強面騎士団長、異世界ギャルを嫁にもらう

さねうずる

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吹雪注意報

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――――ガタガタ


「んー。ん?やばっ‼︎寝ちゃった‼︎」

アッくんが帰ってくるのをリビングのソファで待っていたら、うたた寝をしてしまったらしい。
起きたら朝だった。

部屋を見回しても昨日と同じ光景。
アッくんの姿はないし、いた形跡もない。

「……帰ってこなかったんだ。」

胸がチクチク痛む中、身も心も寒くて毛布を被り直す。
いつの間にか暖炉も消えてる。

薪取りにいかなくちゃ……
窓から外を眺める…………と、すごい猛吹雪だった。

「えーー‼︎‼︎昨日はあんなにいい天気だったのに」

時折吹く風で窓がガタガタと音を鳴らす。
室内も全体的に薄暗いし、寒いし、アッくんいないし……

だが、ここに来てからこの国はずっと寒いのでもうあたしも慣れたもんだ。 
クローゼットを漁ると手早く防寒を済ませる。


「ぐっ……」

いつもより重たいドアを開けた途端、凄い風と雪が一気に室内へと吹き込んだ。
慌てて外に出てからドアを閉めると、吹雪で視界の悪い中裏手にある薪置き場へと歩みを進める。

急いで薪を両手いっぱいに持つと壁伝いに今度は玄関を目指す。

雪で滑るから慎重に……。

しかし、両手が塞がってる状態で吹いた凄い強風に踏ん張りが効かず、吹き飛ばされて転んでしまった。


「痛っ……」


薪を拾おうとしたその時、ゴゴゴッという音共にすごい衝撃に襲われた。何が起きたか分からないうちに最後に見たのは真っ白に染まった世界。そこからの記憶は…………ない。







*+*+*+*+*+*+*+



「椿……帰ったぞ。」


昼になり、吹雪もだいぶ収まった頃、俺は急いで帰宅した。
昨日は聖女のお守りで一日護衛に付いており、王宮に戻ってからもなんだかんだ引き延ばされて離してもらえなかった。

昨日やるはずの仕事をしに詰所に戻れたのは暗くなってからだ。
そこから仕事をこなすうちに天気が怪しくなり、すぐに吹雪へと変化する。
さすがに帰るのは諦め騎士宿舎に泊まったため、椿は心配してるかもしれない。
仕事で騎士宿舎に泊まるときは事前に必ず連絡してるし、無断で外泊したのはこれが初めてだった。


疲れた。あの女の相手は本当に疲れる。
英雄に選ばれた者たちの顔ぶれを見るに俺なんか趣味じゃないだろうに……。
年末のパーティー以来聖女が会う度にしなだれかかってきて鬱陶しいことこの上ない。

元々王宮の警備はレオーンの隊の担当だ。
今までは聖女との関わりが少なくてすんでいたため我慢できたが、警備に配備されてからはストレスが限界突破しかけている。
唯一の癒しは嫁の椿だけだというのに、その妻の姿も見えない。

「…………いない。」

暖炉は消えているし、部屋は静まりかえっていて人の気配がない。
椿のクローゼットの中を急いで確認する。

ない……。

あいつのお気に入りのピンクのコートがない。
出かけてるのか?
いや、さっき吹雪が止んだばかりで外はかなり雪が積もっている。
椿が一人で出かけるとは思えない。

…………じゃあ、どこへ?

外へ出て辺りを見回すと近所の奴らがあちこちで雪掻きをしていた。
ピンクのコートは見当たらない。

庭の方にも出てみると、他の場所より遥かに雪が積もっていて違和感を覚える。

上を見ると明らかに屋根の雪が少ない。

ハッとした。

暖炉の薪はもうほとんど燃え尽きてなかった。
だとしたら……薪を取りに外に出たんじゃないのか。

嫌な予感に汗が流れる。

違う……絶対こんなところにはいない。
そう思いたいのに、本能ではここに違いないと確信している。

焦る気持ちを抑えつけあたりを慎重に見回す……。
真っ白な雪の中一箇所だけピンク色の何かが雪の中から出ているのが見えた。

あそこかっ……‼︎

夢中で雪を掻き分けるとピンクのコート、それに唇まで真っ青になった椿がいた。

「椿っ‼︎おいっ、目を開けろっ‼︎」

頬は生きてる人間とは思えないほど冷たくなっていたが、かろうじて息はまだある。


急いで家の中に戻り、部屋を暖める。
グレア婆さんの家まで走って行き、孫のアントニーに医者を連れてくるよう使いに走らせた。




「凍傷一歩手前ですな。偶然にも空気が確保できていたのはよかった。
雪に埋もれると窒息が一番恐ろしいですからな。」


アントニーが連れてきた医者は椿の体に異常がないか確認し、塗り薬を処方して帰った。
とりあえず命に別状がないことに安堵する。


「ランゲさん、大丈夫?」

暖炉の側に寄せたソファに横たわる椿を見ていたら、アントニーが心配そうに近づいてくる。
医者がいるときは診察のため部屋から出てもらっていた。

「あっ、あぁ、医者を呼んできてくれて助かった。後で駄賃を払う。」

「別にいいよ。椿さんにはいつもよくしてもらってるから。婆ちゃんの手伝いなんかもしに来てくれるし、俺にっておやつも持ってきてくれるし、いつも助かってるんだ。」


「…………そうか。」

椿が近所付き合いまでしてるのは知らなかった。
一緒に出掛けると、愛想がいいから商店街でもいろんな奴に声を掛けられる。
前までは怖がってた街の奴らも最近では俺一人でも声を掛けてくることがあるくらいだ。
椿のおかげでうんざりしていた日常もそう悪くないものだと思えるようになった。

未だ青白い顔をしている椿の頬をひと撫でする。


「早く元気になれ……。」
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