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第2章 卒業試験
会いに行ったり会いに来たり
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(ナルホド、ソレデココヘ来タノカ)
タフィたちが頼ったのは、おそらく誰よりもアレロパシーに詳しいであろうマレッドだった。
「なんとかなりますか?」
(マァ、待テ。確カニオ前ノ話ヲ聞ク限リデハ、ササノハアワダチソウガ原因ダト思ウガ、断定マデハデキナイナ。ナンカ葉ッパトカハ持ッテキテナイノカ?)
「あ、あります」
ボイヤーは2本目のニジイロソウから採取した葉っぱを、マレッドに向かって掲げて見せた。
(ドレドレ……アァ、コレハアイツノ毒ニ間違イナイナ)
葉っぱを見るなりマレッドは断言した。
「じゃあ、断定できたところで改めて聞きますけど、なんとかなりますか?」
(ナルナ)
「本当ですか!」
(サスガニスグニ元ドオリトイウワケニハイカナイガ、ワタシノ力ヲ持ッテスレバ、花畑ヲ復活サセルコトハ十分可能ダ。タダ、ソレニハオ前ラノ助ケガ不可欠ダガナ)
「何したらいいの?」
タフィが食い気味に聞いた。
(ワタシハココカラ動クコトガデキナイカラ、代ワリニ枝ヲ持ッテイッテ接ギ木ヲシテ欲シインダ)
「わかった。枝を持ってって向こうで植えりゃいいんだな」
(バカッ、接ギ木ダッテ言ッタロ。ナンデ植エンダヨ)
「兄やん、接ぎ木っていうのは、木の枝とかを別の木にくっつけて一緒にさせちゃうやり方のことです」
ボイヤーは慌ててタフィに説明する。
「へぇ~、知らんかったな。カリンは知ってた?」
「ざっくりとはね」
(……ボイヤー、オ前ハ当然ヤリ方ヲ知ッテルダロ。ダカラ、オ前ガ責任持ッテ接ギ木ヲヤレ)
マレッドはボイヤーに厳命した。
「わかりました。それで、台木は何にしたらいいですか?」
台木とは接ぎ木される側の木のことで、一般的に接ぎ木する木と同属か、もしくは近縁のものを選ぶことが多い。
(台木ハナンデモイイ。キチント密着サエデキレバ、ドンナ木ダロウト接ギ木デキル。他ニ聞キタイコトハアルカ?)
要点をとらえた質問をされたマレッドは、満足した様子で返答した。
「大丈夫です」
(ナラ、枝ヲ落トスカラチョットコッチニ来イ)
言われたとおりボイヤーがマレッドの真下へ行くと、ガサガサッと木が揺れて枝が1本落ちてきた。
「おっとっと」
ボイヤーはしっかりと枝をキャッチする。
(ジャ、シッカリ接ギ木シテ来イヨ)
3人はマレッドの枝を手に、再びニジイロソウの群生地へと向かっていった。
「待っていたぞ。平民のタフィ・カルドーゾ」
ヴァネティ村へと向かう道中、タフィたちはアポロスと遭遇した。
「またあいつか……」
タフィは顔をしかめる。
「そろそろ出てくるんじゃないかなぁって思ってたのよねぇ」
カリンはからかうような口調でタフィに言った。
「じじいが喜ぶものは見つかったのか?」
アポロスは大声で叫びながらタフィとの距離を詰めていく。
「見つかったよ」
タフィは嫌そうに返事をする。
「そうか、そいつは良かったな」
「え?」
てっきり「寄越せ!」と言ってくるものと思っていたタフィは、アポロスの反応を見てびっくりした。
「労いの品ってわけじゃないが、今日はお前のためにいいものを用意した。おいっ」
アポロスは一旦立ち止まると、隣にいる男性従者に指示を出した
「はい」
男性従者は手に持っていたきれいな柄の箱を開け、中身が見えるように少し傾かせた。
「これはカステラというお菓子だ。甘くてうまいから食べてみろ」
アポロスはタフィに向かって手招きする。
「じゃあ食ってみるか」
カステラからは甘い香りとともに怪しいにおいがプンプンと漂っていたが、タフィは迷うことなく食べることを決め、カリンとボイヤーも特にそれを止めようとはしなかった。
