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19『好き』が、苦しい
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実家に帰ると言って月森の家を出たものの、場所がわからず途方に暮れる。
スマホの連絡先を開き、お気に入りに入っていた『母』の番号にかけてみた。
すぐにスマホを通して聞こえてきた声で、ああ母さんだ、とホッとする。いつの間にか母さんも月森以外にホッとできる存在になっていたみたいだ。
『なによ、どうしたの? 喧嘩? めずらしい!』
月森の家を出ることにしたからそっちに帰ってもいいかと聞いた俺に、母さんはまるで楽しむかのような声を上げた。どうせすぐに仲直りするとでも思っているんだろう。
「喧嘩じゃないよ」
そう訂正すると『じゃあなんでよ?』と不思議そうに問う。
しかし、俺が少し沈黙すると、すぐに話を切り替え最寄り駅を教えてくれた。
こういうところ、嫌いじゃない。俺が助けた子とその母親への対応もそうだし、男を好きだと知ってもケロッとしてたり、俺は母さんが嫌いじゃない。いや、好きだなと思う。多少ケバくて香水臭いことを除けば。
翌週から、俺は実家から出勤した。話に聞いていた通り一時間もかかる通勤に初日からうんざりする。
もう月森の家が恋しい。月森が……恋しい。
今日からはいつものプロジェクトではなく新人研修だ。
少しは顔を出そうかと足を止めたものの、勇気が出ずに研修に向かった。
俺はまだ、月森には会えない……。
今までのフロアの一つ下でエレベーターを降りると、目の前に広い会議室があり、入り口には大きく『新入社員研修会場』と書かれた紙が貼られていた。
新入社員でもないのにここに入るのは多少勇気がいった。
開け放たれた入り口から中に入り、座席のネームプレートを確認して席に着く。
周りは全員新卒者という中に紛れ込む、今年度から五年目の自分。居心地がいいわけがない。
しかし、思いのほか馴染んでいるかもしれない。もっと悪目立ちするかと思ったがそうでもなさそうだ。
「あ、あの私、菊池って言います。よろしく」
隣の席に座る女性が声をかけてきた。指定された席だから、きっと研修が終わるまではずっと隣だろう。
「中村です。よろしく」
当たり障りなく微笑んだ。
すると、ガタガタと椅子が鳴る音があちこちで響き、俺はあっという間に女性たちに囲まれ、次々に自己紹介をされた。
なんだなんだ。どういう状況?
「あの、入社式ではお見かけしませんでしたよね?」
「あー……」
「あの、秋人に似てるって言われませんか?」
「あー……」
「彼女はいるんですか?」
「今日みんなで飲み会しませんか?」
突然女性たちに囲まれて質問攻めにあうという初めての経験に、思わず目が白黒する。
なるほど、母さんが言っていたのはこれか。“俺”はいつもこういう目に合っていたのか。あの秋人とかいう芸能人のせいで。
中三からこうだったならうんざりだろうな。社会人でこれだ。中学生なら……想像するのも恐ろしい。ちょっとわかる気がする。いや、すごくわかる。それはそうか。前も今も俺は俺なんだから。
周りの男たちからの冷めた視線に気づき、面倒臭いな、と思い始めた時、「先輩」という耳に馴染んだ声が会議室に響いて、ドキッと心臓が跳ね上がった。
「……月森?」
会いたかった。……いや、会いたくなかった。もうしばらく気持ちが落ち着くまでは会わずにいたかった。
今はまだ気持ちを隠しきれそうにないんだよ……。
「月森……なんでここに?」
月森が俺に近寄ると、周りを囲っていた人たちがはけていく。
「プロジェクトのほうに寄るかなって思ったけど来ないので」
相変わらず優しく微笑む月森に、目頭がぐっと熱くなる。
……本当、参るな。好きがあふれて心臓が痛い。
「な、んか用?」
「ノート持ってきました。これ、必要ですよね?」
「あ……ああ、置きっぱなしだったか」
研修よりも月森のことで頭がいっぱいで、ノートが必要だとかそんな当たり前のことも抜けていた。
「さんきゅ、月森」
「先輩、お昼はどこで食べますか?」
「……なんで?」
「もしお弁当なら、こっちのフロア来ませんか? いつもみたいに隣で食べましょうよ」
まるで何事もなかったかのような月森の態度に困惑する。
告白して振られたのは、あくまでも前の俺ってそういう認識?
