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第1章 卒業後の進路
野球を仕事にしたいのだけど……
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学園に着いた2人は、学園長の所在を確認し、石造りの校舎の2階にある学園長室へと向かう。
ボイヤーが部屋のドアをノックすると、中から野太い声が聞こえてきた。
「おう、入れ」
「失礼します」
「どうも」
椅子にデーンと腰かけて2人を待ち構えていたのが、学園長であるコーツ・ゴッチ。金髪角刈りに筋骨隆々の肉体と、御年70歳になる人物とは思えない見た目をしていた。
「タフィ、試合はどうだった? 勝ったか?」
「俺らの雰囲気でわかるでしょ」
コーツは2人のことをまじまじと見た。
「そうか、負けたか」
なんの気遣いもない言い方に、タフィはムッとした。
「そうだよ。で、それを聞くためにわざわざ俺らを呼んだわけ?」
「そう怒るな。結果を聞きたいとは思ったが、それだけのためにわざわざ呼んだりはせんよ。お前ら、卒業後のことは決めたのか?」
タフィは入学から6年目の16歳、同じくボイヤーも入学から6年目の11歳と、2人とも卒業の時を迎えていた。
ちなみに、この学園には決まった修学年数はなく、学園長が実力を認めればその時点で卒業となる。平均的な在籍年数は5~6年で、中には半年で卒業した生徒もいた。
また、入学にあたって種族や年齢などの制限もなく、学園長が認めれば誰でも入学可能だ。
「やっぱりそれか。前にも話したけどさ、野球で食っていくことって無理なの?」
タフィにとって、一番自信があるものは野球であり、それで生活していくことが理想であった。
「無理だな。野球じゃ金は稼げん。あれは所詮遊びだ」
コーツは笑いながら首を横に振った。
この国における野球の歴史。その起源は定かではないが、100年ほど前には木の棒で球を打つ遊びがあったとされる。
その後、野球は様々に進化を遂げていったが、ある所ではベースが4つあったり、別の所ではランナーに直接球を当ててアウトにしたりするなど、ルールはバラバラだった。
転機が訪れたのは40年ほど前、ベルツハーフェンにゲッカロッカーズという野球チームができた時だ。
チームの創設者であったランディ・カークランドは、試合を円滑に進めるために、バラバラだったルールの統一や見直しに動き、本格的な野球規則の作成に奔走した。
規則が定まったことによって、野球文化は一気に広がり、各地に野球チームが誕生するなど、娯楽としての地位を確立した。
ただあくまでも娯楽であって、野球を仕事にしようとする考え方もなければ、それで金を稼げるような環境もなかった。
「……だったら、トレジャーハンターになる。あれなら大金が稼げそうだし、バットも武器とかで使えそうだからさ」
どこか投げやりな感じの答えではあったが、意外にもコーツは怒ることなく受け入れた。
「トレジャーハンターか……おもしろい選択だな。ということは、お前さん店は継がないんだな」
タフィの家は串焼き屋を営んでおり、父親のアンドレ、母親のマッハ、妹のマーヤ、そして弟分のボイヤーという家族構成になっている。
「だって、串焼き屋って大金稼げそうにないもん。マーヤが継げばいいんだよ」
「まぁ、その辺は家族で話し合ってくれ。次はボイヤーだが……どうせ、タフィに付いていくんだろ」
「はい。兄やんがトレジャーハンターになるって言うなら、僕もなります」
ボイヤーは一切の迷いなく返答した。
「まったく、呆れるくらいに従順だな」
タフィが5歳の時、森の中で怪我をしていた幼いボイヤーを助けたのが、2人の出会いである。
それからおよそ11年、ボイヤーはタフィを兄として慕い、タフィのことを第一に考えて生活してきた。
コーツもそのことは十分に理解しているので、苦笑はしたが、再考を促したりはしなかった。
「わかった。聞きたいことはそれだけだ。もう、帰っていいぞ」
「そんじゃ、帰ります」
「失礼します」
2人は学園長室を出て、家路についた。
ボイヤーが部屋のドアをノックすると、中から野太い声が聞こえてきた。
「おう、入れ」
「失礼します」
「どうも」
椅子にデーンと腰かけて2人を待ち構えていたのが、学園長であるコーツ・ゴッチ。金髪角刈りに筋骨隆々の肉体と、御年70歳になる人物とは思えない見た目をしていた。
「タフィ、試合はどうだった? 勝ったか?」
「俺らの雰囲気でわかるでしょ」
コーツは2人のことをまじまじと見た。
「そうか、負けたか」
なんの気遣いもない言い方に、タフィはムッとした。
「そうだよ。で、それを聞くためにわざわざ俺らを呼んだわけ?」
「そう怒るな。結果を聞きたいとは思ったが、それだけのためにわざわざ呼んだりはせんよ。お前ら、卒業後のことは決めたのか?」
タフィは入学から6年目の16歳、同じくボイヤーも入学から6年目の11歳と、2人とも卒業の時を迎えていた。
ちなみに、この学園には決まった修学年数はなく、学園長が実力を認めればその時点で卒業となる。平均的な在籍年数は5~6年で、中には半年で卒業した生徒もいた。
また、入学にあたって種族や年齢などの制限もなく、学園長が認めれば誰でも入学可能だ。
「やっぱりそれか。前にも話したけどさ、野球で食っていくことって無理なの?」
タフィにとって、一番自信があるものは野球であり、それで生活していくことが理想であった。
「無理だな。野球じゃ金は稼げん。あれは所詮遊びだ」
コーツは笑いながら首を横に振った。
この国における野球の歴史。その起源は定かではないが、100年ほど前には木の棒で球を打つ遊びがあったとされる。
その後、野球は様々に進化を遂げていったが、ある所ではベースが4つあったり、別の所ではランナーに直接球を当ててアウトにしたりするなど、ルールはバラバラだった。
転機が訪れたのは40年ほど前、ベルツハーフェンにゲッカロッカーズという野球チームができた時だ。
チームの創設者であったランディ・カークランドは、試合を円滑に進めるために、バラバラだったルールの統一や見直しに動き、本格的な野球規則の作成に奔走した。
規則が定まったことによって、野球文化は一気に広がり、各地に野球チームが誕生するなど、娯楽としての地位を確立した。
ただあくまでも娯楽であって、野球を仕事にしようとする考え方もなければ、それで金を稼げるような環境もなかった。
「……だったら、トレジャーハンターになる。あれなら大金が稼げそうだし、バットも武器とかで使えそうだからさ」
どこか投げやりな感じの答えではあったが、意外にもコーツは怒ることなく受け入れた。
「トレジャーハンターか……おもしろい選択だな。ということは、お前さん店は継がないんだな」
タフィの家は串焼き屋を営んでおり、父親のアンドレ、母親のマッハ、妹のマーヤ、そして弟分のボイヤーという家族構成になっている。
「だって、串焼き屋って大金稼げそうにないもん。マーヤが継げばいいんだよ」
「まぁ、その辺は家族で話し合ってくれ。次はボイヤーだが……どうせ、タフィに付いていくんだろ」
「はい。兄やんがトレジャーハンターになるって言うなら、僕もなります」
ボイヤーは一切の迷いなく返答した。
「まったく、呆れるくらいに従順だな」
タフィが5歳の時、森の中で怪我をしていた幼いボイヤーを助けたのが、2人の出会いである。
それからおよそ11年、ボイヤーはタフィを兄として慕い、タフィのことを第一に考えて生活してきた。
コーツもそのことは十分に理解しているので、苦笑はしたが、再考を促したりはしなかった。
「わかった。聞きたいことはそれだけだ。もう、帰っていいぞ」
「そんじゃ、帰ります」
「失礼します」
2人は学園長室を出て、家路についた。
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