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第1章 卒業後の進路
トレジャーハンターになるから
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その日の夜、カルドーゾ家の居間では、仕事を終えたマッハとアンドレが晩酌を楽しんでいた。
「ぷはあぁ~~!」
マッハはジョッキに入ったビールを豪快に飲み干した。
その飲みっぷりからもわかるように、男勝りの性格で、食材となる肉を自分で獲ってくる猛者でもある。
また、その美しい容姿と、不用意に喧嘩を売って来た奴をボコボコにするさま、そして豪快に肉を切り捌く姿から、“バラ姫”の異名を持っていた。
「はぁ~」
マッハの隣でハチミツ酒を飲んでいる眼鏡をかけた気弱そうな男性が、アンドレだ。
おとなしくて几帳面という、嫁とは正反対の性格をしており、怒ることも滅多になかった。
「母ちゃん父ちゃん、俺、卒業したらトレジャーハンターになるから」
居間へやって来たタフィは、なんの前置きもなく、軽い感じで自身の進路を告げた。
その瞬間、部屋の空気が変わる。
「トレジャーハンターねぇ……。なりたい理由はなんだい?」
鋭い眼光でタフィのことを見るマッハ。アルコールが入っているせいか、沸点が普段より低くなっている。
「理由? 大金が稼げそうだから」
「それ、真剣に言ってるのかい?」
「そうだよ」
「バカヤロー!」
言い方か、それとも理由か、いずれにせよ、タフィの言葉に真剣さを感じられなかったマッハは、瞬時に間合いを詰めるや、感情の赴くままにタフィの左頬に強烈なビンタをぶちかました。
「グェッ」
タフィはその場に倒れ込んだ。
「てめぇ、そんないい加減な気持ちで将来のこと決めんな! 殴るぞ」
「もう殴ってるじゃねぇか……」
タフィは涙目になりながら、左頬をさすっている。
「バカ野郎、これはビンタだ。殴るっていうのは、こうやってグーでやるんだよ」
マッハは拳を作ると、殴るそぶりを見せた。
「まあまあまあ、抑えて抑えて。タフィの話も聞いてあげないと。まるっきり思いつきだってことはないだろうからさ……ね」
アンドレは穏やかな声でマッハをなだめつつ、タフィに話をするよう促した。
「……ちゃんと学園長にも相談したし、反対もされなかったよ」
「それ、本当だろうね?」
マッハは、部屋の隅で様子を伺っていたボイヤーに確認した。
「本当です」
ボイヤーは力強くうなずいた。
「そうかい、先生がね……」
マッハとアンドレは学園の卒業生であり、コーツの薫陶を受けた教え子でもあった。
「反対しなかったってことは、見込みがあるってことか……」
マッハは椅子に座り直すと、しばし考え込み、そしておもむろに口を開いた。
「……わかった。じゃあ、条件を出そう。あたしが今から言う物を持ってこられたら、トレジャーハンターになることを許してやるよ」
「何を持ってくりゃいいんだ?」
「昔ちょろっとお前に話したことがあると思うけど、ジェイコブセンが作った『至高の肉切り包丁』、こいつを持ってくるんだ」
マレッド・ジェイコブセンは高名な刃物職人で、極上の切れ味と耐久性はもちろんのこと、見た目の美しさから、彼の作品を宝飾品と同列に扱っているコレクターも存在した。
「あぁ、あのお宝包丁か」
「そう。あのお宝包丁をあたしのとこに持ってきな。もし持ってこれなかったら、諦めて店を継ぐんだね」
そう言われたタフィは、自信を示すように威勢よく啖呵を切る。
「よぉしわかった。すぐにその包丁を持ってきてやるから、首洗って待ってろよババア」
「誰がババアだバカ野郎!」
再びマッハの強烈なビンタが炸裂した。
「ぷはあぁ~~!」
マッハはジョッキに入ったビールを豪快に飲み干した。
その飲みっぷりからもわかるように、男勝りの性格で、食材となる肉を自分で獲ってくる猛者でもある。
また、その美しい容姿と、不用意に喧嘩を売って来た奴をボコボコにするさま、そして豪快に肉を切り捌く姿から、“バラ姫”の異名を持っていた。
「はぁ~」
マッハの隣でハチミツ酒を飲んでいる眼鏡をかけた気弱そうな男性が、アンドレだ。
おとなしくて几帳面という、嫁とは正反対の性格をしており、怒ることも滅多になかった。
「母ちゃん父ちゃん、俺、卒業したらトレジャーハンターになるから」
居間へやって来たタフィは、なんの前置きもなく、軽い感じで自身の進路を告げた。
その瞬間、部屋の空気が変わる。
「トレジャーハンターねぇ……。なりたい理由はなんだい?」
鋭い眼光でタフィのことを見るマッハ。アルコールが入っているせいか、沸点が普段より低くなっている。
「理由? 大金が稼げそうだから」
「それ、真剣に言ってるのかい?」
「そうだよ」
「バカヤロー!」
言い方か、それとも理由か、いずれにせよ、タフィの言葉に真剣さを感じられなかったマッハは、瞬時に間合いを詰めるや、感情の赴くままにタフィの左頬に強烈なビンタをぶちかました。
「グェッ」
タフィはその場に倒れ込んだ。
「てめぇ、そんないい加減な気持ちで将来のこと決めんな! 殴るぞ」
「もう殴ってるじゃねぇか……」
タフィは涙目になりながら、左頬をさすっている。
「バカ野郎、これはビンタだ。殴るっていうのは、こうやってグーでやるんだよ」
マッハは拳を作ると、殴るそぶりを見せた。
「まあまあまあ、抑えて抑えて。タフィの話も聞いてあげないと。まるっきり思いつきだってことはないだろうからさ……ね」
アンドレは穏やかな声でマッハをなだめつつ、タフィに話をするよう促した。
「……ちゃんと学園長にも相談したし、反対もされなかったよ」
「それ、本当だろうね?」
マッハは、部屋の隅で様子を伺っていたボイヤーに確認した。
「本当です」
ボイヤーは力強くうなずいた。
「そうかい、先生がね……」
マッハとアンドレは学園の卒業生であり、コーツの薫陶を受けた教え子でもあった。
「反対しなかったってことは、見込みがあるってことか……」
マッハは椅子に座り直すと、しばし考え込み、そしておもむろに口を開いた。
「……わかった。じゃあ、条件を出そう。あたしが今から言う物を持ってこられたら、トレジャーハンターになることを許してやるよ」
「何を持ってくりゃいいんだ?」
「昔ちょろっとお前に話したことがあると思うけど、ジェイコブセンが作った『至高の肉切り包丁』、こいつを持ってくるんだ」
マレッド・ジェイコブセンは高名な刃物職人で、極上の切れ味と耐久性はもちろんのこと、見た目の美しさから、彼の作品を宝飾品と同列に扱っているコレクターも存在した。
「あぁ、あのお宝包丁か」
「そう。あのお宝包丁をあたしのとこに持ってきな。もし持ってこれなかったら、諦めて店を継ぐんだね」
そう言われたタフィは、自信を示すように威勢よく啖呵を切る。
「よぉしわかった。すぐにその包丁を持ってきてやるから、首洗って待ってろよババア」
「誰がババアだバカ野郎!」
再びマッハの強烈なビンタが炸裂した。
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