2 / 73
(2)婚約破棄当日の作戦会議
しおりを挟む
あっという間に翌日となった。
如何にもありがち設定だが、パーティーには相方、いやパートナーを連れて行かなければ、白い目で見られ嘲笑の的になる。その為、急遽白羽の矢が立った私の従兄弟が迎えに来た。
金をかけたんだろうな、と推測される綺麗な青色の服を身に纏い、栗色の髪をゆったりと後ろにひとつで結んでいる水色の瞳の長身男性。大変見目麗しく、その柔和な笑顔に卒倒する令嬢は後を絶たない。
というか、この小説は大体においてイケメンしか出てこない。
町民だって割と皆イケメンにイケオジ揃いだ。反対に女子はまあまあというところ。これも恐らくは作者の願望だろう。
「ナタ、今日も緑の瞳が吸い込まれそうな程綺麗だ」
「嫌ですわ、ホルガーってば」
おほほ、とわざとらしく笑ってみせた。どうせお世辞なのは分かっている。使用人の前なので、私はせいぜいお上品ぶってみた。皆、私のパーツは褒めるが他は褒めない。つまりはまあそういう意味だ、と理解している。
私は差し出されたホルガーの腕に手を添えた。ホルガーが表で待つ馬車に私を連れて行く。パタン、と馬車の戸を閉めた途端、彼は足を組み、ぐたっと座席の背にもたれかかった。
「ちょっとさあ、今日本当に行く訳?」
あからさまに嫌そうな顔をし、それを隠そうともしない。私が返事をしないでホルガーの真向かいに腰掛けると、身を乗り出して顔を近付けてきた。
「アルフレッドの奴、お前との婚約破棄を発表するんだってあちこちで吹いてたぞ? 分かるか? 今行ったら見せ物になるんだぞ?」
「まあいいんじゃない?」
私が足を組みつつ外を眺めながらボソリと言うと、ホルガーはわざとらしい溜息をついた。私はちらりと横目でホルガーを見ると、情けない表情のホルガーが見つめ返していた。
「お前が一体何やったっていうんだよ……」
確かに、ヒロインの後押しはしたが、悪いことは何もしていない。
私は微笑みつつホルガーの手にそっと手を重ねると、言った。
「私は大丈夫。覚悟は出来ているわ」
ホルガーが、頬を赤らめた。きっと同情してくれているのだろう。態度は雑だが、人情に厚い奴だ。
「それよりも、ホルガーには重大な任務があるのよ」
「へ? 任務?」
「貴方にしか頼めないの。やってくれるわね?」
「……え?」
怯えた様な表情を浮かべたホルガーにニヤリと笑いかけると、私は今日の計画を話し始めた。
◇
私はホルガーのエスコートで王城の広間へと入ると、想像していた通り、先に来ていた貴族達がヒソヒソざわざわとこちらを見て騒ぎ始めた。大方、よく来れたなとか言っているんだろう。
確かに私も自分の神経の図太さには驚くことがあるが、しかし私には羞恥を凌駕する明確な目的がある。
それに、どうせこいつらとはもう会うこともあるまいし。
本来だったら、私の婚約者のアルフレッドがエスコートする筈なのだが、奴はヒロインの侯爵令嬢、アンジェリカ・クリムゾンという赤髪のまあまあ美少女をエスコートしたいが為に、ご丁寧に本人を同伴の元私の屋敷まで赴き、断ってきた。
ていうか作者、クリムゾンで赤毛ってさすがに安直過ぎだろうと思ったが、多分ボキャブラリーが少ない人だったのだろう。あの時の、済まなそうな態度のアンジェリカと、威張りくさったアルフレッドの対照的なことといったら。私が思わず吹き出してしまいそうになっていたことは、内緒だ。
奴らは多分、私が恥辱に耐えて震えているとでも思ったに違いない。
私がそんなことを考えていると、広間の中心にいたアルフレッドと、目が合った。
如何にもありがち設定だが、パーティーには相方、いやパートナーを連れて行かなければ、白い目で見られ嘲笑の的になる。その為、急遽白羽の矢が立った私の従兄弟が迎えに来た。
金をかけたんだろうな、と推測される綺麗な青色の服を身に纏い、栗色の髪をゆったりと後ろにひとつで結んでいる水色の瞳の長身男性。大変見目麗しく、その柔和な笑顔に卒倒する令嬢は後を絶たない。
