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第1章 卒業後の進路
草野球大会決勝戦
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ヴァレッツウェーデン王国。
この島国の南側に位置する港湾都市ベルツハーフェン。
そこにある野球場で、草野球大会の決勝が行われていた。
3対2と、1点ビハインドで迎えた9回裏ツーアウトランナーなし。3番バッターのボイヤーが、ゆっくりとバッターボックスへ向かう。
ボイヤーはここまでの3試合で5本、この試合でも1本と、計6本のホームランを放っていた。
客席や味方ベンチからは、当然のように同点ホームランを望む声があがる。
「よぉし、打ってやるぞぉ」
ボイヤーはその期待に応えるべく、いつも以上に気合を入れて左打席に入ったが、結局一度もバットを振ることなく、ストレートのフォアボールで歩かされた。
「兄やん、後はお願いします」
ボイヤーはネクストバッターズサークルで素振りをしていたタフィに期待を託すと、ファーストベースへと歩き出した。
「おう、任しとけ」
ユニフォームに身を包んだタフィは右打席に入ると、ピッチャーに正対するように思い切り体を開き、バットは肩に乗せるようにコンパクトに構えて、相手の投球を待った。
タフィはボイヤーに引けを取らないパワーと、どんなボールでもヒットにする卓越したバットコントロールの持ち主で、既にこの試合でもホームランを含む2本のヒットを放っている。
「来い」
初球、インコースギリギリへの剛速球。打ち返した打球は三塁線を襲う痛烈な当たりであったが、おしくも左へ逸れてファウル。
「ちょっとタイミングが早かったか」
2球目、初球と同じくキャッチャーはインコースギリギリにミットを構える。投げられた球は体に食い込んでくるような鋭いシュート。見送ればボールであろうという厳しい球であったが、タフィはためらうことなく打ち返した。
「入れぇ!」
打球はレフトスタンドへ向けて弾丸ライナーで飛んでいく。だが、わずかに左へ切れてファウル。
「くっそ、あと少しだったのに」
これでツーストライクと追い込まれたが、いずれもおしい当たりであり、内容的には期待できる。
実際それを示すように、客席からはサヨナラホームランを期待する声が一段と大きくなっていた。
だがその一方で、味方ベンチには諦めムードが漂っていた。
「こりゃダメだな」
「ああ。今ので決められなきゃな」
ファーストベース上のボイヤーも、わずかに表情を曇らせた。
そして3球目、キャッチャーはアウトコース低めにミットを構える。投げられたのは外へ逃げていくスライダー。投げた瞬間にボールだとわかる球であったが、タフィは迷うことなく打ちにいった。
「どりゃああああ!」
気合は完全にホームランだったが、バットはむなしく空を切った。
「ストラィク、バッターアウト! ゲームセット」
審判の声とともに試合は終わった。
「くそぉ! 当たらんかった」
悔しさを露わにするタフィ。その様子を見て、ボイヤーは小さくため息を吐いた。
「兄やん、やっぱり我慢できなかったか……」
タフィはどんな球でもヒットにする自信があるゆえ、ボール球でも見境なく手を出す癖があり、特に追い込まれるとそれが顕著に出た。
試合後、他のチームメイトとともに閉会式へ出たタフィとボイヤーは、帰り際監督に呼び止められた。
「お前ら、学園長が呼んでいるらしいから、このまま学園によっていってくれな」
タフィとボイヤーは、ともにゴッチ・エルシア学園という学校に通う学生である。
「めんどくせぇなぁ」
「わかりました」
しぶしぶうなずくタフィに対し、ボイヤーは素直にうなずいた。
2人は球場を後にすると、その足で学園へと向かった。
「なんの用でしょうね?」
「たぶんアレだろうよ」
どうやら、タフィには何か心当たりがあるようだ。
この島国の南側に位置する港湾都市ベルツハーフェン。
そこにある野球場で、草野球大会の決勝が行われていた。
3対2と、1点ビハインドで迎えた9回裏ツーアウトランナーなし。3番バッターのボイヤーが、ゆっくりとバッターボックスへ向かう。
ボイヤーはここまでの3試合で5本、この試合でも1本と、計6本のホームランを放っていた。
客席や味方ベンチからは、当然のように同点ホームランを望む声があがる。
「よぉし、打ってやるぞぉ」
ボイヤーはその期待に応えるべく、いつも以上に気合を入れて左打席に入ったが、結局一度もバットを振ることなく、ストレートのフォアボールで歩かされた。
「兄やん、後はお願いします」
ボイヤーはネクストバッターズサークルで素振りをしていたタフィに期待を託すと、ファーストベースへと歩き出した。
「おう、任しとけ」
ユニフォームに身を包んだタフィは右打席に入ると、ピッチャーに正対するように思い切り体を開き、バットは肩に乗せるようにコンパクトに構えて、相手の投球を待った。
タフィはボイヤーに引けを取らないパワーと、どんなボールでもヒットにする卓越したバットコントロールの持ち主で、既にこの試合でもホームランを含む2本のヒットを放っている。
「来い」
初球、インコースギリギリへの剛速球。打ち返した打球は三塁線を襲う痛烈な当たりであったが、おしくも左へ逸れてファウル。
「ちょっとタイミングが早かったか」
2球目、初球と同じくキャッチャーはインコースギリギリにミットを構える。投げられた球は体に食い込んでくるような鋭いシュート。見送ればボールであろうという厳しい球であったが、タフィはためらうことなく打ち返した。
「入れぇ!」
打球はレフトスタンドへ向けて弾丸ライナーで飛んでいく。だが、わずかに左へ切れてファウル。
「くっそ、あと少しだったのに」
これでツーストライクと追い込まれたが、いずれもおしい当たりであり、内容的には期待できる。
実際それを示すように、客席からはサヨナラホームランを期待する声が一段と大きくなっていた。
だがその一方で、味方ベンチには諦めムードが漂っていた。
「こりゃダメだな」
「ああ。今ので決められなきゃな」
ファーストベース上のボイヤーも、わずかに表情を曇らせた。
そして3球目、キャッチャーはアウトコース低めにミットを構える。投げられたのは外へ逃げていくスライダー。投げた瞬間にボールだとわかる球であったが、タフィは迷うことなく打ちにいった。
「どりゃああああ!」
気合は完全にホームランだったが、バットはむなしく空を切った。
「ストラィク、バッターアウト! ゲームセット」
審判の声とともに試合は終わった。
「くそぉ! 当たらんかった」
悔しさを露わにするタフィ。その様子を見て、ボイヤーは小さくため息を吐いた。
「兄やん、やっぱり我慢できなかったか……」
タフィはどんな球でもヒットにする自信があるゆえ、ボール球でも見境なく手を出す癖があり、特に追い込まれるとそれが顕著に出た。
試合後、他のチームメイトとともに閉会式へ出たタフィとボイヤーは、帰り際監督に呼び止められた。
「お前ら、学園長が呼んでいるらしいから、このまま学園によっていってくれな」
タフィとボイヤーは、ともにゴッチ・エルシア学園という学校に通う学生である。
「めんどくせぇなぁ」
「わかりました」
しぶしぶうなずくタフィに対し、ボイヤーは素直にうなずいた。
2人は球場を後にすると、その足で学園へと向かった。
「なんの用でしょうね?」
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