「うまそうだな、本当に食っていいのか?」
「いいから、食え食え」
「じゃあ、遠慮なくもらうぞ」
タフィはカステラを1切れ掴むと、ためらいなく食べ始める。
「うまいなこれ。もう1個もらっていいか?」
タフィはあっという間に1切れ食べ終え、2切れ目に手を伸ばそうとした。
「ああ、好きなだけ食え」
タフィは2切れ目もおいしそうに食べているが、一方でアポロスの顔には徐々に当惑の色が見え始めていた。
「……お前、なんともないのか?」
我慢できなくなったのか、アポロスは直球ともいえる質問をタフィにぶつけた。
「別になんともねぇけど……あ、もしかしてお前これになんか入れた?」
「いや、全然何も入れてねぇよ。さ、どんどん食ってくれ」
アポロスは全力で否定すると、意見を求めるように男性従者の顔を見たが、男性従者は無言で首をかしげるだけだった。
そしてタフィが3切れ目のカステラに手を伸ばしたところで、アポロスもカステラに手を伸ばした。
「おっかしいなぁ……」
アポロスは首をかしげながら食べ始め、3口目を口に入れたところで異変が生じる。
「あ……しびれてきた……入れ忘れじゃなかった……」
アポロスは苦悶の表情を浮かべながら倒れてしまった。
「やっぱなんか入れてやがったな。けど、俺にはそんなもの通用しねぇぜ。……このカステラ、どうせ誰も食えねぇだろうから、俺がもらってってやるよ」
タフィは男性従者からカステラの入った箱を受け取ると、勝ち誇った様子で歩き出した。
「うちらも行こっか」
「そうですね」
去っていこうとする2人に向かって、アポロスは弱々しい声で問いかけた。
「……な、なぁ、あいつって毒とか効かねぇの?」
「効かない効かない。タフィにとっちゃ、毒なんて調味料と一緒なんだから」
「調味料……」
カリンの言葉を聞いて、アポロスはなんとも言えない敗北感を味わうのだった。
タフィたちが頼ったのは、おそらく誰よりもアレロパシーに詳しいであろうマレッドだった。
「なんとかなりますか?」
(マァ、待テ。確カニオ前ノ話ヲ聞ク限リデハ、ササノハアワダチソウガ原因ダト思ウガ、断定マデハデキナイナ。ナンカ葉ッパトカハ持ッテキテナイノカ?)
「あ、あります」
ボイヤーは2本目のニジイロソウから採取した葉っぱを、マレッドに向かって掲げて見せた。
(ドレドレ……アァ、コレハアイツノ毒ニ間違イナイナ)
葉っぱを見るなりマレッドは断言した。
「じゃあ、断定できたところで改めて聞きますけど、なんとかなりますか?」
(ナルナ)
「本当ですか!」
(サスガニスグニ元ドオリトイウワケニハイカナイガ、ワタシノ力ヲ持ッテスレバ、花畑ヲ復活サセルコトハ十分可能ダ。タダ、ソレニハオ前ラノ助ケガ不可欠ダガナ)
「何したらいいの?」
タフィが食い気味に聞いた。
(ワタシハココカラ動クコトガデキナイカラ、代ワリニ枝ヲ持ッテイッテ接ギ木ヲシテ欲シインダ)
「わかった。枝を持ってって向こうで植えりゃいいんだな」
(バカッ、接ギ木ダッテ言ッタロ。ナンデ植エンダヨ)
「兄やん、接ぎ木っていうのは、木の枝とかを別の木にくっつけて一緒にさせちゃうやり方のことです」
ボイヤーは慌ててタフィに説明する。
「へぇ~、知らんかったな。カリンは知ってた?」
「ざっくりとはね」
(……ボイヤー、オ前ハ当然ヤリ方ヲ知ッテルダロ。ダカラ、オ前ガ責任持ッテ接ギ木ヲヤレ)
マレッドはボイヤーに厳命した。
「わかりました。それで、台木は何にしたらいいですか?」
台木とは接ぎ木される側の木のことで、一般的に接ぎ木する木と同属か、もしくは近縁のものを選ぶことが多い。
(台木ハナンデモイイ。キチント密着サエデキレバ、ドンナ木ダロウト接ギ木デキル。他ニ聞キタイコトハアルカ?)
要点をとらえた質問をされたマレッドは、満足した様子で返答した。
「大丈夫です」
(ナラ、枝ヲ落トスカラチョットコッチニ来イ)
言われたとおりボイヤーがマレッドの真下へ行くと、ガサガサッと木が揺れて枝が1本落ちてきた。
「おっとっと」
ボイヤーはしっかりと枝をキャッチする。
(ジャ、シッカリ接ギ木シテ来イヨ)
3人はマレッドの枝を手に、再びニジイロソウの群生地へと向かっていった。
「待っていたぞ。平民のタフィ・カルドーゾ」
ヴァネティ村へと向かう道中、タフィたちはアポロスと遭遇した。
「またあいつか……」
タフィは顔をしかめる。
「そろそろ出てくるんじゃないかなぁって思ってたのよねぇ」
カリンはからかうような口調でタフィに言った。
「じじいが喜ぶものは見つかったのか?」
アポロスは大声で叫びながらタフィとの距離を詰めていく。
「見つかったよ」
タフィは嫌そうに返事をする。
「そうか、そいつは良かったな」
「え?」
てっきり「寄越せ!」と言ってくるものと思っていたタフィは、アポロスの反応を見てびっくりした。
「労いの品ってわけじゃないが、今日はお前のためにいいものを用意した。おいっ」
アポロスは一旦立ち止まると、隣にいる男性従者に指示を出した
「はい」
男性従者は手に持っていたきれいな柄の箱を開け、中身が見えるように少し傾かせた。
「これはカステラというお菓子だ。甘くてうまいから食べてみろ」
アポロスはタフィに向かって手招きする。
「じゃあ食ってみるか」
カステラからは甘い香りとともに怪しいにおいがプンプンと漂っていたが、タフィは迷うことなく食べることを決め、カリンとボイヤーも特にそれを止めようとはしなかった。
「うまそうだな、本当に食っていいのか?」
「いいから、食え食え」
「じゃあ、遠慮なくもらうぞ」
タフィはカステラを1切れ掴むと、ためらいなく食べ始める。
「うまいなこれ。もう1個もらっていいか?」
タフィはあっという間に1切れ食べ終え、2切れ目に手を伸ばそうとした。
「ああ、好きなだけ食え」
タフィは2切れ目もおいしそうに食べているが、一方でアポロスの顔には徐々に当惑の色が見え始めていた。
「……お前、なんともないのか?」
我慢できなくなったのか、アポロスは直球ともいえる質問をタフィにぶつけた。
「別になんともねぇけど……あ、もしかしてお前これになんか入れた?」
「いや、全然何も入れてねぇよ。さ、どんどん食ってくれ」
アポロスは全力で否定すると、意見を求めるように男性従者の顔を見たが、男性従者は無言で首をかしげるだけだった。
そしてタフィが3切れ目のカステラに手を伸ばしたところで、アポロスもカステラに手を伸ばした。
「おっかしいなぁ……」
アポロスは首をかしげながら食べ始め、3口目を口に入れたところで異変が生じる。
「あ……しびれてきた……入れ忘れじゃなかった……」
アポロスは苦悶の表情を浮かべながら倒れてしまった。
「やっぱなんか入れてやがったな。けど、俺にはそんなもの通用しねぇぜ。……このカステラ、どうせ誰も食えねぇだろうから、俺がもらってってやるよ」
タフィは男性従者からカステラの入った箱を受け取ると、勝ち誇った様子で歩き出した。
「うちらも行こっか」
「そうですね」
去っていこうとする2人に向かって、アポロスは弱々しい声で問いかけた。
「……な、なぁ、あいつって毒とか効かねぇの?」
「効かない効かない。タフィにとっちゃ、毒なんて調味料と一緒なんだから」
「調味料……」
カリンの言葉を聞いて、アポロスはなんとも言えない敗北感を味わうのだった。
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