強面騎士団長、異世界ギャルを嫁にもらう

さねうずる

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ドラマみたいにはいかない

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店に着くやいなか、おじさんに「水ください。」と頼む。
ことは一刻を争う。めっちゃカラカラ。

困惑しながらも水を出してくれた優しいナンパおじさんにお礼を言い、一気に飲み干すとその後二杯おかわりした。


「あー、生き返った!おじさんありがと。
ところで聞きたいんだけど、今日どっかででっかい護衛の人と黒髪の女の人ここら辺で見た?」

「それって今ちょうど向こうから歩いてくる人たちのことではないですか?」

おじさんが指差す方を見ると少し遠くにアッくんのシルエット‼︎
アッくん以外にも護衛を何人か連れてぞろぞろとこちらに歩いてくるのが見えた。

「ヤバっ‼︎この店に入ってくる気かもっ。
カウンターの下隠れさせて!お願い‼︎」

「えっ?あっ、まぁ、よく分かりませんがどうぞ。」

「ありがとっ」

急いでカウンターの下に身を隠し、暫くするとカランカランとドアベルの小気味いい音が店内に響く。

「いらっしゃいませー」

先ほどのおじさんがにこやかに対応を始める。
カウンターにいたもう一人の店員さんはあたしをチラチラ見て困惑気味なので、人差し指を唇に押し当て「シーー‼︎」と声なき声で伝えるとなぜか顔を赤くしてモジモジし出した。


「んー、どれにしようかしら。アレクあなたどれがいいと思う?」

コツコツとヒールで床を踏む男がショーケースの前を行き来する。

てかアレクってなに?あたしのアッくんに馴れ馴れしくない⁉︎

「……お好きに。」

アッくんの声がすぐ近くで聞こえて、びくりと体が跳ねる。


「ふふっ、じゃあ、あなたの瞳と同じエメラルドにしようかしら?だってあなたの瞳ってとっても綺麗なんだもの。」

「…………。」

うっとりとしたような男を誘う媚びた声だ。
こっそりガラスケースの隙間から覗くと、アッくんの頬に手をかけてめっちゃ至近距離で見つめ合う二人が見えた。


最悪……最悪最悪最悪最悪‼︎‼︎
あたしの旦那さんだって知ってるくせに‼︎
触らないでよっ‼︎

あの女の部屋で見た絶望的な光景が頭をよぎる……。

悔しくてちょっぴり涙が出たけど、あんな女に泣かされるとかまじ女が廃るから‼︎
グイッと涙を拭って、再び耳を澄ました。


「……店主、エメラルドをあしらったものを全て買う。後日取りにくるので包んでおいてくれ。」

「あら?プレゼントしてくれるの?ふふっ、嬉しいわ。それならもう十分買い物もしたし王宮に帰ってお茶でもしましょう。」


再びカランカランと扉の小気味良い音がした後、恐る恐るカウンターから出るとアッくんとアッくんの腕にしなだれかかっている聖女(笑)の後ろ姿が見えた。

どっくんどっくんと心臓が嫌な音を立てる。

…………ウソ。
アッくんあの女に自分の瞳と同じ色の宝石プレゼントしたの?
あたしがっ……あたしがアッくんの色だからって外行きの服は緑ばっかり着てるの気付いてるくせにっ‼︎

そこからは涙腺が壊れたみたいに号泣した。
これはあの女に泣かされたわけじゃないから……アッくんに泣かされたんだ。
なんて心の中で言い訳しながら泣きまくった。

店員の男の子が若干引きながらも、ハンカチを差し出してくれたのでその優しさにまた涙が出た。


帰り道は頭の中でぐるぐる考え事しながら、無意識に足を動かしていた。いい匂いがしてきてハッと顔をあげるといつの間にかいつも利用している商店街のところまで来ていたみたい。
辺りはどっぷり暗くなっていて、店の明かりがキラキラして見える。
多分、涙で潤んだ瞳で見たから相乗効果的に余計キラめいて見えていたと思う。
それでも夜に来たことはなかったので、そのキラめきに多少なり感動した。

アッくんもう帰ってるかな……
あたしの帰りが遅かったら心配して探してくれるかな?

なんだかとてつもなくアッくんの愛を試したくなって、らしくもなく一杯だけお酒を飲んでから帰ろうという気になる。

このチープな商店街の良心的な酒屋なら心許ない財布の中身でも一杯くらいは飲めるはず……。

よく魚屋で鉢合うヨシアさんがやってる店で一杯頼みダラダラ時間を過ごしてみた。

ドラマだったらここで、アッくんが店の扉を勢いよく開け放って、汗の滴る体で力一杯あたしを抱きしめる。「心配したぞ。うちへ帰ろう。」なーんて言いながら。

……........でも、現実はいくら扉を睨み付けても開く気配はない。
客もあたし一人しかいない。
ヨシアさんの店……想像以上に流行っていない。

1時間ほど粘ってすごすごうちに帰ると、家は真っ暗なままだった。

なんだ、アッくんも帰ってないのか……。
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