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第1章 卒業後の進路
黒バットの威力
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タフィ、ボイヤー、カリンの3人は、包丁職人の話を聞くために、森の中に住んでいるタフィの祖父のところへ向かっていた。
「なぁんかちょうど良さそうな獲物が出てこないかな。指南役としては、早くあんたたちの実力が知りたいんだけど」
「ワザと呼んだりしないでくださいよ」
なんとなく嫌な予感がしたのか、ボイヤーはすかさずカリンに釘を刺した。
「何言ってるのボイヤー。うちがそんなことするわけないでしょ。……ただ、あのバットが武器としてどのくらい通用するのか、すごく興味があるわね」
「あ、それは僕もあります」
「おじいちゃんに聞いたけど、特にバットから魔法攻撃が放たれるとか、持っているだけで調子が良くなったりするような特殊能力はないみたい。ただただ頑丈で、反発力が高いバットだって。まぁ、バットとして作ったんだから、当たり前っちゃあ当たり前なんだけど」
「カリン姉さんは、バットを武器にしてる人を見たことはあるんですか?」
「それメインってのは見たことないなぁ。丸太使いの人が、サブ的なものとして使ったことがあるっていう話は聞いたことがあるけど、やっぱり丸太より威力は低いみたい」
「そうなんですね。……あれ? 兄やん何してるんだろう?」
タフィは2人の前を歩いていたのだが、急に落ちていた枝を使って木の根元付近を掘り始めたのだ。
「何してんのタフィ?」
「ん、いや、ここをトリダマシが掘ってからさ。ツチウズラの卵があるんじゃないかなぁっと思ってよ」
トリダマシはイタチの仲間で、大きさは30センチほど。雑食であり、特に鳥の卵を好んで食す。その際、ほとんど卵の殻を傷つけずに中身だけを器用に吸い取って、あたかも卵には何事もなかったかのようにして去っていくことから、トリダマシの名前で呼ばれている。
ツチウズラは、その名のとおり土の中に住んでいて、大きさは20センチほど。見た目はモグラにそっくりだが、れっきとした鳥類だ。土を掘りやすいようにくちばしは鋭く尖り、翼はスコップのような形をしている。またその卵は非常に美味で、栄養価も高い。
「そういうこと。じゃあ、これ使いな」
カリンは腰に差していた短剣をタフィに手渡した。
「ありがと」
タフィは短剣を使ってザクザクと土を掘っていく。
そして、20センチほど掘ったところで手を止めた。
「見っけ」
タフィが睨んだとおり、そこはツチウズラの巣で、お目当ての卵も5つ鎮座していた。
「うちにもちょうだいね」
2人の関心が卵に向くなか、ボイヤーは敏感に何かが接近してくることを感じ取った。
「2人とも、何かが近づいてきます」
「さっすがドラゴンね」
カリンは感心しつつ、槍を手に持つと周囲を見回した。
「あっちから来ます」
ボイヤーがそう口にした数秒後、木々の間から猛獣が姿を現した。
「クビワヒョウか」
カリンが名前を言ったクビワヒョウは、ジャンプ力が特徴のヒョウで、首の部分の白い毛が首輪のように見えることからその名で呼ばれている。
「タフィ、あんたちょっとあいつと戦ってみな」
「俺が?」
いきなりの指名にタフィの顔が若干曇る。
「大丈夫。もしもの時はうちがこの槍でなんとかするから、ね」
最後の“ね”には、「いいからやれ」という意味が込められていた。
「……わかったよ」
「じゃボイヤー、うちらは邪魔にならないよう下がってよう」
「はい」
カリンとボイヤーが動くと同時に、クビワヒョウもその場から駆け出した。
「来たっ」
タフィは少し恐怖心を抱きながらバットを持つと、野球の試合と同じく、極端なオープンスタンスでクビワヒョウを待ち構えた。
「グルゥウワァ」
あっという間に間合いを詰めるや、クビワヒョウは低いうなり声をあげながらタフィに跳びかかった。
「うおりゃぁあああっ!」
タフィはやけくそまじりにフルスイング。バットと衝突したクビワヒョウは、そのままものすごい勢いで打ち返され、近くの木の幹に叩きつけられた。
「やったか?」
タフィはクビワヒョウのところへ駆け寄って生死を確認すると、満足げな笑みを浮かべながら拳を上げた。
「やったぜ!」
それを見て、カリンとボイヤーもクビワヒョウのところへやって来た。
「まさか一発で仕留めるとはね。ちょっとバット見してみ」
「ほい」
カリンは手渡されたバットをまじまじと見ながら、ヒビの有無などをチェックした。
「結構な衝撃があったはずだけど、傷ひとつないなんて、本当に頑丈なバットだね。……それにしても、あんた野球で戦うつもりなの?」
カリンはハンマーや丸太のように、振り回したり叩いたりするような戦い方を想像していたが、タフィのそれは野球のバッティングそのものだった。
「当たり前じゃん。だって、バットはこの使い方が一番威力が出るんだよ。それに、近づいてくるものを打ち返すのは、俺大得意だから」
「うーん……」
一応タフィの言っていることは筋が通っていたのだが、普通はバットの強度や攻撃力の問題などから、そういう戦い方をやろうとはしない。
だが現実として、タフィは一撃でクビワヒョウを仕留めているし、バットの状態も問題なし。
