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雪の妖精があらわれたんだってさ
しおりを挟む「アレクさーーん☆」
村に着く頃にはシンシンと降るボタン雪に変わっており俺たちが雪を踏む音しかしない。
そんな中、鈴の音のような清らかな声が聞こえた……気がした。
「わっ、この人どうしたの!?大丈夫??」
「気にするな……ただのマヌケだ。」
やっぱ聞こえる……。ついでに鬼の声も聞こえる。
声のする方に目を向けると、ふわふわもこもこの緑色のコートに身を包んだ雪の妖精がいた。
もこもこフードをしっかり被っているためコロコロしていてめちゃくちゃ可愛い。
頬と鼻の頭をりんごのように紅くし、満面の笑みで鬼を見上げでいる。
可愛い。
「あっちに治療院あるから運んであげてね。
お湯もいっぱい沸かしておいたよ。」
「……お前も来い。」
「もうっ、寂しがりやだなぁ。
みんなにあったかいもの配っておくから行ってすぐ帰ってきて。」
「ちっ、分かった。」
鬼……ことランゲ団長は素直に肩に担いだ部下を治療院に置きに歩き出す。
ランゲ団長相手に言うこと聞かせた……!?
というか寂しがりや⁉︎
この世であの人にもっとも不向きなワードだろ。
あの雪の精は何者なんだ!?
まさかほんとに雪の精なのかっ‼︎
それにしても可愛いっ‼︎‼︎
「みんなは村役場におしるこ用意しておいたから取りに行ってねー☆」
「……可愛い。」
「えっ?」
「いえ、何でもありません。お気遣いありがとうございます。
おい、お前ら行くぞ。」
副官からボソリと思わず本音が漏れた後、俺たちはぞろぞろと村役場に移動した。
「うんめーー‼︎‼︎」
「あったまるぅ‼︎あぁ、生きてる。俺は今漸く実感できた。」
「本当に美味いな。何でできてるんだ、これ?」
最初、大鍋いっぱいに煮えている茶色いドロドロした豆のスープを見てみんな「まじかよ……」って感じだったけど、予想に反しそのスープはめちゃくちゃ美味かった。
甘くて体がぽかぽかする。
丸い餅が腹に溜まって満足感もある。
何度もおかわりする俺たちに雪の精は笑顔でスープを装ってくれる。
可愛い。
「椿……。」
ドシンドシンと向こうのほうから鬼が帰ってきて、団員たちが途端にキリッとした顔を装う中、雪の精だけは幸せいっぱーいって感じで微笑んでいる。
「あっ、おかえりー。あの人大丈夫だった??」
「心配ない。あれくらいで死ぬような柔な鍛え方はさせてない。」
「そっか。大丈夫ならいんだけどさ。
アレクさんもおしるこ、はい。
食べられそうなら後でさっきの人にも持ってくね。」
「…………俺が直々に持ってくから、お前はジッとしてろ。」
「えーー、めっちゃ部下想い‼︎
そういうとこもだーいすき。」
…………えっ⁉︎⁉︎好きなの⁇⁇
雪の精が?あの団長を⁇
ナチュラルに交わされる会話の内容に誰もが耳をすまし、そして誰もが驚愕した。
というか、そもそもランゲ団長の発言は部下を想ってのことではない‼︎
どう考えても、雪の精がボル(倒れてた奴)と治療院で会うのを阻止したいだけだ。
気づけ‼︎雪の精‼︎なんて可愛い顔で笑ってんだチクショー
「そう言えばここの村、サウナ湯っていう建物があるんだよ。後で一緒に入ろ?」
うおーーーーい‼︎‼︎
そんな鬼とそんなとこ入ったら、おまっ、おい!うおぉーーいだぞ⁉︎
その発言に対してランゲ団長が雪の精に何か耳打ちをすると、みるみる間に顔を真っ赤に染めて耳を抑えて俯いてしまった。
…………え?え?今絶対エロいこと言ったじゃん。
えっ?絶対言ったよね?ねぇ、みんな?
確認のため他の団員のほうを見ると、みんな示し合わせたように頷く。
中にはちょっと前屈みの奴までいる。
おい……バレたら死ぬぞ?
「ランゲ団長……そちらの方は?」
勇者‼︎あなたが勇者だ‼︎
みんなの期待を背負い、一歩前に踏み出し、果敢に質問を繰り出した副官をみんな尊敬の眼差しで見つめる。
「…………嫁だ。」
「初めまして☆アレクさんがいつもお世話になってますっ★」
…………嫁?
嫁って…………嫁?
だってランゲ団長の嫁って…………えっ?
「じゃあ……そちらの方が例の異世界人の方ですか?」
「そうだ。」
そんな………………。
団長に扱かれる度、団長の嫁はブサイクって唱えて心の平静を保っていたのに……。
これから俺はどうすれば…………。
膝から崩れ落ちそうな感覚に陥り……実際に崩れ落ちた。
その時、物凄い地響きとともに国中に響き渡る耳を塞ぎたくなるような咆哮があたり一面に木霊する。
体がビリビリと震えるような感覚に、今まで出会ったことのないレベルの魔物の出現を確信した……。
あっ……これ、絶対ヤバいやつ
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