102 / 731
第一章 初級編開始
第101話 魔術師リアム、初級編二日目の帰路
しおりを挟む
帰らないで。
確かに祐介はそう言った。
「サツキちゃんといると、楽しいもんね」
にっこりと笑った祐介は、呆然と祐介を見上げるリアムの手を引っ張った。何だ、そういう意味か。何かを盛大に勘違いしそうになったリアムは、自分の浅はかな考えを悔いた。リアムは男、祐介も男だ。うん、そうだ。そこまで思い、自分についている胸を見下ろす。
でも、女でもある。
自分は一体どっちなのか? 分からなくなったリアムを見て、祐介がくすりと笑う。
「まーた眉間に皺寄ってるよ。難しいこと考えてる? もっと気楽に構えなよ」
「気楽に……」
祐介が頷く。
「そう。考えても答えが出ないことは、横に置いておく。すると、思い出した頃にあっさり答えが出てたりすることもあったりなかったり」
「それはどっちだ」
リアムが苦笑した。でも、祐介が深く考え過ぎるなと自分に言ってくれてるのは分かった。
「でも、そうだな。今は考えても仕方のないことだ」
恐らく今、リアムの身体の中にいるサツキも同じ悩みに直面している筈だった。
多分、リアムとサツキは根底部分で共通するものがあるのだ。サツキがどういった人間で何を考えていたのか、それは分からない。だが、それを知ることは出来る。
そう、例えばメールだ。は、とリアムは顔を上げた。これまでサツキが残してきた手紙がメールとして残っていると、祐介が説明の時に言っていた。時間が出来たら読んでみたら、と。
それにそうだ、サツキには父親もいる。自分には師しかいなかった、だからすぐに思い至らなかったが、サツキの職場は父親が紹介したと言っていたではないか。
「サツキちゃん」
サツキと父親のやり取り、それが残っていないだろうか。見てみる価値はあるだろう。そこから、サツキがどういった人間だったのか、そして何を望んだのかが分かる筈だ。
「……リアム」
リアムは驚き、バッと顔を上げた。夕日を背景に、困った様に笑う祐介がいた。
「え?」
今、リアムの名を呼ばなかったか?
「サツキちゃん、前を見て歩かないと危ないよ」
「あ、ああ、済まない」
「毎日ちょっと詰め込み過ぎだもんね。疲れたよね」
どうやら気の所為だったらしい。この期に及んでまだ祐介を心配させてしまっている。情けなかった。
「覚えることが多いからな。でも、それは説明をする祐介も同じだろう?」
「午後はゆっくり出来たよ。お陰様で」
「あの足が生えた表紙の本か。あれは何なのだ?」
「ふふ、読んでのお楽しみ。横溝正史っていう有名な作家の有名な話です」
祐介に笑顔が戻った。それが何だかほっとした。
「祐介!」
「はい」
「腹が減ったぞ!」
「はいはい、作りますよ」
分からないことはわからない。一旦横に置けばいい。
その祐介の言葉は、リアムの心に深く刻み込まれた。
確かに祐介はそう言った。
「サツキちゃんといると、楽しいもんね」
にっこりと笑った祐介は、呆然と祐介を見上げるリアムの手を引っ張った。何だ、そういう意味か。何かを盛大に勘違いしそうになったリアムは、自分の浅はかな考えを悔いた。リアムは男、祐介も男だ。うん、そうだ。そこまで思い、自分についている胸を見下ろす。
でも、女でもある。
自分は一体どっちなのか? 分からなくなったリアムを見て、祐介がくすりと笑う。
「まーた眉間に皺寄ってるよ。難しいこと考えてる? もっと気楽に構えなよ」
「気楽に……」
祐介が頷く。
「そう。考えても答えが出ないことは、横に置いておく。すると、思い出した頃にあっさり答えが出てたりすることもあったりなかったり」
「それはどっちだ」
リアムが苦笑した。でも、祐介が深く考え過ぎるなと自分に言ってくれてるのは分かった。
「でも、そうだな。今は考えても仕方のないことだ」
恐らく今、リアムの身体の中にいるサツキも同じ悩みに直面している筈だった。
多分、リアムとサツキは根底部分で共通するものがあるのだ。サツキがどういった人間で何を考えていたのか、それは分からない。だが、それを知ることは出来る。
そう、例えばメールだ。は、とリアムは顔を上げた。これまでサツキが残してきた手紙がメールとして残っていると、祐介が説明の時に言っていた。時間が出来たら読んでみたら、と。
それにそうだ、サツキには父親もいる。自分には師しかいなかった、だからすぐに思い至らなかったが、サツキの職場は父親が紹介したと言っていたではないか。
「サツキちゃん」
サツキと父親のやり取り、それが残っていないだろうか。見てみる価値はあるだろう。そこから、サツキがどういった人間だったのか、そして何を望んだのかが分かる筈だ。
「……リアム」
リアムは驚き、バッと顔を上げた。夕日を背景に、困った様に笑う祐介がいた。
「え?」
今、リアムの名を呼ばなかったか?
「サツキちゃん、前を見て歩かないと危ないよ」
「あ、ああ、済まない」
「毎日ちょっと詰め込み過ぎだもんね。疲れたよね」
どうやら気の所為だったらしい。この期に及んでまだ祐介を心配させてしまっている。情けなかった。
「覚えることが多いからな。でも、それは説明をする祐介も同じだろう?」
「午後はゆっくり出来たよ。お陰様で」
「あの足が生えた表紙の本か。あれは何なのだ?」
「ふふ、読んでのお楽しみ。横溝正史っていう有名な作家の有名な話です」
祐介に笑顔が戻った。それが何だかほっとした。
「祐介!」
「はい」
「腹が減ったぞ!」
「はいはい、作りますよ」
分からないことはわからない。一旦横に置けばいい。
その祐介の言葉は、リアムの心に深く刻み込まれた。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる