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第2章 卒業試験
ラッシャーの依頼
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ラッシャーのアトリエはギルドから歩いて10分ほどの所にあった。
建物は青緑色をした銅板葺きの屋根が特徴的な木造平屋建てで、庭はきれいに芝生が張られている。
「こんにちは。絵のモデルで来ました」
カリンは猫の顔をかたどったドアノッカーをドンドンドンッと叩いた。
「……今開ける」
中から出てきたのはいかつい顔をした大男。しわの感じから、年齢は60代後半から70代前半くらいだということが想像できる。
「どうも」
「……後ろにいる2人もそうか?」
「そうです」
「まぁ、入れ」
男は不愛想に応対すると、3人を家の中へ招き入れた。
「おじゃましまーす」
家の中は全く飾り気がなく、家財道具はテーブルや椅子といった必要最低限度の物しか置かれていない。
一方で絵の具や筆といった画材の類はとても充実しており、描きかけを含めて絵が描かれたキャンバスが部屋の至る所に置かれていた。
「へぇ、おもしろい絵だな」
タフィは、切り株に座ってギターを弾いている猫の絵を見つけ、それをじっと眺めていた。
「タフィ、絵は後にしてこっち来て座りな」
「ほーい」
タフィはテーブルを囲うようにして置かれた丸椅子に腰を下ろした。
「さて、まずは自己紹介をしておこう。俺が依頼を出したアグレ・ラッシャーだ」
「うちはカリン・ゴッチです」
「ボイヤーです」
「タフィ・カルドーゾです」
3人が自己紹介を終えたところで、アグレはカリンのことをまじまじと見た。
「ゴッチ……お前さん、コーツ・ゴッチって男は知ってるかい?」
「知ってますよ。だってうちのおじいちゃんですから」
「そうか、なんか雰囲気が似てるなぁと思ったら、やっぱりコーツの孫だったか。俺とあいつは昔馴染みなんだよ。あいつは元気にしてるのか?」
不愛想な感じが一気に和らいだ。
「はい、元気ですよ」
(雰囲気が似てるって、うちってそんなにゴツい感じ出してるの?)
表には出さなかったが、カリンは心の中で渋い顔をしていた。
「そうかそうか。じゃ、本題に入ろう。一応聞いておくが、お前ら野球やったことはあんだろ?」
「もちろんですよ。この間も助っ人として草野球の試合に出てますからね」
「ほぉ~。じゃあ、ポジションはどこなんだ?」
「うちはピッチャーです」
「僕はサード守ってます」
「俺はショート」
「わかった。なら早速動きを見させてもらう。グラブとかはそこに置いてあるから、持って来てなかったら使ってくれ」
アグレは野球道具が乱雑に置かれた場所を指差すと、庭へ出た。
「俺なんとなく素振りくらいかなと思ってたんだけど、外出たってことはもっと大きな動きをさせんのかな?」
タフィが言うように、素振りやシャドーピッチングくらいなら室内でも十分できる。
「その可能性はあるんじゃないの。依頼票には“野球をしている猫”としか書かれてないから、“スクイズを外された猫”とか、“フライをダイビングキャッチする猫”みたいな動きをするかもしれないよ」
カリンはしゃべりながら、タフィにグローブを手渡した。
「こりゃ、思った以上にハードかもしんないな」
ほどなくして、タフィの言葉は現実となる。
建物は青緑色をした銅板葺きの屋根が特徴的な木造平屋建てで、庭はきれいに芝生が張られている。
「こんにちは。絵のモデルで来ました」
カリンは猫の顔をかたどったドアノッカーをドンドンドンッと叩いた。
「……今開ける」
中から出てきたのはいかつい顔をした大男。しわの感じから、年齢は60代後半から70代前半くらいだということが想像できる。
「どうも」
「……後ろにいる2人もそうか?」
「そうです」
「まぁ、入れ」
男は不愛想に応対すると、3人を家の中へ招き入れた。
「おじゃましまーす」
家の中は全く飾り気がなく、家財道具はテーブルや椅子といった必要最低限度の物しか置かれていない。
一方で絵の具や筆といった画材の類はとても充実しており、描きかけを含めて絵が描かれたキャンバスが部屋の至る所に置かれていた。
「へぇ、おもしろい絵だな」
タフィは、切り株に座ってギターを弾いている猫の絵を見つけ、それをじっと眺めていた。
「タフィ、絵は後にしてこっち来て座りな」
「ほーい」
タフィはテーブルを囲うようにして置かれた丸椅子に腰を下ろした。
「さて、まずは自己紹介をしておこう。俺が依頼を出したアグレ・ラッシャーだ」
「うちはカリン・ゴッチです」
「ボイヤーです」
「タフィ・カルドーゾです」
3人が自己紹介を終えたところで、アグレはカリンのことをまじまじと見た。
「ゴッチ……お前さん、コーツ・ゴッチって男は知ってるかい?」
「知ってますよ。だってうちのおじいちゃんですから」
「そうか、なんか雰囲気が似てるなぁと思ったら、やっぱりコーツの孫だったか。俺とあいつは昔馴染みなんだよ。あいつは元気にしてるのか?」
不愛想な感じが一気に和らいだ。
「はい、元気ですよ」
(雰囲気が似てるって、うちってそんなにゴツい感じ出してるの?)
表には出さなかったが、カリンは心の中で渋い顔をしていた。
「そうかそうか。じゃ、本題に入ろう。一応聞いておくが、お前ら野球やったことはあんだろ?」
「もちろんですよ。この間も助っ人として草野球の試合に出てますからね」
「ほぉ~。じゃあ、ポジションはどこなんだ?」
「うちはピッチャーです」
「僕はサード守ってます」
「俺はショート」
「わかった。なら早速動きを見させてもらう。グラブとかはそこに置いてあるから、持って来てなかったら使ってくれ」
アグレは野球道具が乱雑に置かれた場所を指差すと、庭へ出た。
「俺なんとなく素振りくらいかなと思ってたんだけど、外出たってことはもっと大きな動きをさせんのかな?」
タフィが言うように、素振りやシャドーピッチングくらいなら室内でも十分できる。
「その可能性はあるんじゃないの。依頼票には“野球をしている猫”としか書かれてないから、“スクイズを外された猫”とか、“フライをダイビングキャッチする猫”みたいな動きをするかもしれないよ」
カリンはしゃべりながら、タフィにグローブを手渡した。
「こりゃ、思った以上にハードかもしんないな」
ほどなくして、タフィの言葉は現実となる。
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