というか、この小説は大体においてイケメンしか出てこない。
町民だって割と皆イケメンにイケオジ揃いだ。反対に女子はまあまあというところ。これも恐らくは作者の願望だろう。
「ナタ、今日も緑の瞳が吸い込まれそうな程綺麗だ」
「嫌ですわ、ホルガーってば」
おほほ、とわざとらしく笑ってみせた。どうせお世辞なのは分かっている。使用人の前なので、私はせいぜいお上品ぶってみた。皆、私のパーツは褒めるが他は褒めない。つまりはまあそういう意味だ、と理解している。
私は差し出されたホルガーの腕に手を添えた。ホルガーが表で待つ馬車に私を連れて行く。パタン、と馬車の戸を閉めた途端、彼は足を組み、ぐたっと座席の背にもたれかかった。
「ちょっとさあ、今日本当に行く訳?」
あからさまに嫌そうな顔をし、それを隠そうともしない。私が返事をしないでホルガーの真向かいに腰掛けると、身を乗り出して顔を近付けてきた。
「アルフレッドの奴、お前との婚約破棄を発表するんだってあちこちで吹いてたぞ? 分かるか? 今行ったら見せ物になるんだぞ?」
「まあいいんじゃない?」
私が足を組みつつ外を眺めながらボソリと言うと、ホルガーはわざとらしい溜息をついた。私はちらりと横目でホルガーを見ると、情けない表情のホルガーが見つめ返していた。
「お前が一体何やったっていうんだよ……」
確かに、ヒロインの後押しはしたが、悪いことは何もしていない。
私は微笑みつつホルガーの手にそっと手を重ねると、言った。
「私は大丈夫。覚悟は出来ているわ」
ホルガーが、頬を赤らめた。きっと同情してくれているのだろう。態度は雑だが、人情に厚い奴だ。
「それよりも、ホルガーには重大な任務があるのよ」
「へ? 任務?」
「貴方にしか頼めないの。やってくれるわね?」
「……え?」
怯えた様な表情を浮かべたホルガーにニヤリと笑いかけると、私は今日の計画を話し始めた。
◇
私はホルガーのエスコートで王城の広間へと入ると、想像していた通り、先に来ていた貴族達がヒソヒソざわざわとこちらを見て騒ぎ始めた。大方、よく来れたなとか言っているんだろう。
確かに私も自分の神経の図太さには驚くことがあるが、しかし私には羞恥を凌駕する明確な目的がある。
それに、どうせこいつらとはもう会うこともあるまいし。
本来だったら、私の婚約者のアルフレッドがエスコートする筈なのだが、奴はヒロインの侯爵令嬢、アンジェリカ・クリムゾンという赤髪のまあまあ美少女をエスコートしたいが為に、ご丁寧に本人を同伴の元私の屋敷まで赴き、断ってきた。
ていうか作者、クリムゾンで赤毛ってさすがに安直過ぎだろうと思ったが、多分ボキャブラリーが少ない人だったのだろう。あの時の、済まなそうな態度のアンジェリカと、威張りくさったアルフレッドの対照的なことといったら。私が思わず吹き出してしまいそうになっていたことは、内緒だ。
奴らは多分、私が恥辱に耐えて震えているとでも思ったに違いない。
私がそんなことを考えていると、広間の中心にいたアルフレッドと、目が合った。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。
aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
第三王子の「運命の相手」は追放された王太子の元婚約者に瓜二つでした
冬野月子
恋愛
「運命の相手を見つけたので婚約解消したい」
突然突拍子もないことを言い出した第三王子。その言葉に動揺する家族。
何故なら十年前に兄である王太子がそう言って元婚約者を捨て、子爵令嬢と結婚したから。
そして第三王子の『運命の相手』を見て彼らは絶句する。
――彼女は追放され、死んだ元婚約者にそっくりだったのだ。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる