんだよ、すげぇ余裕じゃん、と俺は笑った。
シャワーから戻った天音が、徹夜明けだから寝て待つと言う。
顔色が悪かったのはそのせいか? とまた心配なったが「ちゃんと起こせよな?」という天音の言葉が無性に可愛くて、からかうように「おやすみ」と頬にキスをした。
「……ばぁか」
返ってきた返事がまた可愛い。
なんだろな。どちらかといえば無表情で可愛げがない気がするのに、天音の仕草や言葉がいちいち可愛い。
抱くのがこんなに楽しみなのは初めてかもしれない。
シャワーを浴びながら、ふと鏡に映った自分の笑顔が目に入って驚いた。なに俺……笑ってんじゃん。
そういえば、さっきバーでも自然と笑ってた気がする。今では常に笑顔を作って顔に貼り付けることに慣れてしまった。でも、さっきは自然と心から笑ってた。笑顔を作ろうとしなくても、何も意識せずに。
そんなところも吹雪の子と同じだ。
「天音……すげぇな……」
俺の世界に色を与えるだけじゃなく、俺を自然に笑わせるなんて本当にすごい。
不思議な魅力をもつ天音が、俺はすでに気に入っていた。
バーで見た日だまりの笑顔が忘れられない。また笑わせたい。俺のモノクロの世界を色付けた天音の笑顔をもう一度見たいと思った。
シャワーから戻ると、寝てると思っていた天音は起きてベッドの背に寄りかかっていた。
「あれ? 起きてたのか」
「……うん。なんか寝付けなくてさ」
「お前、顔赤いぞ? 熱あるんじゃないか?」
やっぱり体調悪いんじゃないのか?
そう思って天音の額に手を当ててみたが、熱はなさそうだ。
「……っ、ねぇよ……熱なんか。ちょっと風呂でのぼせただけ」
「ああ、ははっ。そりゃ湯船で寝こければな」
そうか。のぼせてるなら少し休ませたほうがいいかな。
そう考えていたら、天音がゆっくりと口を開いた。
「……冬磨」
「ん?」
「……しよ?」
桜色の頬で天音が誘ってきた。
ドクンと心臓が鳴った気がした。
「……うわ。可愛いな、天音。ベッドではキャラ変わるタイプ?」
頬は赤いが、相変わらずの無表情が俺を見つめる。
感情をどこかに落としてきたような天音に、もしかして俺と同じような闇でもあるのかと本当に心配になった。
天音を優しく抱きしめ、ゆっくりとベッドに寝かせてから、いつもの確認を怠っていたことに気がつく。
天音の気が変わらないうちにと焦ってホテルまで連れてきたもんな、と心の中で苦笑した。
「天音」
「……なに?」
「大事なこと言い忘れた」
「大事なこと?」
「マウストゥマウスのキスは無しで。いい?」
フェラ、媚ない、干渉しない、好きになったら終わり、いつもの確認を全部する気にはなれなかった。
俺に興味もないと言わんばかりの天音の瞳。確認の必要なんてないだろ。
俺を病原菌扱いするくらいだから、フェラだってしないはず。
ただ、キスだけは確認する。普段はセフレと普通にしてるかもしれないし。
「俺も、キスはしない主義」
天音の返事にホッと息をつく。よかった。これで天音を切る理由は何一つなくなった。
「同じだったか。なら安心。ときどき勝手にしてくる奴がいるからさ。そういうのは俺、すぐ切るから」
まだ何も始めてないのに、天音を切る心配がなくなったことに安堵している自分が不思議だった。
……ほんと、新鮮だ。天音も新鮮だし、自分自身もいろいろ新鮮。
「唇以外はいい?」
「ん、いいよ」
そいえばシャワーを浴びる前にすでに確認もせずキスしてたなと気づく。
今までそんなことしたことあったか? いや、ないだろ。ないな。
ほんと……天音相手だと色々新鮮。
天音の頬やまぶた、唇以外にキスを落とす。俺の唇がふれるたびに、天音がふるっと身体を震わせる。
うわ、まじか。可愛すぎだろ。
そんな天音から、ドクドクという鼓動が伝わってきた。
もしかして緊張してる?
