ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第240話 OLサツキの中級編三日目の午後の鑑定士

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 ユラに促され、二人掛けのベンチに腰掛けると、向かいの壮年の男性が微笑んだ。リアムよりは若いだろうか。黒のローブを纏っているからか、はたまたその低い聞き心地のいい声の所為だろうか、非常に落ち着いていてもっと上の様にも見える。

 開いた目は何も映しておらず、白濁した水色だった。だが、綺麗だ。

「サツキ、見過ぎじゃね?」

 ユラが冷たい表情でひと言。その言葉で、サツキは暫くの間男の雰囲気に呑まれていたことに気が付いた。

「あ、ごめんなさい」

 盲いた人に見惚れていたなどと言っていいものだろうか。サツキが迷っていると、男がふふ、といい声で笑った。笑い声一つでこの雰囲気。正に大人の男性といった感じだ。

 本来のリアムだったら似た様な雰囲気を持っていたのかもしれないが、中身がサツキでは今はとてもではないが及ばないだろう。

「大体皆さん始めに私に会うと暫く無言になられる。何故だろうね?」
「あ、あはは」

 物凄くイケメンという訳ではない。だが雰囲気に丸ごと飲まれてしまう、その圧倒的な存在感。それが原因に違いない。

「リュシカ、話を進めていいか?」
「ああ、済まない。そういえばユラは私に会っても平然としていたね」
「俺は目に見えるものしか信じない主義なんだよ」
「ユラらしいね」

 さて、とリュシカと呼ばれた男が居住まいを正す。サツキも慌てて姿勢を正した。ユラは変わらず頬杖を突いている。

「で、貴方はドラゴンスレイヤーのパーティーの魔術師リアムということだが……」

 真っ直ぐに白濁した瞳がサツキを見る。この人、実は見えているんじゃないだろうか?

「ああ、気になるなら目を閉じようか?」

 何故分かったのか。サツキは慌てて言った。

「えっいえっ凄く綺麗な目だと思ってそのっ」
「あはは、ありがとう」
「サツキはまさかの年配好きか……?」

 ユラがボソッと呟いたので、サツキは無言で杖を向けた。

「ごめんって」

 杖を持つ手を膝の上に戻した。

「……男の身体に女の心。似通った波長であり異なる」

 リュシカの声が響いた。大して大きな声は出していない筈なのに。

「不安定な存在だ」

 不安定。前にユラにも言われたことだ。

「あの、不安定って……」
「存在が揺らぐということだ」
「えーと……」

 意味が分からない。

いかりを見つけ離さねば、ここに留まれよう」
「碇?」
「言い換えるならば、そなたをこの世界に繋ぎ止めている存在だ」
「え?」

 もう全く何を言っているか分からない。はてなばかりが脳裏に浮かぶ。

「そなたの身体の元の心は、かなり強く繋ぎ止められている様だ。だからまだ揺らがないが」

 リュシカが息継ぎをし、告げた。

「両方の碇が手を離した時、二つの魂は再び元の身体へと引き寄せられるだろう」

 それは、元の世界に戻るということか。サツキはただ茫然とそれを聞くしか出来なかった。
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