今の俺ではないからこれまで通りに接してくるのか?
前の俺が月森を好きだったなら、今の俺も好きだとは思わないのか……?
脈がないなら放っておいてくれよ。なんでそっちから寄って来るんだ。
「いや、今日は社食で食べるから」
弁当は作ってきたのに嘘をついた。
「……そうですか。残念。じゃあ明日からは?」
「まだ……わかんないよ。ほら、もうすぐ始業時間だから。早く戻りな。ノートありがとね」
「……はい。……じゃあ、また来ますね」
「え? あ、ちょっと……」
また来るって何? と聞き返す間もなく、月森が会議室から出ていった。
なんで……また来るんだよ。何しに来るんだよ。意味がわからない。放っておいてよ……頼むから。
そう思うのに、しばらくは会えないだろうと思っていた月森にまた会えるという喜びが胸に湧き上がって来るのを止められない。心臓がうるさい。胸が……痛い。
この気持ちは月森には迷惑だとわかっていても、好きな気持ちを止めることができない。
ダメだと思えば思うほど、気持ちがどんどん大きくなっていく。
手に入らないものを求めてしまう。
――――『好き』が、苦しい。
「あの……中村さん、今のって……」
俺を同じ新卒者だと思っていただろう皆が、ざわざわとしだす。
ああ、説明も面倒だな。どうしようか。
そう悩んだのも一瞬で、始業の鐘と同時に入ってきた人物が全てを解決してくれた。
「お、中村。さっそく女はべらせてんのか?」
同じフロアで毎日顔を合わせる人だ。話しかけられた記憶はあるが、名前は思い出せない。
「こいつ今は穏やかで優しいけどね。本当はすごい怖い奴だから気をつけて。もし記憶喪失が治ったら、たぶんここにいるみんな目で殺されると思うよ。あと新人じゃなくてだいぶ先輩だからそこんとこ忘れないように」
目で殺されるって……さすがに言い過ぎだろう。
朝一の俺なら間違いなく、余計なことをと思ったはずだ。
しかし、秋人に似てるだなんだと騒がれ、月森に先輩と呼ばれた今となっては、感謝しかなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
表紙を変更しました。
毎回表紙とタイトルに頭を悩ませております。
いつも迷子な作者で申し訳ないです(> <。)
スマホの連絡先を開き、お気に入りに入っていた『母』の番号にかけてみた。
すぐにスマホを通して聞こえてきた声で、ああ母さんだ、とホッとする。いつの間にか母さんも月森以外にホッとできる存在になっていたみたいだ。
『なによ、どうしたの? 喧嘩? めずらしい!』
月森の家を出ることにしたからそっちに帰ってもいいかと聞いた俺に、母さんはまるで楽しむかのような声を上げた。どうせすぐに仲直りするとでも思っているんだろう。
「喧嘩じゃないよ」
そう訂正すると『じゃあなんでよ?』と不思議そうに問う。
しかし、俺が少し沈黙すると、すぐに話を切り替え最寄り駅を教えてくれた。
こういうところ、嫌いじゃない。俺が助けた子とその母親への対応もそうだし、男を好きだと知ってもケロッとしてたり、俺は母さんが嫌いじゃない。いや、好きだなと思う。多少ケバくて香水臭いことを除けば。
翌週から、俺は実家から出勤した。話に聞いていた通り一時間もかかる通勤に初日からうんざりする。
もう月森の家が恋しい。月森が……恋しい。
今日からはいつものプロジェクトではなく新人研修だ。
少しは顔を出そうかと足を止めたものの、勇気が出ずに研修に向かった。
俺はまだ、月森には会えない……。
今までのフロアの一つ下でエレベーターを降りると、目の前に広い会議室があり、入り口には大きく『新入社員研修会場』と書かれた紙が貼られていた。
新入社員でもないのにここに入るのは多少勇気がいった。
開け放たれた入り口から中に入り、座席のネームプレートを確認して席に着く。
周りは全員新卒者という中に紛れ込む、今年度から五年目の自分。居心地がいいわけがない。
しかし、思いのほか馴染んでいるかもしれない。もっと悪目立ちするかと思ったがそうでもなさそうだ。
「あ、あの私、菊池って言います。よろしく」
隣の席に座る女性が声をかけてきた。指定された席だから、きっと研修が終わるまではずっと隣だろう。
「中村です。よろしく」
当たり障りなく微笑んだ。
すると、ガタガタと椅子が鳴る音があちこちで響き、俺はあっという間に女性たちに囲まれ、次々に自己紹介をされた。
なんだなんだ。どういう状況?
