13 / 30
パーティーに来た
しおりを挟む騎士団長になってから必要最低限とはいえ、それなりに夜会には参加してきた。
無駄に着飾った金持ちどもが見栄を張るためだけの無駄な催しだ。
煌びやかな世界で運命的な出会いなんて期待しちゃいない。
俺は体はデカいし、傷だらけだ。
女が喜ぶような気の利いたことなんて言えないし、面白くもないのに笑えない。
女に好かれるような甘い顔立ちでもないし、逆に目が合っただけで貴族の女たちは大袈裟に震え出す。泣かれたことも一度や二度じゃない。
俺にとったら夜会なんて窮屈な服着て、ただ突っ立って時間が過ぎるのを待つだけのものだった。
今までは……。
「アッくんめっちゃカッコいい‼︎‼︎
めっちゃ黒似合う‼︎さすがあたしの旦那様」
そう言って得意げに微笑むのは俺の嫁だ。
正直言ってお前もかなり可愛いぞ。
今日は珍しく髪をアップに纏めており、トレードマークのピンクの毛先が見えない。
髪を下ろしているのも可愛いが、纏めているのも可愛い。
鮮やか緑色のドレスも俺のもの感があってかなり気分を高揚させる。
まぁ、口に出しては言わないが。
椿は異世界人だからなのか、とてつもなく変わった女だ。
顔に変な紋様を描くのは平気なくせに、素顔を晒すのは恥ずかしがる。
初めてこいつの素顔を見た衝撃は今でも忘れない。
こんなに整った容姿をした人間を俺は初めて見た。
あとピンク大好き人間で隙あらば家にピンク色のものを増やそうとする。
なのに、出かける時は俺の瞳に合わせた緑色の服ばかり着る。
普段は生意気なくせにベッドの中では従順で……恥ずかしそうに漆黒の瞳を潤ませる。
危なっかしくて目が離せない。
可愛くて手放せない。
みんなに見せつけてやりたいのに、誰にも見られないように閉じ込めて囲ってしまいたい。
大事にしてやりたいのに、無性に壊してしまいたくもある。
椿を想うと矛盾だらけのよく分からない気持ちになる。
そんな特別な女を連れての夜会……。
無邪気に楽しそうにはしゃぐ姿を見ていると、苦手な夜会もいつもと感じ方が変わってくるから不思議だ。
こんなに喜ぶならもっと参加してもいいかもな……。
そう思ってしまうほどに……。
「ねぇねぇ、アッくん。」
「あ?」
「なんでみんなご飯食べないの?
あんな美味しそうなのに。」
椿はコソッと小さい声で俺にだけ聞こえるように質問する。
「そもそも女は夜会では滅多に飯は食わねえよ。」
「えっ……なんで!?」
「お前みたいにバクバク飯食う女は稀だ。
貴族の女は馬鹿みたいに少食だからな。」
「でも、食べてもいいんだよね?
アッくん一緒に取りいこーよ。」
「別にいいけど、お前人前で絶対アッくんって呼ぶなよ。」
「オケオケ」と軽く返事を返されつつ、軽食が綺麗にディスプレイされている部屋の一角へと向かう。椿は今にもスキップしそうなほどご機嫌だ。
俺は不安だが……。
「ん~~、おいしっ‼︎これめーっちゃ美味しいよ‼︎」
そう言って椿は屈託なく笑った。
…………男どもの視線が気になるな。
俺が睨みつけると途端に視線を逸らすが、すぐまた椿を見つめ出す。
フロアに入った時からずっとだ。
デカい扉から仰々しく入室させられた時、中にいた奴らが一斉にこちらを見た。
俺が娶った噂の異世界女がよっぽど気になっていたらしい。
最初の見た目から色んな噂が飛び交っていたから、面白半分にニヤついた顔がいくつもこちらに向けられる。
だが俺の腕に捕まって、のほほんと辺りを見渡してる椿を見て、室内は一瞬にして静まり返った。
……明らかに全員アホみたいな顔で椿に見惚れていた。
それからはずっと見られている。
俺が椿の横に張り付いてるので、声こそ掛けてこないが少しでも離れたら一瞬で囲まれるだろう。
「ん?どしたの?食べたい?アーンする?」
俺は小首を傾げてフォークを差し出す椿を睨め付ける。
呑気な奴め。こいつはほんと微塵も気付いてねぇな……。
まぁ、そんなところにも惚れてるので仕方がない。
俺は「ハァー」と大袈裟にため息をついた。
33
あなたにおすすめの小説
義姉の身代わりで変態侯爵に嫁ぐはずが囚われました〜助けた人は騎士団長で溺愛してきます〜
涙乃(るの)
恋愛
「お姉さまが死んだ……?」
「なくなったというのがきこえなかったのか!お前は耳までグズだな!」
母が亡くなり、後妻としてやってきたメアリー夫人と連れ子のステラによって、執拗に嫌がらせをされて育ったルーナ。
ある日ハワード伯爵は、もうすぐ50になる嗜虐趣味のあるイエール侯爵にステラの身代わりにルーナを嫁がせようとしていた。
結婚が嫌で逃亡したステラのことを誤魔化すように、なくなったと伝えるようにと強要して。
足枷をされていて逃げることのできないルーナは、嫁ぐことを決意する。
最後の日に行き倒れている老人を助けたのだが、その人物はじつは……。
不遇なルーナが溺愛さるまで
ゆるっとサクッとショートストーリー
ムーンライトノベルズ様にも投稿しています
『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。
カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」
なんで?!
家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。
自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。
黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。
しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。
10人に1人いるかないかの貴重な女性。
小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。
それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。
独特な美醜。
やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。
じれったい恋物語。
登場人物、割と少なめ(作者比)
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる