上 下
3 / 14

3

しおりを挟む
~~~~~~

入国早々から予想外の軟禁生活。


そこからようやく解放され


ほっと気が緩んでいた。


ーーーーー

ーコンコン。


昼過ぎ。ドアをノックする音。


「はーい。」


読みかけていた本をもったまま、ドアを開けた。


「わっ。ミウさん鍵かけてないの?!ダメだよ~~(涙)」


この子は私の翌日にここへ来た旅人D君。
20代入りたての男子だった。


昼間だし、ドミトリーは知っている日本人しかいなかったから…


と鍵を開けていた言い訳するも、丁重にお説教された。


「Yさ~ん。聞きましたぁ~~?(涙)」


相変わらずPC作業に余念がないYさんの横顔に 無茶振りされた。


D君は早くもYさんをアニキとして慕っていた。


Yさんはみんなのリーダー的存在だった。

男子からも女子からも人気者。

頭がキレて、行動力もある。


「ぁぁ… 

ミウちゃん ダメよ~~。

女の子なんだから~~

日本人男子だってケモノよ~~?」


PC画面から黒縁メガネをそらす事なく


でもよく通る声で言う。



「…はぁぃ。^^;」



ーーーその日はドミトリーの男子数名と夕食をとりに出かけた。



食事の席で、



同じ街に移動を控えた者同士が情報交換したり、


旅の目的を語り合う。



私は当初のプランから1週間ロスしていた。



そろそろ移動をしなきゃいけない。



「ェ。まじで?ミウさん○○(町の名前)行くの??あそこ女1人はヤバイっしょー!」


D君はいつも何かキメてるようなテンションだった。



「でも…そこの朝日を見に来たし…

行かないわけには。。」



結納していた彼を探しに来た話は


まだ誰にも語ってなかった。



「俺、仕事一段落したから、一緒に行こうか?」


Yさんが口を開いた。


「ぇ? でもYさん○○には1度行ったんでしょう?」



話では、彼は1か月前にその地を訪れていた。


「俺は構わないよ。○○好きだったし。また行けるならラッキー。この子1人で行かせるのも心配だし。苦笑」



当時、この国での移動は、本当に骨が折れる事だった。


ーーそれを一緒にしてくれるというの?



「ヒューー!Yさん流石だわ~~オレそういうとこマジで尊敬します!!」


D君のテンションで、ひとまず会話は持っていかれる。



そんなこんなで、
まだ互いをよく知らないYさんと私は、
暫く旅路を共にすることが決まった。




ここから先、
基本的に寝食を共にする。




20代そこそこ。


中身のない希望だけ詰め込んだ


小さなリュックひとつと


自分で走れる足だけをもって。




ーー満ち始めた月が、


街灯の少ない温かい街に


登り始めていた。
しおりを挟む

処理中です...