指南役という立場から、カリンはこの未知なる戦い方を安易に容認していいものかどうか迷ったが、結局目の前で見たことに勝るものはなかった。
「……まぁ、いいっか。じゃ、卵採って行こう」
「なぁんかちょうど良さそうな獲物が出てこないかな。指南役としては、早くあんたたちの実力が知りたいんだけど」
「ワザと呼んだりしないでくださいよ」
なんとなく嫌な予感がしたのか、ボイヤーはすかさずカリンに釘を刺した。
「何言ってるのボイヤー。うちがそんなことするわけないでしょ。……ただ、あのバットが武器としてどのくらい通用するのか、すごく興味があるわね」
「あ、それは僕もあります」
「おじいちゃんに聞いたけど、特にバットから魔法攻撃が放たれるとか、持っているだけで調子が良くなったりするような特殊能力はないみたい。ただただ頑丈で、反発力が高いバットだって。まぁ、バットとして作ったんだから、当たり前っちゃあ当たり前なんだけど」
「カリン姉さんは、バットを武器にしてる人を見たことはあるんですか?」
「それメインってのは見たことないなぁ。丸太使いの人が、サブ的なものとして使ったことがあるっていう話は聞いたことがあるけど、やっぱり丸太より威力は低いみたい」
「そうなんですね。……あれ? 兄やん何してるんだろう?」
タフィは2人の前を歩いていたのだが、急に落ちていた枝を使って木の根元付近を掘り始めたのだ。
「何してんのタフィ?」
「ん、いや、ここをトリダマシが掘ってからさ。ツチウズラの卵があるんじゃないかなぁっと思ってよ」
トリダマシはイタチの仲間で、大きさは30センチほど。雑食であり、特に鳥の卵を好んで食す。その際、ほとんど卵の殻を傷つけずに中身だけを器用に吸い取って、あたかも卵には何事もなかったかのようにして去っていくことから、トリダマシの名前で呼ばれている。
ツチウズラは、その名のとおり土の中に住んでいて、大きさは20センチほど。見た目はモグラにそっくりだが、れっきとした鳥類だ。土を掘りやすいようにくちばしは鋭く尖り、翼はスコップのような形をしている。またその卵は非常に美味で、栄養価も高い。
「そういうこと。じゃあ、これ使いな」
カリンは腰に差していた短剣をタフィに手渡した。
「ありがと」
タフィは短剣を使ってザクザクと土を掘っていく。
そして、20センチほど掘ったところで手を止めた。
「見っけ」
タフィが睨んだとおり、そこはツチウズラの巣で、お目当ての卵も5つ鎮座していた。
「うちにもちょうだいね」
2人の関心が卵に向くなか、ボイヤーは敏感に何かが接近してくることを感じ取った。
「2人とも、何かが近づいてきます」
「さっすがドラゴンね」
カリンは感心しつつ、槍を手に持つと周囲を見回した。
「あっちから来ます」
ボイヤーがそう口にした数秒後、木々の間から猛獣が姿を現した。
「クビワヒョウか」
カリンが名前を言ったクビワヒョウは、ジャンプ力が特徴のヒョウで、首の部分の白い毛が首輪のように見えることからその名で呼ばれている。
「タフィ、あんたちょっとあいつと戦ってみな」
「俺が?」
いきなりの指名にタフィの顔が若干曇る。
「大丈夫。もしもの時はうちがこの槍でなんとかするから、ね」
最後の“ね”には、「いいからやれ」という意味が込められていた。
「……わかったよ」
「じゃボイヤー、うちらは邪魔にならないよう下がってよう」
「はい」
カリンとボイヤーが動くと同時に、クビワヒョウもその場から駆け出した。
「来たっ」
タフィは少し恐怖心を抱きながらバットを持つと、野球の試合と同じく、極端なオープンスタンスでクビワヒョウを待ち構えた。
「グルゥウワァ」
あっという間に間合いを詰めるや、クビワヒョウは低いうなり声をあげながらタフィに跳びかかった。
「うおりゃぁあああっ!」
タフィはやけくそまじりにフルスイング。バットと衝突したクビワヒョウは、そのままものすごい勢いで打ち返され、近くの木の幹に叩きつけられた。
「やったか?」
タフィはクビワヒョウのところへ駆け寄って生死を確認すると、満足げな笑みを浮かべながら拳を上げた。
「やったぜ!」
それを見て、カリンとボイヤーもクビワヒョウのところへやって来た。
「まさか一発で仕留めるとはね。ちょっとバット見してみ」
「ほい」
カリンは手渡されたバットをまじまじと見ながら、ヒビの有無などをチェックした。
「結構な衝撃があったはずだけど、傷ひとつないなんて、本当に頑丈なバットだね。……それにしても、あんた野球で戦うつもりなの?」
カリンはハンマーや丸太のように、振り回したり叩いたりするような戦い方を想像していたが、タフィのそれは野球のバッティングそのものだった。
「当たり前じゃん。だって、バットはこの使い方が一番威力が出るんだよ。それに、近づいてくるものを打ち返すのは、俺大得意だから」
「うーん……」
一応タフィの言っていることは筋が通っていたのだが、普通はバットの強度や攻撃力の問題などから、そういう戦い方をやろうとはしない。
だが現実として、タフィは一撃でクビワヒョウを仕留めているし、バットの状態も問題なし。
指南役という立場から、カリンはこの未知なる戦い方を安易に容認していいものかどうか迷ったが、結局目の前で見たことに勝るものはなかった。
「……まぁ、いいっか。じゃ、卵採って行こう」
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