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17 俺はこうして透明を探しました。
しおりを挟む「何か進展は?」
「すみません。透明な人間を探すのは至難の業でして・・・・」
透明の捜索を指示した部下は気まずそうに目を泳がせた。
透明が消えてから一ヶ月・・・・
未だに透明とひょろ男の消息が掴めない。
サッチェル家の屋敷も隈なく捜索させたが見つからず、クソなあいつらの両親は大事な嫡男であるひょろ男でさえ、『勘当したから奴は我が家とは関係ない』と跳ね除けた。
透明をリンゼンに連れて帰る気満々だった俺は未だセイラ王国から出れずにいる。
今も元セイラ国王の無駄に仰々しい椅子に座り、イライラと膝を揺すっていたところだ。
唯一の手掛かりであるあのピンクと青の花でさえ、群生場所が掴めない。
あいつはたまにグラの穀物を持ってきてくれたが、この国の気候では育たないはず。
この国で食べられている一般的な穀物でもないため、市場にも出回っていない。
透明はどこからグラを入手したんだ?
有力な情報が手に入ったのは、それから2週間後のことだった。
「翠の森というところにグラが生えていたのか?」
「はい。確かに確認致しました。あれは水の豊かな温暖な地でしか育たないはずなので、この国で栽培するのは困難なはずなのですが・・・・」
部下のリードが採ってきたグラを掌で弄(もてあそ)びながら思考を巡らす。
グラは穀物の中でも加工が簡単なうえ、栄養価が高い。保存食としても優れているし、それを知った上で誰かがそこに植えたのだろう。
翠の森には危険なスリーピーホークスが何匹も生息してるため、街の人間は足を踏み入れないと聞いた。
恐らく透明とひょろ男はそこにいるに違いない。
しかし、スリーピーホークスは縄張り意識が強く、誤って巣に近づきでもしたら、間違いなく殺される。
なんせ体長10mもある巨大な鳥だ。
並の奴らなら瞬殺されるだろう。
部下を森の深部にまで入れるのは難しい。
だが、俺一人で広大な森の中を捜索するのは現実的ではない。
どうしたものか・・・・。
暫(しばら)く熟考(じゅっこう)したのち、俺はエマナを呼ぶよう、リードに指示を出す。
あまりやりたくはないが手段を選んでいる暇はない。
これ以上、透明に逃げられては本当に手の届かない場所に行ってしまうかもしれない。
俺はそれが怖かった。
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