俺のスキル、説明すると大体笑われるが、そんな他人からの評価なんてどうでもいいわ

ささみやき

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第5話 ヒロインにも笑われました。  どうすればいいのでしょうか?

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どうもどうも、初めまして皆さん。

股間が光るだけの怪しい男こと、俺です。



いや~……本日も実にいい天気ですね。

空は青いし、風は気持ちいいし……ええ、本当ね……とても……。



……で、俺は何してんの?



異世界に転生したからには「無双してハーレム! ざまぁ! 英雄ルート!」

そんな夢をほんのり期待してたわけですよ。

なのに現実はどうだ。



スキル:股間がちょっと光る(以上)



いや待て、ふざけてんのか。

これイジメだよな? 絶対俺に対するイジメだよな!?



スキル選択がランダムだったのは俺のせいだとしてもだ。

それでももうちょっとあるだろ、こう……

火を出すとか、剣がうまくなるとか、時空を操るとか……!



なんでよりにもよって“股間ピカッ”なんだよ!!



頼むから誰か説明してくれ。

俺はどこで人生間違えた?

なんやかんやで、詰所から解放されることになった俺は村の通りを歩いていた。監視付きで。

で、その俺を見る村人たちの視線がまあキツい。



「見ろよ……あれが例の……」

「本当に光るのかしら……」

「いやだぁ、子どもたち、あっち見ちゃいけません!」



おい待て。俺は何もしてないぞ。

と、そこへ。



「おい、お前。**“ピカ股さん”**だろ?」



……は?



「え、あ、いや、違——」

「間違いないって! さっき兵士さんが言ってたもん。“股間が光る変な奴が来た”って!」



やめろ、兵士。お前らマジか。



次の瞬間、別の村人が俺を指差して叫ぶ。



「うわっ、本物だ! **“股光またひかりの男”**だ!!」

「すげぇ……本当に存在したんだ……!」

「うちの村に伝説級の変態が生まれるとは……!」



いや誰が伝説だ。誰が変態だ。



「ちょ、お前ら落ち着け! 俺は別に——」

「しゃべったぞ! 股ピカ語を理解するぞ!」

「やっぱり妖精族の使いなのでは……?」



もうダメだ。この村、全員敵だ。てか、股ピカ語ってなんだよ!



俺は両手を空に上げて叫んだ。



「頼むから普通に見てくれぇぇぇぇぇぇ!!」



だが村人たちは口々に新しいあだ名を生み出し始めた。



「“光る下半身の新星”はどうだ?」

「それ長いよ。“下光げっこう”でいいだろ」

「いや、“股照またてる様”のほうが神秘的だって!」



どこが神秘なんだよ!

俺の尊厳が絶滅危惧種なんだが!?



こうして俺は、異世界に降り立って早々、

世界最速で妙なあだ名が量産される男になってしまった。

俺は、この場所からなんとか逃げたいと感じていたが、村人たちがそれを邪魔をする。

何なん。マジで、これ。何なん。何この状況!?

なんでこんなことになった。俺もう村の笑い者じゃん。

俺が村人たちに包囲され、抜け出せない状況が数秒続いた。もちろん、この間も俺の新しいあだ名は大量生産され続けていた。

そんなときだった。



不意に、腕をぐいっと誰かに引っ張られた。



「えっ、ちょっ――!?」



気づけば包囲の外。

俺はそのまま勢いよく細い路地へと連れ込まれた。



そして、俺を引っ張った“誰か”――

小柄な少女がくるりと振り返り、囁く。



「こっちだよ。早く」



その瞬間、俺は悟った。



……ああ、神様よ。

やっぱり俺を見捨てていなかったんですね。

この感じ。このパターン。間違いない。異世界ものにはなくてはならないもの。

そう、それは“ヒロイン”だ!

路地に飛び込んだ直後。

鼓動がバクバク鳴る俺をよそに、少女は壁に背をあずけながら小声で言った。



「ふぅ……なんとか逃げられたね」 



NICE!!と叫びたいのを我慢して、カッコつけた声で言う。第一印象が大事だ。



「ま、マジで助かった……! 本当にありがとう……!

 あのまま包囲されてたら俺、村の観光名所として展示されてたかもしれない……!」



少女はくすっと笑い、栗色の髪を揺らした。



「うん、可能性あるね。さっきの人たち、ちょっとテンション上がってたし」



いや、冗談じゃねぇよ。それにしても、ああ、神様ありがとうがざいます。

俺が肩で息をしていると、少女はじっとこちらを見た。



「ねぇ、あなた。さっきの……その、股間のライト……」

「言い方ぁ!!?」



少女は慌てて両手を振る。



「あ、違うの! 別に変態とか思ってないから! ただ……その……どういう仕組み?」



その言い方は、変態だと思ってる奴の言い方だ。第一印象終わったか?

それにどういう仕組みか説明できたら苦労してねぇ。

俺は深いため息をつきながら答える。



「……スキルなんだよ。俺の固有スキル」



少女はぴたりと固まった。



「……固有スキル……?」



「そう。名前は――《股間だけが少し光る》」



「名前そのままじゃん!!?」



路地裏に少女の突っ込みが響く。

俺は肩をすくめて見せる。



「俺だって嫌だよ……! これでどうやって生きていけと……!」

少女は「信じられない」という顔のまま固まっていたが――



次の瞬間。



「ぷっ……」



小さく吹き出した。



「え、ちょ……?」



「ふ、ふふっ……股間だけ!? 少し!? なんでそこだけピンポイントなの!? やば……っ、ちょ、無理……!」



少女は腹を抱えて笑い始めた。



「いや、そんな……笑うところ……?」

「だ、だって! 光るって……! 戦闘でどう使うの!? 威嚇!? 照明!? いや照明でも中途半端!! あはははは!!」



笑いすぎて膝まで折れてる。

俺のスキル、少女の腹筋を破壊してどうする。



「そ、そんな面白い!? 俺は死活問題なんだけど!?」

「だ、だって真剣な顔で《股間だけ光る》とか言うから……!

 ギャップでやられた……ひー……お腹痛い……!」



少女は涙を拭きながら、ようやく呼吸を整えた。



「……はぁ……でも……ごめんね。笑っちゃったけど……

 あなたが悪いわけじゃないし、スキルが変でも……私はちゃんと助けるから!」



その笑顔は、さっきの爆笑から一転して優しかった。



……いや、あれは笑っていいところじゃなかった気もするが。

まぁ救われたから良しとするか。



俺のスキルの存在価値はともかくとして。



「私はライラ。冒険者ギルドの見習い。

 あなたの……とりあえず味方でいてあげる!」



あぁ……まぶしい。

股間じゃなくて心が光ったわ。



「俺は山田悠斗。ほんと、助かったよライラ!」



「よし、じゃあギルド行こっか! ここにいたらまた捕まるよ?」



こうして俺は、異世界初日にして――

股間ライトのせいで追われ、見知らぬ少女に助けられるというヒロインイベント

を全力で踏み抜いたのだった。
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