ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第623話 魔術師リアムのアルティメット編・病院初日、病院への道

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 リアムの腕に早川ユメがくっついたまま、お喋りを続けた。後ろから付いてきている祐介には聞こえない程度の声の大きさで。

「ていうか、あの人って始めからあんたに対してこんなに激甘だった訳?」
「げ、激甘?」
「何ていうの? 宝物みたいに大事に大事にしてる感じって言えばいいのかしら?」
「宝物? まさか。祐介はお人好しだからな、右も左も分からない私を放っておけなかっただけだ」

 すると、早川ユメが遠い目をして呟いた。

「……お人好しな訳ないじゃん……」

 リアムは早川ユメの意図が分からなかったので、首を傾げた。早川ユメは、そんなリアムを見て勝手に何かに納得した様にうんうんと頷いた。

「でも放っておけなかったっていうのは確かにありそうね。何やるか分からない感じがあるからね、リアムは」

 リアムは、久々に自分の名前を当たり前の様に呼ばれ、何だかこそばゆく思えてきた。

「その、自分の名前を呼ばれるというのはなかなかいいものだな」

 すると、早川ユメは更に声を潜めつつリアムに尋ねた。

「え? なに? あいつリアムの名前を呼ばないの?」
「呼ばぬ。一度もちゃんと呼ばれたことはなく、常にサツキちゃんと呼ぶな」
「何でよ」
「……それが聞けたらな」

 リアムがふう、と小さく息を吐くと、早川ユメが意外そうな表情を浮かべた。

「それ位聞けばいいじゃないの」
「いや、早川さんはそう思うだろうが、これがなかなか難しくてな」
「ユメでいいわよ」
「え?」
「ユメ。呼び捨てね。これでお互い様だから」

 ニヤリと笑うので、リアムも笑顔になって頷いた。

「分かった。ユメだな」
「それでいいわ。――で、何で聞けないのよ」

 このリアムの複雑な思いを、どうやって説明したらいいだろうか。だが、早川ユメだったら、もしかしたら祐介の心情も少しは推測出来たりするのではなかろうか。

「祐介が私の本当の名を呼ばない理由を知るのが怖いのだ」
「……怖い?」

 リアムは頷いた。

「祐介は頑なにサツキと呼ぶ。それは、リアムという男の私とは傍にいたくないのではと思うと、怖くてな。でも私は外見はサツキでも中はどう頑張っても男のリアムのままだ。これは変えられん。だが祐介は男の私はお呼びでないのではと……」
「はあ?」

 うまく伝わっていないらしい。リアムは更に続けることにした。

「私は、祐介と一緒にいたいのだ。だから、男ならいらないと拒絶されるのが怖い。何故ならあいつは女しか興味がないと言っていたからな、だから……」
「あー、あんたあの男に惚れてんのね?」

 リアムがばっと早川ユメを見た。

「何故分かった!」
「いや、分かるわよ。要は、中身男アピールをすると何だ男じゃんって再認識されて離れていかれるのが怖いってことでしょ」
「……怖い」
「そっか、じゃあ聞けないわよね」

 早川ユメは納得した様にうんうん頷いた。

「そうなのだ。だが私の外見は今や女だろう? だけど私は男だし、その、嫌われたくはないのだ」

 すると、早川ユメがふふ、と笑った。

「私、あいつが何であんたの名前を呼ばないか分かっちゃったかも」
「……え?」

 今の話のどこにそんなヒントが隠されていたのか。リアムが驚いていると、早川ユメはこそっと教えてくれた。

「リアムは男だからって拘り過ぎなのよ。男とはこうあるべきとか、そういうの強くない?」
「……まあ、あるにはあるが」
「多分、あんたがそうだからよ」
「え?」
「素直になったらいいってこと」

 早川ユメは、そう言ってまた笑った。
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