尻尾が生えたら優等生な幼馴染みがキスをすると言い出した

ミドリ

文字の大きさ
1 / 13

1 白い尻尾

しおりを挟む
 夏休みの、とある一日。

 自分の部屋のシングルベッドで目を覚ますと、短パンを履いてむき出しになった腿にふさふさとした物がふにふにと触れていることに気が付いた。

 これは何だろう。眠い目を擦りながら感触がした方を見ると、白い大きな尻尾の様な物がもふもふと動いているのが視界に入る。

「え……?」

 それは、我ながらキュッと引き締まった私のお尻から飛び出していた。というか、恥骨の上あたりからもっさりと生えていて、パンツがずり下がっている。

 ふわふわの白い尻尾は、犬の尻尾の様に見えた。

「……おいおい」

 思わずうら若き女子らしからぬ言葉が飛び出した。急ぎベッドから飛び降りると、姿見の鏡の前に立つ。

 そこに映るは、スラリとした足。短パンとパンツが骨盤からずり落ちかけている下腹部の背後には、先程確認した白い尻尾がパタパタと動いている。その上に行くと、高校生になって大分発達してきた胸部に、長いサラサラな黒髪が垂れる。スタイルの良さにはちょっと自信があったが、乗っている顔は丸く童顔なので、若干ちぐはぐ感は否めない。これからに期待したいところだ。

 そして、その頭の上からは、白い耳が生えていた。

 猫耳ならぬ、犬耳。立派な白い尾。それがぴょこぴょこと私の意思とは関係なく揺れている。

「なにこれ……」

 拙い。何が拙いって、これからの高校生活をずっとこれで過ごす訳にはいかないだろうし、そもそも耳と尻尾を出したまま日常生活を送るなんて頭の痛い子みたいなことが出来る訳がない。というか何だこれ。何でいきなり耳と尻尾が生えてるのか。

 私が固まっていると。

「キョウー? 起きてるか……」

 ガチャ、といきなりノックもなしに人の部屋のドアを開けた奴がいた。

「わっ! セイ!」

 誓と書いてセイと読む名のこの幼馴染みは、人の家だろうが人の部屋だろうが例えそれが若い女子の部屋だろうが何も気にせず勝手に入ってくる、同い年の男子高校生だ。

「あ、珍しく起きて……え?」

 最近急激に背が伸びたが、顔にはまだ幼さが残る。少し垂れ目の優しい雰囲気を持つセイは、小学校や中学校では女子女子とからかわれていたが、高校になってからは急激にもて始めた。私はそれが、ちょっと腹立たしい。

 ――自分ばっかりもてやがって。

「……コスプレ?」
「するかボケ」

 思わずつっこむ。セイは大事な幼馴染みだが、でもだからこそ気心が知れすぎて思いやりの言葉を使用することが出来なかった。

 追い越されただけでなく段々と見上げる様になった背も、同じくらいだった肩幅もどんどん逞しくなっていって、気付けば視線はいつもセイに向いてしまっていた。

 最近、私はちょっとおかしいみたいだ。

「起きたらこんな状態になってて」
「え? あれ、動いてる」

 セイは私に近づいてくると、セイが近付くにつれパタパタと動きを激しくし始めた尻尾に恐る恐る手を触れる。

「あっ」

 今まで感じたことのない存在しない筈の場所に触れられた不思議な感触に、私は思わず変な声を出す。すると、セイが目を見開き私を見下ろした。

「ちょっと、変な声出すなよ」

 そう言って、ムニムニと尻尾を撫でくり回す。

「ひゃっや、やめて!」

 あまりのくすぐったさに身を捩って笑うと、セイの視線が私の尻尾の付け根に注がれていることに気が付いた。

「あ」

 プリッとした私のお尻が、むき出しになっている。

 たらり、とセイの鼻から赤い血が流れていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

処理中です...