強面騎士団長、異世界ギャルを嫁にもらう

さねうずる

文字の大きさ
20 / 30

王宮にて

しおりを挟む

――――後日、王宮にて――――


「氷河竜だ。」

「この間の地鳴りの原因ですか?」

「そうだ……。」

国の文官、武官の上層部が円卓を囲む中、重々しく国王が口を開く。


「それは一体何なのです?聞いたことがありませんが。」

「魔物だ。地上最強の。全長100mもあるデカい魔物で300年に一度南郷湖山から北泉湖山に住処を変えるらしい。」

「全長100mの……」
「魔物……」

「そうだ……。今年がその300年目だ。どうやら先日目を覚ましたらしい。
1ヶ月ほどで住み替えのために移動を始めるだろう。」

南郷湖山と北泉湖山はこの国のちょうど南と北の端に位置する山岳地帯だ。
誰も頂上を見たことがないほど高く、険しい。

先日の雪山訓練も南郷湖山の麓から三合目のところで実施したのだ。
それでも鍛え抜かれた男たちがぎりぎり生きて帰れるレベルの過酷な環境だ。

そこから上は未知の世界。
神の領域とも呼ばれている。


「南郷湖山から北泉湖山まで移動するということは……」

「そうだ。この国の上を飛んで通過する。
氷河竜は直接人に危害を加えることはないらしいが、飛ぶ時に氷の塊を大量に落とす習性がある。
10mはある氷の塊が空を覆い尽くすほどこの国に降り注ぐことになる。」


「この国の未曾有の危機という訳ですか……。」

「王は一体どこでそれを?」

「マル秘王族秘伝の書だ。水晶がしまってあったガラクタ箱に一緒に入っていた。」

「「「………。」」」

「……ゴホン。その竜は倒す術はあるのですか?」

「いや、倒すことは不可能だ。
ライガンの1000倍は強いと書いてあった。」

「ライガンの1000倍⁉︎
ライガンですらこの国で倒せるのはランゲ殿ただ一人だというのに‼︎」


「……だが我々には聖女がいる。」

「そうだ‼︎」

「聖女様はこのために降臨されたのだ。」

「して、聖女様はどうようにして我々を救ってくださるのか?」

「王族秘伝の書によると、聖女は情を交わした男たちに力を授けてくださると……。」

「……情を交わす?」

「情を交わす。」

皆は一斉に上を向き、情を交わすの意味を頭の中に思い浮かべる。
全員一致でエロい妄想がほわわ~んと浮かび上がった。

「……っなんと⁉︎そのようなことが‼︎」

「国王‼︎それは真ですか?」

「そうだ……。300年前も聖女と情を交わした男たちがこの国の危機を救ったと残されている。」

「では今回も……。」

「そう言うことだ。」

「ですが王よ。男たちということは一人ではなかったと……?」

「300年前は選ばれし英雄10人が聖女と情を交わした。」



「では、今回そのうちの一人は私ということになる!!」

突然凛々しく立ち上がったのは王太子だ。
皆の目が一斉に王太子に向かう。

「……なぜそう思う?」

国王が片眉を上げ、訝しげに問う。

「父上、私はすでに聖女様と情を交わしております。
聖女様の力はすでに私の中に宿っていることになる。」

「なんとっ……‼︎」
「王太子ともあろう方が婚姻も交わしてない女性と交わるなどっ」

文官の年寄りたちがザワザワと騒ぎ出す。

「それであれば、私も英雄の一人に名を連ねることになる。」

次に上がった声に、今度はそちらのほうに視線が注がれる。
レオーン騎士団長だった。

「すでに2人だと……?」
「レオーン殿は既婚ではないか……。」

「……他にも聖女と情を交わしている者がいれば正直に名乗り出よ。」

「「「…………。」」」

ザワザワと囁き声がそこかしこから聞こえる中、王の威厳ある声が響き渡る。

誰も彼もが口を閉ざし、名乗り出る者がいないか固唾を飲んで見守っていた。

すると、おずおずと手を挙げる者が……1,2,3,4•••7 !?

「既に9人ではないか‼︎」

王太子を除き、いずれも聖女が自らの護衛にと選んだ見目の良い貴族の騎士団員たちであった。


「なんと………。」

「……ま、まぁ?幸いなことに彼らはこの国でも魔力の多い者たちだ。何とかなるだろう。」

一応この国の人間は魔力を保有してるが、大した量ではないことがほとんどだ。
それにコントロールが難しいので、魔力封じの腕輪の着用義務がある。
魔物相手に戦う騎士以外は生涯魔法を使う機会はない。

その点でいえば、今回は騎士団の人間ばかりが英雄として選ばれてるのはラッキーと言えばラッキーだ。

「だが、あと一人はどうする?」

「それは…………」

みんなが一斉に視線を向けるのはこの国最強の男ランゲである。
当の本人は注がれる視線を気にする素振りも見せず、どこともない場所へ目を向けている。


「ランゲ、お主しかおらぬと思うがどうだ?」
「断ります。」


王が恐る恐る声をかけると間髪入れずに返事が返ってきた。

「だがっ……」
「俺には妻がいる。他の女を抱く気はない。」

「ランゲ殿、今は国の有事であるぞ。そのようなことを言っている場合ではっ……。」
「そもそも嫁に取るよう迫ったのは貴殿らだろうが。
もう一人は俺以外から選ぶといい。」
「……っ!」

平民の……それも貧民街出身のランゲが自分達と肩を並べた地位につくことをやっかんでいる者は多い。
ちょっとした嫌がらせのつもりだったのに、ここにきてそれが仇になるとは露にも思わなかったのだ。


「ランゲ殿以外となると難しいぞ……。」
「そもそもこの国で唯一雷魔法が使えるのはランゲ殿だけだ。」
「炎魔法は地面に接している必要があるから飛んでいる竜相手では不利だ。
かと言って水魔法が氷河竜相手に効くかどうか……」

この国の人間は炎魔法か水魔法しか使えない。
ランゲだけがどうしてか雷魔法を使うことができるのだ。
相性的に考えても実力的に考えても、ランゲが適任だというのにっ‼︎


答えの出ぬまま会議は一旦そこで終了となった――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義姉の身代わりで変態侯爵に嫁ぐはずが囚われました〜助けた人は騎士団長で溺愛してきます〜

涙乃(るの)
恋愛
「お姉さまが死んだ……?」 「なくなったというのがきこえなかったのか!お前は耳までグズだな!」 母が亡くなり、後妻としてやってきたメアリー夫人と連れ子のステラによって、執拗に嫌がらせをされて育ったルーナ。 ある日ハワード伯爵は、もうすぐ50になる嗜虐趣味のあるイエール侯爵にステラの身代わりにルーナを嫁がせようとしていた。 結婚が嫌で逃亡したステラのことを誤魔化すように、なくなったと伝えるようにと強要して。 足枷をされていて逃げることのできないルーナは、嫁ぐことを決意する。 最後の日に行き倒れている老人を助けたのだが、その人物はじつは……。 不遇なルーナが溺愛さるまで ゆるっとサクッとショートストーリー ムーンライトノベルズ様にも投稿しています

『完結・R18』公爵様は異世界転移したモブ顔の私を溺愛しているそうですが、私はそれになかなか気付きませんでした。

カヨワイさつき
恋愛
「えっ?ない?!」 なんで?! 家に帰ると出し忘れたゴミのように、ビニール袋がポツンとあるだけだった。 自分の誕生日=中学生卒業後の日、母親に捨てられた私は生活の為、年齢を偽りバイトを掛け持ちしていたが……気づいたら見知らぬ場所に。 黒は尊く神に愛された色、白は"色なし"と呼ばれ忌み嫌われる色。 しかも小柄で黒髪に黒目、さらに女性である私は、皆から狙われる存在。 10人に1人いるかないかの貴重な女性。 小柄で黒い色はこの世界では、凄くモテるそうだ。 それに対して、銀色の髪に水色の目、王子様カラーなのにこの世界では忌み嫌われる色。 独特な美醜。 やたらとモテるモブ顔の私、それに気づかない私とイケメンなのに忌み嫌われている、不器用な公爵様との恋物語。 じれったい恋物語。 登場人物、割と少なめ(作者比)

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました

えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。 同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。 聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。 ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。 相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。 けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。 女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。 いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。 ――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。 彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。 元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。

【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。

カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

処理中です...