尻尾が生えたら優等生な幼馴染みがキスをすると言い出した

ミドリ

文字の大きさ
2 / 13

2 セイの尋問開始

しおりを挟む
「つまり、全く身に覚えがないってこと?」

 前屈みになりベッドに向かって床に座っていたセイが、鼻血がようやく止まったのだろう、振り返ったと思うとそう言った。

 ベッドに座りなよと勧めたが、頑なに断られた。見られたくないとかなんとかゴニョゴニョ言っていたが、意味が分からない。

「起きたらいきなりこうなんだもん」

 尻尾の所為で下着も短パンもずり下がってきてしまうので、とりあえず長い巻きスカートを巻きつけて、パンツは思い切って脱いだ。スカートの後ろが明らかに盛り上がっているが、この際仕方ない。

「お腹がスースーする」
「ほっ報告はいいからっ」

 また鼻をティッシュで押さえ出したので、やめてやることにした。子供の頃から裸の付き合いをしてきた私でも、さすがにノーパンをふんぞり返って報告し続けるのはあまりよろしくないことくらいは分かる。私にだって恥じらいというものはあるし、それよりもセイにお尻を見られてしまったことは……形がいいとか、思ってくれたのか気になる。

「何か変な物食べたとか」
「いやー? 特に」

 夏休みになって、特段変わった物は食していない。

「じゃあ、最近何した?」

 赤い顔をしたセイが、ティッシュの奥から言った。

「昨日は……夏休みの課題」
「一日やってた訳じゃないだろ」

 その通り。殆どの時間をゲームをして過ごしていた。私のそので理解したのだろう。セイがずい、と顔を近付けてきた。近くで見ると、まつげが長くて肌がぴんと張り詰めていて若いなあと思う。自分も同い年だが、きめの細かさはきっとセイの方が上に違いない。

「何のゲームしてた?」
「え? いつものオンラインRPG」
「……他は?」

 昨日。しかも自分のことだ。何をしたか、もちろんよく知っている。だが、まさか言える訳がなかった。言ったら絶対馬鹿にされる。

「おい、何か覚えがありそうな顔してんじゃん」

 セイの顔が怖くなってきたので、私はあっさりと折れて白状することにした。肝心な部分を言わなければいいか、そう自分に言い訳をしながら。

「……夕方に、神社に」
「神社? なに、誰と」

 段々と尋問めいてきた気がするが、今ここで頼りになるのはセイしかいない。なので、私は素直に答えた。

「ひとりだよ」
「本当か? ひとりで何しに行った」

 本当に尋問になってきた。カツ丼があれば完璧なんだけどなと考えた瞬間、ぐうう、とお腹が鳴る。

「お腹空いた」

 欲求を素直に口にすると、セイの顔が般若みたいになってしまった。

「おい、誤魔化すな」
「ご、誤魔化してないよー」
「お前は嘘が下手くそなんだよ! いいから吐け!」

 セイは品行方正なクラス委員も務める優等生オブ・ザ優等生だが、その所為かあまり融通が利かない。一回言い出したらなかなか譲らないし、セイがこうだと思ったらそれを覆す為にはきちんと物的証拠を揃えて提出しないと納得しない。

 ひと言で言ってしまうと若干面倒くさい奴なので、見た目のソフトさとはかけ離れた頑固さに近付いてきた女子が撃沈するのを何度も見かけたことがある。

 元々髪の毛の色が薄くて一見カラーしている様に見えるところも、女子が近付いてくる要因のひとつになっているのだろう。その見た目に騙されて。

 セイのことは『女子ホイホイ』と心の中で呼んでいたが、これは内緒だ。言ったら冷たい声で「は?」と言われるのは目に見えていた。

「神社に何しに行った」

 セイの顔が近付いてくる。所々に散りばめられたそばかすが可愛いなあと思ったが、セイを素直に褒めるなんて恥ずかしくてとてもじゃないが出来ない。それに男に可愛いって言っても喜ばれないと聞いたことがあるから、言えなくて逆に都合がいいと思うことにしていた。

「あの、その、小森町七不思議のあれを……」
「はあ? 七不思議?」

 セイは睨みつける様にしているが、私はセイの歯並びが綺麗だなあと今度は口の中をじっと見ていた。やっぱりセイはいいパーツを持っている。

 唇も薄めだが柔らかそうだし、小さい頃はお互い気にすることなく口にちゅっちゅしていたものだが、そういえば最後にしたのはいつだったか。年長……いや、小1。いや、確か小2の時に泣いている私にセイがした様な。

「キョウ? 聞いてるのか?」
「はっ」
「なにぼーっとしてんだよ。お前のことだろ?」
「すんません」

 セイとの最後のチューがいつだったかを思い返していましたなんて言ったら、セイはどんな反応を示すだろうか。汚物でも見る様な目で見られたらさすがに悲しいから、発言は控えた。

「なに、その小森町の七不思議って」
「あのー、学校で聞いてさ、それで試しに……」
「だから何をだよ」

 セイの怒った様な顔が、もうすぐ目の前にある。すると、私のスカートの中の尻尾がふりふり振るのをやめ、するりと私の足の間に入り込んできた。

「うは」

 ふわふわだがくすぐったい。

「何笑ってんだよ」
「いや、尻尾が足の間にどんどん入ってきてくすぐったくて……っ」
「え!?」

 セイがそう言った瞬間、またセイの鼻からたらりと血が流れてきた。

「ちょっと大丈夫?」

 こんなにたらたら垂れて、どこか身体に問題があるんじゃないかと思わず心配になる。

「お前が変なこと言うから……っ」
「はい?」

 なんで私の所為になるのか。思わずムッとすると、セイが空いている方の手で額を押さえた。

「いいから話せ。な?」
「――はい」

 あまりにも低い声に、足の間の尻尾がギュッと縮こまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...