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騎士団長結婚したってさ
しおりを挟む「おい、聞いたか?ランゲ団長の噂」
騎士団の訓練が終わりシャワーを浴びていると、隣で同じくシャワーを浴びていた同僚がそう声をかけてきた。
「噂って?」
頭をガシガシ拭きながら聞き返すと、同僚は申し訳程度に声を顰める。
「結婚したって。」
「はぁ……⁉︎⁉︎ランゲ団長がか⁇
相手は誰だよ?あの顔面凶器に耐えられる女なんかこの世にいるのか?」
先ほどの訓練中、バッタバッタと部下たちを薙ぎ払う自分達の上司……もといランゲ団長の鬼の形相を思い出しぶるりと体が震えた。
「この間、聖女召喚の儀があっただろ?
どうやらその時に、間違って聖女と一緒に召喚されてしまった女らしい。」
「……異世界の女ってわけか。
その女のいた世界では、ランゲ団長みたいな見た目はさほど忌避されないってことか?」
「いや……同じ世界から来た聖女様はランゲ団長を見てブルブル震えていらっしゃったらしいから、異世界でもあの顔は怖いんだろう。恐怖のあまり近くにいたレオーン騎士団長にしがみついていたそうだ。」
レオーン騎士団の団長は大層な美丈夫だが、既婚者のくせに女癖の悪さも天下一品だ。
鼻の下を伸ばして聖女様を抱き寄せるレオーン騎士団長の姿が容易に想像できる。
「……へぇ、ならなんでランゲ団長とその異世界の女が結婚などという話になったんだ?」
「それがどうやらその女……異形な姿をしているらしい。人かどうかも怪しいという話だ。」
「その話なら俺も聞いたぞ!」
いつの間にかデカくなっていた声に反応して他の同僚たちも俺たちの話に耳を傾けていたらしい。
シャワーを終え、ベンチに座っていたうちの一人が急に話に割り込んでくる。
そんなことより丸出しのものをしまえ!
そんな俺の心情を無視してそいつはなおも話を続けた。
「その場にいた俺の従兄弟の話によると、肌は焦げたように黒く、目は人ならざるデカさで、唇が真っ白らしい。
髪は毛先がピンク色に変色し、鼻や目の周りに紋様が刻まれてるんだと。
あと、爪は鋭く尖っていて、女だと言うのに足を晒していたらしいぞ。」
それを聞いた同僚たちは各々姿を想像したのか、顔を顰めたり、驚いたような表情をしたりと反応は様々だ。
「…………ランゲ団長は本当にそれと結婚したというのか?
というか本当にそれは人間か⁇」
「あぁ、結婚は本当らしい。
召喚した異世界人を野放しにするわけにもいかず、かといってそんな恐ろしいものを預かろうとするものもいない。
一時は檻に入れようかという話になったらしいが、それに反対したランゲ団長にお鉢が回ったということだ。
それに、その女は我々と似たような言葉を話すらしい。
ところどころ分からないところはあるらしいが……。
見た目は我々とだいぶ違うがそういう部族なのではと。」
ランゲ団長は自分にも他人にも鬼のように厳しく、己の正義に背かない人だ。
勝手に召喚して勝手に檻に入れようとするなどあの人の性格を考えれば絶対に許さないだろう。
顔は鬼神のように恐ろしいし、俺らのようなペーペー団員など指一本で殺せそうなくらい強い。
ランゲ団長の隊に配属になると聞いたときには一週間涙で枕を濡らしたものだ。嫌すぎて。
初めて伝達のため話しかけたときは「あ゛ぁ⁉︎」とドスの効いた声で返事をされ、思わず漏らしそうになっていたあの頃の自分が懐かしい。
そんな恐すぎるランゲ団長と結婚とか……檻に入っていたほうがまだましではないだろうか。
まぁ、確かにランゲ団長ならその女がもし魔物で寝首を掻いてこようとも負けはしないだろうが。
そもそもあんな性格で誰かと一緒に暮らせるのか?
裏で鬼死団長とか呼ばれてる人だぞ?
一体上層部は何を考えてるのやら……
恐いものに怖いものを当てて相殺しようって魂胆か?
ランゲ団長と話に聞いた恐ろしい見た目の女との結婚生活を想像してみたが、どう頑張っても血生臭い展開にしかならなかった……。
果たして不運なのはランゲ団長か……その女か……。
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