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あたし、大冒険
しおりを挟むアッくん様子が最近変だ……。
妙にイライラしてるし、やけに甘えたがる。
それに最近甘ったるい香水の匂いが服から香ってくることが多い。
普段は汗か騎士団詰所でシャワーを浴びた時の石鹸のの匂いしかしないのに。
今だって夕飯を食べ終わってからずっと、ソファに座ってるあたしの脚に頭を乗せて腰に太い腕を巻き付けてる。
だいぶ疲れてるみたいなので頭皮をマッサージしてあげてると三白眼の鋭い目が気持ち良さそうにとろんとなって可愛い。
「最近仕事忙しいの?」
「……やりたくもない仕事を押し付けられてる。」
「どんな仕事?」
「要人警護だ。」
「ふーん。
…………どんな人警護してるの?」
「お前と一緒に来た聖女。
あることを断ったら、代わりに警護の任務につけと言われた。」
「…………そっか。」
そう言うとアッくんはそれ以上話したくないといった感じであたしのお腹にぐりぐりと顔を擦り付けてくる。
可愛い。可愛いけど…………なんかめっちゃモヤる。
あたしの可愛いアッくんがあの聖女(笑)のこと守ってるわけ?
モヤる。というかなんならムカつく。
あたしの知らないところであの女がアッくんの近くにいるって事実だけでムカムカする。
あの女がもしアッくんのこと狙ってたら?
あたしの見てないところでアッくんの逞しい腕に絡みついたり、抱きついたり、キスしたり、あまつさえ元カレのときみたいな…………
あーーーー嫌だ嫌だ、考えるのやめよ。
アッくんは浮気なんかしないし。
あんな男とは違うし。
そう思うのに......思いたいのに、アッくんの団服から香ってくる香水の匂いが気になって気になってしょうがなかった。
+*+*+*+*+*+*+
「あっ、ランゲ団長の奥様‼︎こ、こんにちは。」
「こんにちはー★
今日も見回りお疲れ様でっす‼︎」
今日は訓練の日でアッくんは一日騎士団の詰所にいるって言っていた。なのでお昼を持って行ってあげようと詰所に向かっていると、ちょうどアッくんの隊の人たちに会った。
なんちゃって敬礼で挨拶すると、アッくんの隊の人たちもちょっと笑って返してくれる。
雪山訓練の後も何回か差し入れ当番を担当したので、向こうも顔を覚えてくれたみたい。
でも、アッくんから差し入れ当番のこと聞いてなかったから、雪山訓練のお手伝いに行かなかったら未だに知らなかったと思う。
アッくんたらそういうとこ結構適当で困っちゃう。
女の世界はシビアだというのに何にも分かってないんだから。
「どこかにお出かけですか?」
「アレクさん、一日詰所にいるって聞いたからお昼ご飯持ってこうと思って。
今日の食堂のご飯、アレクさんの苦手なアスパラ料理だって言ってたし。」
そう言って籠を少し持ち上げる。
お昼ご飯のついでに団のみんなに差し入れも作ってきた。
「(ランゲ団長アスパラ苦手なんだ……) あー……すみません。団長なら朝から外出されてます。
聖女様が急に買い物に行きたいとおっしゃったようで予定変更されたみたいです。」
「……そうなんだ……そっか。
ははっ、じゃあ仕方ないかっ。
これっ、よかったらみんなで食べてね」
「あっ、ちょっと待っ……」
籠を団員の人に強引に押し付け、またもやモヤモヤした気持ちで元来た道をぐんぐん進む。
だが、途中でピタリと足を止めた。
ちょっと待って……買い物ってことは街に降りてきてるんじゃないの?
元の世界にいた時、偶然玄関で会うとあの女は見るたび違うブランド物のバッグを提げてた。
この間のパーティーだってギラギラの宝石をジャラジャラつけてた。
あの女、間違いなくブランド志向だ。
ということは、貴族街に近い西のホロロイ通りで買い物してる可能性が高い。
前にアッくんと冷やかしに行ったことがある。
「……ここからだとちょっと遠いな。」
アッくんと行った時はペガサスっぽい空飛ぶ馬に乗せて貰って行った。
ペガサスっぽいけど顔が般若みたいに怖くて全然メルヘンじゃなかったけど。
アッくんの相棒で名前がボスって言うんだけど、確かにボスって感じの顔してた。
あの時はボスがいたからすぐ着いたけど、歩いたら結構かかる。
「まだ昼前だし歩いて行ってみよっかな……。」
画してあたしは歩き出したのだった――――が
「遠っ‼︎めっちゃ嘗めてた……鬼遠い。ゼェゼェ。」
一時間半くらいで着くかなー?
とか思ってたら3時間もかかったし‼︎
しかもゆるーい上り坂オンリー。
水っ、今すぐに水っ‼︎
近場のカフェに入ろうと思ったけど、コーヒー一杯1000円の文字を見て足が止まる。
ま?
コーヒーが1000円てま?
流石に水だけください。は無理だよね?
詰所に行くだけだと思ってたから、財布の中身が心許ない。
なんか広場とかに水飲み場設置されてないかな……。
カフェを諦め、水を求めてトボトボ歩いているとチャラ男が道を塞いでくる。
「ねぇねぇ、お茶でもどうかな?」
グッ……こんなときに魅力的なお誘いがっ。
チャラ男には興味ないけど、お茶……奢りでお茶。
「……他を、他を当たって。」
誘いに乗った時のアッくんの鬼の形相を思い浮かべてなんとか耐える。
その後も次々と甘い誘惑(水分)をしてくるナンパ男たちを何とかスルーしていった。
「綺麗なお嬢さん、私すぐそこで店を出してるのですが宜しければ寄って行きませんか?」
何人目かをスルーすると今度は毛色の違うダンディーなおじさんに声を掛けられる。
てかめっちゃナンパされるじゃん。
なにここ?ナンパストリート?
「店?おじさんの店?」
「おじっ……⁉︎ ゴホン、ま、まぁそうです。
宝飾品の店ですよ。」
宝飾品の店。
……キタコレ。情報収集もできるしついでに水を一杯貰おう。
「うん。おじさんのお店行きたい。」
「では、参りましょう。」
腕を差し出してくるおじさんをスルーし、早速歩き出す。
その間もアッくんがいないかキョロキョロ見回すのを忘れない。
アッくん大きい上に歩くとモーゼみたいに人が道を開けるからいればすぐ分かるんだけどね。
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