2 / 30
ヤマンバギャルが嫁にきた
しおりを挟む今日、聖女召喚の儀が行われた。
いや……行われたというと語弊があるかもしれない。
大昔の大魔道士が残したという……国が未曾有の危機に瀕した時のみ光る水晶がなんと突然眩い光を発したのだ。
この水晶が光ったのは、およそ300年ぶり。
国王は存在自体忘れておられたようで、水晶は物置小屋のガラクタ箱に放り込まれていた。
宰相とメイドが逢引しているときにたまたま発光し、慌てて我々に招集がかけられたのだ。
水晶を中心に皆で周りを囲んでいると、どんどんと光が強くなる。
そのうち、誰もが目を閉じざるおえなくなるほどの光が放出された。
やっと光が終息し、目を開けるとそこには見たこともない人間が二人……。
黒髪に鳶色の瞳の小柄な女が一人。
もう一人は、肌が黒く、毛先は桃色に変色しており、顔に見たことのない紋様を描いている女?だった。
文献によると聖女は黒髪黒目と記載されていたが、恐らく黒髪の小柄な女が聖女なのだろう。
もう一人の異形な姿の女は、不運にも巻き込まれたらしい。
それが、俺の妻となった女との出会いだ。
*+*+*+*+*+*+*+*
聖女召喚の儀が終わり、誤って召喚してしまった女を家に連れ帰ることになった。
見た目が我々と違うからといって、檻に入れようなど馬鹿なことを申す奴らがいたからだ。
現に女は戸惑ってはいたものの我々を害すような様子は微塵も見受けられなかった。
俺が異を唱えると、平民出の俺のことを嫌っている上層部の文官どもが好機とばかりに女を押し付けてくる。
ここに置いておいても、俺の見ていないところで非人道的な対応を受ける可能性は高い。
仕方がなく家まで連れ帰ってくるしかなかった。
「ここが俺の家だ。」
そう言って家の扉を開ける。
なんてことない一軒家だ。
国王からは、騎士団長として爵位と屋敷を授けると常々言われているが、必要ないので毎回断っている。
爵位なんてあったところで、堅苦しい夜会の出席回数が増えるだけだし、一人で住むのにデカすぎる屋敷は逆に不便だ。
誰かと一緒に暮らすなど考えたこともないため使用人を雇いたいとも思わない。
家でくらい人目を気にせず、気を抜いて寛ぎたい。
「きたなっ‼︎掃除苦手?」
家の中に踏み入れた瞬間、女はそう言って辺りを見渡す。
そこら中に脱ぎ散らかした服が散乱し、机の上には食事のあとそのままになった食器が所狭しと並んでいる。
シンクが洗っていない食器で埋まっており、他に置くところがなかったのだ。
「部屋が汚くても死にはしない。」
足で服を除けながらリビングを抜け、階段を登る。
「お前の部屋は2階の奥だ。必要なものは明日買いに行く。
俺はまだ仕事が残っているから城に戻るが、お前は好きに過ごすといい。
……但し、家からは出るな。」
「り。」
「…………」
よく分からない返事が返ってきたが、尖った爪のつく指で器用にマルを作っていたので恐らく通じたのだろう。
俺は一人階段を降りると玄関に向かい、鍵を掛ける。
少し歩いたところで一度だけ家の方を振り返ると、2階の窓から「いってらー」とこれまたよく分からない言葉を発しながら、こちらに向かって大きく手を振る女が見えた。
32
あなたにおすすめの小説
義姉の身代わりで変態侯爵に嫁ぐはずが囚われました〜助けた人は騎士団長で溺愛してきます〜
涙乃(るの)
恋愛
「お姉さまが死んだ……?」
「なくなったというのがきこえなかったのか!お前は耳までグズだな!」
母が亡くなり、後妻としてやってきたメアリー夫人と連れ子のステラによって、執拗に嫌がらせをされて育ったルーナ。
ある日ハワード伯爵は、もうすぐ50になる嗜虐趣味のあるイエール侯爵にステラの身代わりにルーナを嫁がせようとしていた。
結婚が嫌で逃亡したステラのことを誤魔化すように、なくなったと伝えるようにと強要して。
足枷をされていて逃げることのできないルーナは、嫁ぐことを決意する。
最後の日に行き倒れている老人を助けたのだが、その人物はじつは……。
不遇なルーナが溺愛さるまで
ゆるっとサクッとショートストーリー
ムーンライトノベルズ様にも投稿しています
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる