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第四章 アルティメット編開始
第609話 魔術師リアムのアルティメット編・正体をばらした日の夜の寂しさ
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暫くリアムを上から押さえ込む様にして胸の上に顔を乗せてしがみついていた祐介だったが、リアムが抵抗を止め力を抜いて暫くすると、顔を上げてリアムの胸の谷間に出来た傷口を見た。掴んでいた手首を離すと、人差し指でそこをなぞる様に触れた。
「……ごめん」
今度は泣きそうな顔になっている。そんな顔をされてしまっては、もうリアムが怒ることは出来なかった。祐介の頭に手を伸ばし、頭を撫でる。
「今日は少しおかしいぞ」
「うん、やっぱりそうかも。ごめん、傷つけるつもりじゃなかった」
祐介は、傷口に指を当てたままだ。位置的にそこそこ拙い場所だと思うが、そもそももう胸の上に頬を付けられている時点で拙さの頂点に達している可能性もあった。
「……寂しくなってさ」
ぽつりと祐介が言った。これだけ毎日一緒に過ごしているのに、まだ人恋しいのか。
「私といても、まだ寂しいか」
「違う、そうじゃないよ」
祐介の頭は、風呂前だから整髪料がついていて固い。汗もかいているし、髪が重い。でもそれでも触れていたかった。
「一人でいる時は全然平気だったのに、君と一緒に過ごす様になってから、ちょっとのことで寂しくなって、我儘になって、苦しくなって、意地悪したくなって、僕、全然駄目だ」
よく意味が分からない。祐介は時折難しいことを言うのだ。というか、先程のはやはり意地悪でしたことらしい。
「私といるから寂しいのか? 矛盾していないか」
「矛盾してないよ。君は理解してないだけだ」
「理解? 何をだ」
祐介は、何かを言おうとしたのか口を開けて、――そして何も言わず口を閉じた。無理をして作った様な笑顔を見せると、起き上がってからリアムも起こしてくれた。
「お風呂入って、それからビール飲もうか」
明らかに話を逸らされたのが分かった。
「祐介?」
リアムは尋ねるが、祐介は笑顔のまま答えはしなかった。
「終わったら、こっちに来てね」
リアムの頬を触りながら切なそうな目でそう言われては、もうリアムも何も言えなくなってしまった。
「分かった」
「じゃあまた後で」
「ああ」
リアムがそう返答すると、祐介はくるりと背を向けてしまった。そして箪笥から服を取り出し始めている。リアムは、初めて祐介に拒絶された気がして、何とも言えない気分を味わっていた。だが、ただこうしていても仕方がないので、そのまま魔法陣に向き直ると、自分の家へと移動した。
ボン、とベッドの上に着地すると、その場に座り込む。
先程祐介が齧りついた上にキスマークを付けていった胸の膨らみを確認する。赤紫の痣の中に、皮が剥けて血が滲んだ場所があった。見た瞬間、胸の奥がぎゅっと掴まれたかの様に苦しくなった。
「何だこれは……?」
祐介が見せた背中。なのに残していった傷跡。矛盾だ。あの背中に縋ればよかったと思う。祐介が拒否しないと分かっているなら、リアムは遠慮なく祐介に向かって手を伸ばしただろう。だけど、今日も言われている。男のリアムはお呼びでないのだ。なのにこういうことをする。まるでリアムを欲しているかの様に。
本当は触れたくて、好きで抱き締めたいのはリアムの方だというのに、それをしないのは自分の中の恐怖の所為だ。自分のした選択だというのに、祐介が拒否するとこうやって慄く。
「寂しい……」
ぽつりと呟いた自分の声。
「え?」
思ってもいない自分の言葉に、リアムは驚いてしまった。
「……ごめん」
今度は泣きそうな顔になっている。そんな顔をされてしまっては、もうリアムが怒ることは出来なかった。祐介の頭に手を伸ばし、頭を撫でる。
「今日は少しおかしいぞ」
「うん、やっぱりそうかも。ごめん、傷つけるつもりじゃなかった」
祐介は、傷口に指を当てたままだ。位置的にそこそこ拙い場所だと思うが、そもそももう胸の上に頬を付けられている時点で拙さの頂点に達している可能性もあった。
「……寂しくなってさ」
ぽつりと祐介が言った。これだけ毎日一緒に過ごしているのに、まだ人恋しいのか。
「私といても、まだ寂しいか」
「違う、そうじゃないよ」
祐介の頭は、風呂前だから整髪料がついていて固い。汗もかいているし、髪が重い。でもそれでも触れていたかった。
「一人でいる時は全然平気だったのに、君と一緒に過ごす様になってから、ちょっとのことで寂しくなって、我儘になって、苦しくなって、意地悪したくなって、僕、全然駄目だ」
よく意味が分からない。祐介は時折難しいことを言うのだ。というか、先程のはやはり意地悪でしたことらしい。
「私といるから寂しいのか? 矛盾していないか」
「矛盾してないよ。君は理解してないだけだ」
「理解? 何をだ」
祐介は、何かを言おうとしたのか口を開けて、――そして何も言わず口を閉じた。無理をして作った様な笑顔を見せると、起き上がってからリアムも起こしてくれた。
「お風呂入って、それからビール飲もうか」
明らかに話を逸らされたのが分かった。
「祐介?」
リアムは尋ねるが、祐介は笑顔のまま答えはしなかった。
「終わったら、こっちに来てね」
リアムの頬を触りながら切なそうな目でそう言われては、もうリアムも何も言えなくなってしまった。
「分かった」
「じゃあまた後で」
「ああ」
リアムがそう返答すると、祐介はくるりと背を向けてしまった。そして箪笥から服を取り出し始めている。リアムは、初めて祐介に拒絶された気がして、何とも言えない気分を味わっていた。だが、ただこうしていても仕方がないので、そのまま魔法陣に向き直ると、自分の家へと移動した。
ボン、とベッドの上に着地すると、その場に座り込む。
先程祐介が齧りついた上にキスマークを付けていった胸の膨らみを確認する。赤紫の痣の中に、皮が剥けて血が滲んだ場所があった。見た瞬間、胸の奥がぎゅっと掴まれたかの様に苦しくなった。
「何だこれは……?」
祐介が見せた背中。なのに残していった傷跡。矛盾だ。あの背中に縋ればよかったと思う。祐介が拒否しないと分かっているなら、リアムは遠慮なく祐介に向かって手を伸ばしただろう。だけど、今日も言われている。男のリアムはお呼びでないのだ。なのにこういうことをする。まるでリアムを欲しているかの様に。
本当は触れたくて、好きで抱き締めたいのはリアムの方だというのに、それをしないのは自分の中の恐怖の所為だ。自分のした選択だというのに、祐介が拒否するとこうやって慄く。
「寂しい……」
ぽつりと呟いた自分の声。
「え?」
思ってもいない自分の言葉に、リアムは驚いてしまった。
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