「あの、入社式ではお見かけしませんでしたよね?」
「あー……」
「あの、秋人に似てるって言われませんか?」
「あー……」
「彼女はいるんですか?」
「今日みんなで飲み会しませんか?」
突然女性たちに囲まれて質問攻めにあうという初めての経験に、思わず目が白黒する。
なるほど、母さんが言っていたのはこれか。“俺”はいつもこういう目に合っていたのか。あの秋人とかいう芸能人のせいで。
中三からこうだったならうんざりだろうな。社会人でこれだ。中学生なら……想像するのも恐ろしい。ちょっとわかる気がする。いや、すごくわかる。それはそうか。前も今も俺は俺なんだから。
周りの男たちからの冷めた視線に気づき、面倒臭いな、と思い始めた時、「先輩」という耳に馴染んだ声が会議室に響いて、ドキッと心臓が跳ね上がった。
「……月森?」
会いたかった。……いや、会いたくなかった。もうしばらく気持ちが落ち着くまでは会わずにいたかった。
今はまだ気持ちを隠しきれそうにないんだよ……。
「月森……なんでここに?」
月森が俺に近寄ると、周りを囲っていた人たちがはけていく。
「プロジェクトのほうに寄るかなって思ったけど来ないので」
相変わらず優しく微笑む月森に、目頭がぐっと熱くなる。
……本当、参るな。好きがあふれて心臓が痛い。
「な、んか用?」
「ノート持ってきました。これ、必要ですよね?」
「あ……ああ、置きっぱなしだったか」
研修よりも月森のことで頭がいっぱいで、ノートが必要だとかそんな当たり前のことも抜けていた。
「さんきゅ、月森」
「先輩、お昼はどこで食べますか?」
「……なんで?」
「もしお弁当なら、こっちのフロア来ませんか? いつもみたいに隣で食べましょうよ」
まるで何事もなかったかのような月森の態度に困惑する。
告白して振られたのは、あくまでも前の俺ってそういう認識?
今の俺ではないからこれまで通りに接してくるのか?
前の俺が月森を好きだったなら、今の俺も好きだとは思わないのか……?
脈がないなら放っておいてくれよ。なんでそっちから寄って来るんだ。
「いや、今日は社食で食べるから」
弁当は作ってきたのに嘘をついた。
「……そうですか。残念。じゃあ明日からは?」
「まだ……わかんないよ。ほら、もうすぐ始業時間だから。早く戻りな。ノートありがとね」
「……はい。……じゃあ、また来ますね」
「え? あ、ちょっと……」
また来るって何? と聞き返す間もなく、月森が会議室から出ていった。
なんで……また来るんだよ。何しに来るんだよ。意味がわからない。放っておいてよ……頼むから。
そう思うのに、しばらくは会えないだろうと思っていた月森にまた会えるという喜びが胸に湧き上がって来るのを止められない。心臓がうるさい。胸が……痛い。
この気持ちは月森には迷惑だとわかっていても、好きな気持ちを止めることができない。
ダメだと思えば思うほど、気持ちがどんどん大きくなっていく。
手に入らないものを求めてしまう。
――――『好き』が、苦しい。
「あの……中村さん、今のって……」
俺を同じ新卒者だと思っていただろう皆が、ざわざわとしだす。
ああ、説明も面倒だな。どうしようか。
そう悩んだのも一瞬で、始業の鐘と同時に入ってきた人物が全てを解決してくれた。
「お、中村。さっそく女はべらせてんのか?」
同じフロアで毎日顔を合わせる人だ。話しかけられた記憶はあるが、名前は思い出せない。
「こいつ今は穏やかで優しいけどね。本当はすごい怖い奴だから気をつけて。もし記憶喪失が治ったら、たぶんここにいるみんな目で殺されると思うよ。あと新人じゃなくてだいぶ先輩だからそこんとこ忘れないように」
目で殺されるって……さすがに言い過ぎだろう。
朝一の俺なら間違いなく、余計なことをと思ったはずだ。
しかし、秋人に似てるだなんだと騒がれ、月森に先輩と呼ばれた今となっては、感謝しかなかった。
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毎回表紙とタイトルに頭を悩ませております。
いつも迷子な作者で申し訳ないです(> <。)
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