11 / 19
11
しおりを挟む
その夜、身体を清めて部屋に戻ろうとすると、ガウン姿のアーシュが部屋の前に立っていた。
「アーシュ? そんなところでどうしたのですか?」
壁にもたれたアーシュは、珍しく真面目な顔を向けた。
「今日改めて気づいたことだが、やはりおまえには素晴らしい資質がある。それを言いたくてな」
またエッチな話だろうか? と警戒しながら聞くとそうではなかった。
「おまえは、自分が思うよりもずっと強大な魔素を持っている。ただの使い魔では受け止めきれない質と量だ。私の中にはおまえからもらった魔素が蓄積され、解放の時を待っている。この私ですらもてあますほどにな」
「は、はい」
話の流れが見えず、ミチカは曖昧な返事をする。
魔素とは、そもそも魔族が魔力を使うためのエネルギーになるものだと聞いているが、人間の持つ魔素にそこまで差があるとは知らなかった。
「そんなに凄いのですか? わたくしの魔素は」
「こちらの世界を二つ三つ征服できるだけの力になるだろうな」
(せ、世界征服……)
あまりに話が大きすぎてピンとこなかったが、不穏な空気だけは感じた。アーシュの気怠げな瞳には、魔王と呼ばれるだけの凶暴さが潜んでいることに、今更ながら気付く。
「アーシュは、こちらの世界を征服したいのですか?」
「支配欲は魔王の本能だから、嫌ではないな。この濃厚なる魔素はそれ以外に使い道もなかろう。しかし、同時に私はおまえの使い魔でもあるから、主の意思に反することはできない。おまえが望むのならば、話は別だが……」
その気はあるか? と、軽く媚びを含んだ視線を向けられて、ミチカはあわてて首を振った。
「だめですっ! あの、わたくしはただ、チンポを克服できればそれでいいので、世界征服はいたしません」
するとアーシュはがっかりするどころか、にやりと不敵な笑みを閃かせた。
「そうか。欲のないことだな。まあよい。私はおまえに従う奴隷だからな。気が向いたら命令しろ。おまえに世界をくれてやる」
そう言って笑う。
毎日スケベなことしかしていないが、やはり、アーシュは一歩間違えば危険な男だ。
使い魔の皮を被った、魔王なのだ。
支配を望んでいる。
ミチカが世界を望むことを、望んでいる。
ぞくりと背筋が冷えた。
(アーシュはきっとチンポを提供するだけでは不満なのね。でも、わたくしにとって大事なことは世界征服よりもチンポ問題です。これだけは譲れません。命令しなければいいとは言うけれど、世界征服を望んでいると分かった以上、アーシュにこれ以上魔素を提供するわけには……)
アーシュとの契約を解除して、ここを出るしかない——。
まだ完全にペニスを克服してはいないが、あとはイメージトレーニングでなんとかなるはずだ。
これ以上彼と一緒にいてはいけない。
その思いが、ミチカを突き動かした。
「アーシュ? そんなところでどうしたのですか?」
壁にもたれたアーシュは、珍しく真面目な顔を向けた。
「今日改めて気づいたことだが、やはりおまえには素晴らしい資質がある。それを言いたくてな」
またエッチな話だろうか? と警戒しながら聞くとそうではなかった。
「おまえは、自分が思うよりもずっと強大な魔素を持っている。ただの使い魔では受け止めきれない質と量だ。私の中にはおまえからもらった魔素が蓄積され、解放の時を待っている。この私ですらもてあますほどにな」
「は、はい」
話の流れが見えず、ミチカは曖昧な返事をする。
魔素とは、そもそも魔族が魔力を使うためのエネルギーになるものだと聞いているが、人間の持つ魔素にそこまで差があるとは知らなかった。
「そんなに凄いのですか? わたくしの魔素は」
「こちらの世界を二つ三つ征服できるだけの力になるだろうな」
(せ、世界征服……)
あまりに話が大きすぎてピンとこなかったが、不穏な空気だけは感じた。アーシュの気怠げな瞳には、魔王と呼ばれるだけの凶暴さが潜んでいることに、今更ながら気付く。
「アーシュは、こちらの世界を征服したいのですか?」
「支配欲は魔王の本能だから、嫌ではないな。この濃厚なる魔素はそれ以外に使い道もなかろう。しかし、同時に私はおまえの使い魔でもあるから、主の意思に反することはできない。おまえが望むのならば、話は別だが……」
その気はあるか? と、軽く媚びを含んだ視線を向けられて、ミチカはあわてて首を振った。
「だめですっ! あの、わたくしはただ、チンポを克服できればそれでいいので、世界征服はいたしません」
するとアーシュはがっかりするどころか、にやりと不敵な笑みを閃かせた。
「そうか。欲のないことだな。まあよい。私はおまえに従う奴隷だからな。気が向いたら命令しろ。おまえに世界をくれてやる」
そう言って笑う。
毎日スケベなことしかしていないが、やはり、アーシュは一歩間違えば危険な男だ。
使い魔の皮を被った、魔王なのだ。
支配を望んでいる。
ミチカが世界を望むことを、望んでいる。
ぞくりと背筋が冷えた。
(アーシュはきっとチンポを提供するだけでは不満なのね。でも、わたくしにとって大事なことは世界征服よりもチンポ問題です。これだけは譲れません。命令しなければいいとは言うけれど、世界征服を望んでいると分かった以上、アーシュにこれ以上魔素を提供するわけには……)
アーシュとの契約を解除して、ここを出るしかない——。
まだ完全にペニスを克服してはいないが、あとはイメージトレーニングでなんとかなるはずだ。
これ以上彼と一緒にいてはいけない。
その思いが、ミチカを突き動かした。
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる