ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第363話 魔術師リアムの中級編五日目の夕飯の続き

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 リアムは続けた。

「村の子供達で、日中村にいる者から順に呼ばれた。私は放牧に行っていたからそのことは知らなくてな、師は該当者がいない、と頭を悩ませていた時に、私が通りがかった」

 初めて師と会った時のことはよく覚えている。白い長い髭に長い髪。なのに頭の天辺はツルッと禿げていて、やせっぽっちのひょろ長い爺さんがいる、と思った。でも、その瞳は輝いていた。その時は分からなかったが、師と過ごす内にあれは好奇心を映しているのだと知った。

 師のあの目を見なければ、リアムの決心は鈍っていたかもしれない。それ程、興味を惹かれる印象的な目だった。

「そして、大岩を溶かしてご覧と言われた。私は何故か師に褒められてみたくて、かつてない程に集中をした。そうしたらな」
「そうしたら?」

 祐介は話に興味津々の様子だ。

「大岩が、氷が溶ける様に溶けていった」
「おおー」

 リアムは笑った。皆が祐介の様だったら、今リアムはここにはいなかった。そう思うと、巡り合わせというものはとてつもない。

「他の大人達がそこにいたのでな、これまでの現象の元凶はお前だったかと、まあ言われてな。そもそも魔法をきちんと使える者がいない村だった所為もあり、ギルドの依頼にかかった報酬を、村長は私の親に支払う様言った」

 祐介の箸を持つ手が止まった。この話は、ここの部分があるから話しにくかったのだ。

「そして当然の如く、払えなどしない。親は困っていた。そして私は村の中で一気に危険人物扱いされてな、見かねた師が、私を報酬にすると言った」
「え?」

 祐介の鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見て、リアムは笑った。素直で可愛らしい男だ。

「丁度弟子が欲しかったから、こんな凄い魔力を持つ弟子なら最高だと、村人に責められる私達を庇って散々褒めちぎってくれてな。私の親も、あれで大分肩身の狭い思いをしなくてもよくなっただろう」

 リアムはビールをもう一口飲んだ。ぬるくなっていた。

「私は制御など一切出来ておらず、あちこちをただ溶かすだけの厄介者だったというのに、師の持ち上げ方ときたらおかしかったぞ。村長は報酬の支払いがなくなりほっとした様子だった。私の親は、まあ、元々あまり可愛げがないと言われていたからな、あっさりとしたものだったが」

 祐介の顔を見て、リアムは笑った。

「そう悲しい顔をするな。私は実家と家族という居場所は失った代わりに、大切な師と魔術に出会えたのだから」

 あの日、師に手を引かれて村を後にしたあの時のことはいつまでも忘れられない。ちょっと皺っぽい手が温かくて、そういえば最後に誰かと手を繋いだのはいつだっただろうか、と思ったものだ。

「師には感謝してもしきれない。そして師の家に戻ってすぐに始めたのが、私の魔力を制御する為に、私の魔力を呪文に変換する特訓だった」
「呪文に……変換?」
「そうだ。私が使った魔法はこれまで定義がなかったものでな、メルトという呪文に変換することで、その後は暴走しなくなった」

 それまでは散々あちこち溶かしてしまったりしたが、それも今となってはいい思い出だ。

「だから私の初めての魔法は、師匠が作ったんだ」

 リアムはにっこりとして言った。
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