そう思ったが、相変わらず感情が無さそうな顔をしている。
まぁ、緊張は無いよな。と気を取り直してキスを続けた。
耳を口に含み、舌先を耳孔に差し入れる。
「……ぁ……っ……」
天音が身体をぶるっと大きく震わせて、俺のバスローブをぎゅっと握りしめた。
初めて耳に届いた天音の吐息は、一瞬で俺の下半身に熱が集まるほど、やばかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
別に上げている『冬磨×天音のおまけ♡LINE風会話』に、番外編を更新しました。
もしよろしければ、そちらも読んでくださると嬉しいですꕤ︎︎
今後も時々ですが番外編を更新することになりそうなので、後ほど『冬磨×天音のおまけ♡番外編』にタイトルを変更いたしますꕤ︎︎
「……大丈夫か?」
無理やりすぎたかな、と心配になって問いかける。
「なにが?」
淡々と返ってきたその返事に、俺はまた新鮮で楽しくなった。
本当にここまでの奴は初めてだ。
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「天音、シャワー先入る? それとも……一緒に入る?」
ホテルに着いてすぐ、俺は天音の無表情を崩したくてからかうように耳元でささやいた。
ところが、返事が返ってくるどころか天音の顔色が悪い。
大丈夫かと聞いても「別に」と素っ気ない返事でシャワーに行ってしまった
ソファに座ってゆっくりと天音を待ちながら、少し心配になった。
天音の無表情とホテルに入ってからの青い顔。あの子、本当に大丈夫かな。
ちょっと落ち着かない気持ちでスマホをいじっていると、ヒデからメッセージが届いた。
『冬磨から誘うなんて初めてじゃん。もしかして ビビビってきちゃった?』
ヒデと出会う前は俺から誘うこともあったが、最近は本当になかった。
でも、ビビビって、と俺は苦笑する。
『ビビビはねぇよ。ただ、すげぇ理想的だったから』
そう返すと『なんだガッカリ』と送られてくる。
なんでヒデがガッカリするんだよ、とまた苦笑した。
ヒデは何かと俺を心配してくれる兄ちゃんみたいな存在だった。
たぶん年上なんだよな。聞いたことはねぇけど。
「……てか天音遅くね?」
心配になって声をかけると「湯船で寝ちゃった」と言う。
なんだよ、すげぇ余裕じゃん、と俺は笑った。
シャワーから戻った天音が、徹夜明けだから寝て待つと言う。
顔色が悪かったのはそのせいか? とまた心配なったが「ちゃんと起こせよな?」という天音の言葉が無性に可愛くて、からかうように「おやすみ」と頬にキスをした。
「……ばぁか」
返ってきた返事がまた可愛い。
なんだろな。どちらかといえば無表情で可愛げがない気がするのに、天音の仕草や言葉がいちいち可愛い。
抱くのがこんなに楽しみなのは初めてかもしれない。
シャワーを浴びながら、ふと鏡に映った自分の笑顔が目に入って驚いた。なに俺……笑ってんじゃん。
そういえば、さっきバーでも自然と笑ってた気がする。今では常に笑顔を作って顔に貼り付けることに慣れてしまった。でも、さっきは自然と心から笑ってた。笑顔を作ろうとしなくても、何も意識せずに。
そんなところも吹雪の子と同じだ。
「天音……すげぇな……」
俺の世界に色を与えるだけじゃなく、俺を自然に笑わせるなんて本当にすごい。
不思議な魅力をもつ天音が、俺はすでに気に入っていた。
バーで見た日だまりの笑顔が忘れられない。また笑わせたい。俺のモノクロの世界を色付けた天音の笑顔をもう一度見たいと思った。
シャワーから戻ると、寝てると思っていた天音は起きてベッドの背に寄りかかっていた。
「あれ? 起きてたのか」
「……うん。なんか寝付けなくてさ」
「お前、顔赤いぞ? 熱あるんじゃないか?」
やっぱり体調悪いんじゃないのか?
そう思って天音の額に手を当ててみたが、熱はなさそうだ。
「……っ、ねぇよ……熱なんか。ちょっと風呂でのぼせただけ」
「ああ、ははっ。そりゃ湯船で寝こければな」
そうか。のぼせてるなら少し休ませたほうがいいかな。
そう考えていたら、天音がゆっくりと口を開いた。
「……冬磨」
「ん?」
「……しよ?」
桜色の頬で天音が誘ってきた。
ドクンと心臓が鳴った気がした。
「……うわ。可愛いな、天音。ベッドではキャラ変わるタイプ?」
頬は赤いが、相変わらずの無表情が俺を見つめる。
感情をどこかに落としてきたような天音に、もしかして俺と同じような闇でもあるのかと本当に心配になった。
天音を優しく抱きしめ、ゆっくりとベッドに寝かせてから、いつもの確認を怠っていたことに気がつく。
天音の気が変わらないうちにと焦ってホテルまで連れてきたもんな、と心の中で苦笑した。
「天音」
「……なに?」
「大事なこと言い忘れた」
「大事なこと?」
「マウストゥマウスのキスは無しで。いい?」
フェラ、媚ない、干渉しない、好きになったら終わり、いつもの確認を全部する気にはなれなかった。
俺に興味もないと言わんばかりの天音の瞳。確認の必要なんてないだろ。
俺を病原菌扱いするくらいだから、フェラだってしないはず。
ただ、キスだけは確認する。普段はセフレと普通にしてるかもしれないし。
「俺も、キスはしない主義」
天音の返事にホッと息をつく。よかった。これで天音を切る理由は何一つなくなった。
「同じだったか。なら安心。ときどき勝手にしてくる奴がいるからさ。そういうのは俺、すぐ切るから」
まだ何も始めてないのに、天音を切る心配がなくなったことに安堵している自分が不思議だった。
……ほんと、新鮮だ。天音も新鮮だし、自分自身もいろいろ新鮮。
「唇以外はいい?」
「ん、いいよ」
そいえばシャワーを浴びる前にすでに確認もせずキスしてたなと気づく。
今までそんなことしたことあったか? いや、ないだろ。ないな。
ほんと……天音相手だと色々新鮮。
天音の頬やまぶた、唇以外にキスを落とす。俺の唇がふれるたびに、天音がふるっと身体を震わせる。
うわ、まじか。可愛すぎだろ。
そんな天音から、ドクドクという鼓動が伝わってきた。
もしかして緊張してる?
そう思ったが、相変わらず感情が無さそうな顔をしている。
まぁ、緊張は無いよな。と気を取り直してキスを続けた。
耳を口に含み、舌先を耳孔に差し入れる。
「……ぁ……っ……」
天音が身体をぶるっと大きく震わせて、俺のバスローブをぎゅっと握りしめた。
初めて耳に届いた天音の吐息は、一瞬で俺の下半身に熱が集まるほど、やばかった。
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別に上げている『冬磨×天音のおまけ♡LINE風会話』に、番外編を更新しました。
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