ばあちゃんと空が紡ぐ、僕たちの幸せ

たっこ

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こういう意味で

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「……帰るか」

 体育館を出て歩き出す。でも、なんとなく帰りがたくて中庭のベンチに腰を下ろした。
 スマホに保存した雅の写真を眺める。
 ……おかしい。もう試合は終わったのに、心臓の音が鳴り止まない。
 どうしてだ……。
 そのとき、手の中でスマホが震え『今どこ?』という雅からのメッセージが届く。胸が熱くなった。なぜ……。
 まだ試合の熱が冷めきってないんだ。きっとそうだ。

 雅に『いつものベンチ』と返信すると、すぐに雅の声が聞こえてきた。

「シモン!」

 バッグを肩にかけ、爽やかな笑顔で駆け寄ってくる。

「お疲れ、雅。すごいカッコ良かったよ」
「……マジで? うわ……やべぇ。すげぇ嬉しい。サンキュ」

 はにかむような雅の笑顔に、今度は心臓がぎゅっと痛くなった。

「もう帰れるのか?」
「ああ、帰れるよ。……なぁシモン。まだ夕方じゃねぇけどさ、いつもの公園行かね? ジュースおごってやるからさ」
「いや、俺がおごるよ。勝利祝いだ」
「やったっ」



 公園に着いてベンチに座り、俺たちは自販機で買ったジュースで乾杯をした。
 でも、雅はジュースを飲まずに静かに話し始めた。

「俺……ずっと考えてたんだけどさ」
「なに?」
「俺、人気者じゃん?」
「……それ自分で言うやつ、なかなかいないよな」

 雅が苦笑する。

「女子も男子もいっぱい群がってきてさ。俺、八方美人だから一応ニコニコしてたわけ」
「……そっか」

 多かれ少なかれみんなそうだと思うけどな。

「俺さ……」

 雅が言いよどむ。

「うん?」
「……俺、いままですげぇ友達いっぱいいたけどさ。シモンみたいに、一緒にいて本当に楽しくて毎日会いたいやつって他にいねぇんだわ」
「なに……急に。嬉しいけど」
「今日さ。いつも空の写真しか撮らないシモンが俺の写真撮ってるの見て、すげぇ嬉しくて泣きそうになった」
「……うん?」

 なんで泣きそうになる?

「俺さ……シモンが好きみたい」

「……え……っと、ありがとう……?」

 友達としてって意味だよな?
 すると、急に襟元を引っ張られ、お互いの顔がくっつきそうなほど至近距離になった。
 あまりに不意打ちで頭の中が混乱する。

「こういう意味で、好きみたい」
「こ……こういう、意味……?」

 意味がわからなくて困惑しながらも、しだいに心臓がバクバクしてくる。
 しばらくすると、襟元からゆっくり手が離れ、同時に雅の顔も離れていった。

「……やっぱ……だめだよな……。シモンの顔、赤くなんねぇもん……」
「……え?」
「キスされそうになってさ。もし好きだったら顔赤くなるじゃん? ……シモンはならなかった」
「……え?」

 いまの……キスしようとしてたのか?
 え、なんで?
 なんで雅が俺に?
 俺が好きって……こういう意味の好きって……キスしたいって意味の好きってこと?

「……ごめん。やっぱ俺だけだったみたい。ほんとごめん……忘れて」

 それだけ言い残して、雅は走り去って行った。
 ……え?
 
 
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