ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第一章 初級編開始

第101話 魔術師リアム、初級編二日目の帰路

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 帰らないで。

 確かに祐介はそう言った。

「サツキちゃんといると、楽しいもんね」

 にっこりと笑った祐介は、呆然と祐介を見上げるリアムの手を引っ張った。何だ、そういう意味か。何かを盛大に勘違いしそうになったリアムは、自分の浅はかな考えを悔いた。リアムは男、祐介も男だ。うん、そうだ。そこまで思い、自分についている胸を見下ろす。

 でも、女でもある。

 自分は一体どっちなのか? 分からなくなったリアムを見て、祐介がくすりと笑う。

「まーた眉間に皺寄ってるよ。難しいこと考えてる? もっと気楽に構えなよ」
「気楽に……」

 祐介が頷く。

「そう。考えても答えが出ないことは、横に置いておく。すると、思い出した頃にあっさり答えが出てたりすることもあったりなかったり」
「それはどっちだ」

 リアムが苦笑した。でも、祐介が深く考え過ぎるなと自分に言ってくれてるのは分かった。

「でも、そうだな。今は考えても仕方のないことだ」

 恐らく今、リアムの身体の中にいるサツキも同じ悩みに直面している筈だった。

 多分、リアムとサツキは根底部分で共通するものがあるのだ。サツキがどういった人間で何を考えていたのか、それは分からない。だが、それを知ることは出来る。

 そう、例えばメールだ。は、とリアムは顔を上げた。これまでサツキが残してきた手紙がメールとして残っていると、祐介が説明の時に言っていた。時間が出来たら読んでみたら、と。

 それにそうだ、サツキには父親もいる。自分には師しかいなかった、だからすぐに思い至らなかったが、サツキの職場は父親が紹介したと言っていたではないか。

「サツキちゃん」

 サツキと父親のやり取り、それが残っていないだろうか。見てみる価値はあるだろう。そこから、サツキがどういった人間だったのか、そして何を望んだのかが分かる筈だ。

「……リアム」

 リアムは驚き、バッと顔を上げた。夕日を背景に、困った様に笑う祐介がいた。

「え?」

 今、リアムの名を呼ばなかったか?

「サツキちゃん、前を見て歩かないと危ないよ」
「あ、ああ、済まない」
「毎日ちょっと詰め込み過ぎだもんね。疲れたよね」

 どうやら気の所為だったらしい。この期に及んでまだ祐介を心配させてしまっている。情けなかった。

「覚えることが多いからな。でも、それは説明をする祐介も同じだろう?」
「午後はゆっくり出来たよ。お陰様で」
「あの足が生えた表紙の本か。あれは何なのだ?」
「ふふ、読んでのお楽しみ。横溝正史っていう有名な作家の有名な話です」

 祐介に笑顔が戻った。それが何だかほっとした。

「祐介!」
「はい」
「腹が減ったぞ!」
「はいはい、作りますよ」

 分からないことはわからない。一旦横に置けばいい。

 その祐介の言葉は、リアムの心に深く刻み込まれた。
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