バッティングハンター

いんじんリュウキ

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第2章 卒業試験

花畑復活作戦始動

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 翌日、いよいよタフィたちはニジイロソウを復活させるための行動を開始した。

 まず手始めに取り掛かったのは、台木探しである。

「ボイヤー、どんな木を探したらいいの? 一応言っとくけど、木の種類を言われてもうちらわかんないよ」

 隣にいるタフィもカリンの言葉を聞いて力強くうなずく。

「大丈夫ですよ。ジェイコブセンさんも言っていたように、木の種類はなんでもいいので。ただ、あの場所に持っていかなきゃいけないんで、持っていけるサイズのものを探してください」

「オッケー」

「わかった」

 3人は早速台木探しを始めたが、持ち運びできそうなサイズの木というのは意外と簡単には見つからない。

 そんななか、ようやくタフィがちょうど良さそうなサイズの木を発見した。

「おーい、カリン、ボイヤー、ちょっと来てぇ」

 呼ばれて2人もやって来た。

「ボイヤー、この木はどうだ?」

 タフィが見つけた木は、高さが約1.5メートルで、葉っぱはなく、代わりにピンク色の花がたくさん咲いている。

「いいですね。これにしましょう」

 ボイヤーは即決した。

「これ、なんの木なの?」

 カリンは花に顔を近づけながら聞いた。

「アーモンドですね」

 ボイヤーは即答する。

「本当にあんたなんでも知ってるね。これからは“先生”って呼ぼうかな」

「やめてくださいよ。それより、早く木を掘り出しましょう」

 3人は持参したシャベルを使って、根を傷つけないように慎重に土を掘っていく。

「じゃ、木を抜くんで、2人はちょっと離れててください」

 根が露わになったところで、ボイヤーはアーモンドの木を引っこ抜いた。

「タフィ、穴埋めるよ」

「ほーい」

 カリンとタフィが穴を埋め終えると、3人は150メートルほど先にあるニジイロソウの群生地へと移動した。

「だいたいこの辺が真ん中かな……うん。兄やん、姉さん、ここに植えるんで穴掘ってもらえますか?」

 ボイヤーはマレッドの力を最大限に活かせるようにしっかりと位置関係を考えて、植える場所を決めた。

「オッケー」

 カリンとタフィは木を植えるための穴を掘っていく。

「これくらいでいいかな? 先生、これでいい?」

「姉さん、“先生”って呼ばないでくださいよ。……あ、それくらいで大丈夫です」

 OKが出たので、カリンとタフィは穴から出て、ボイヤーはゆっくりと穴の中に木を置いた。

「僕が支えてるんで、2人は土をかけてください」

「こんな感じにか?」

 タフィは笑いながらボイヤーに向かって土をかけた。

「ちょ、ちょっと、兄やんやめてくださいよ。僕じゃなくて、根っこの上にかけてください」

「いや、『土をかけてくれ』って言ったからさ、ちょっと勘違いしちゃったよ」

 そんなじゃれ合いを挟みつつ植樹は無事完了し、3人は河原で昼食を取ることにした。



「お昼は魚ね」

 カリンの一言で昼食のメニューは魚に決まった。

「魚かぁ……だったら魚捕るの俺にやらせてくんない? ちょっと試したいことがあるんだよね」

「いいけど、何するつもりなの?」

「水中攻撃」

「水中攻撃? 何それ?」

「まぁ、見てろって。ボイヤー、ちょっと川の上飛んで魚の位置を教えてくれ」

「わかりました」

 ボイヤーは言われたとおり魚を探し始め、タフィは石を吟味し始める。

「あんた、まさか石投げで魚捕ろうってわけじゃないよね」

「いいから見てろって」

 タフィは細長い形の石を選んで集めていく。

「兄やーん、ここに魚がいまーす」

 ボイヤーは川面を指差しながら叫ぶ。

「わかった、そのまま動きを見とけ」

 タフィは魚の位置をしっかりと確認し、そのやや手前あたりの川面に向かって石を打つ。

 バシャンという水音とともに石は川の中へと入り、徐々に勢いを削がれながらも水中を直進し、魚に命中した。

「どうだ? ……よし」

 河原からは石の動きが見えず、すぐに成否の判断をすることができなかったが、魚が水面に浮かんできたことで、ようやく成果を確認した。

「へぇ、やるじゃない。これ、石投げしてる時に思いついたの?」

「そうだよ」

 タフィは満足げにうなずく。

「ふーん。けど、よく深さまでわかったわね」

「深さは勘だよ。なんとなくあれくらいの深さにいるんじゃねぇかなぁっと思ってさ」

「勘で一発命中って……あんたどんだけ勘がいいのよ」

 そこへ、魚を持ってボイヤーが戻ってきた。

「兄やん、カモニゴイですよ」

 ボイヤーの手にあったのは灰白色をした体長20センチほどの魚で、エラのあたりに石が当たったであろう傷があった。

「カモニゴイ?」

「カモニゴイはコイの仲間で、焼くとカモに似た味がすることから、その名前で呼ばれてるんです」

「へぇ~、これカモの味するんだ」

「さっすが先生、魚もよくご存じで」

 カリンはからかうような笑みを浮かべる。

「もう姉さん……」

「ボイヤー、また魚探してきてくれ」

「あ、はい」

 この後、タフィはカモニゴイを1匹、ひし形をしたアユのヒシアユを2匹、ニジマスを2匹、そしてブラウントラウトを1匹捕らえることに成功した。

「そうねぇ……悪くないけど、魚を捕るには力加減がちょっとあれかな」

 カリンは、身が半分引きちぎれてしまったニジマスとブラウントラウトを持ちながら、この攻撃に対する感想を口にした。

「2匹ぐらいいいじゃねぇか。それよりさっさと食おうぜ、本当にカモの味がするかすげぇ気になるんだよ」

「はいはいわかったわかった。ボイヤー、火の用意はできた?」

「はい、できてまーす」

 ボイヤーは魚を焼くために、たき火の準備を整えていた。

「じゃ、どんどん焼いちゃおう」

 3人は魚を木の枝に刺し、次々とたき火の周りに突き刺していく。

「もういいんじゃねぇのか?」

 早く食べたくてしょうがないタフィは、急かすように焼け具合を確認する。

「えっと……あ、もう大丈夫です」

 ボイヤーのOKが出ると同時に、タフィはカモニゴイに手を伸ばす。

「いただきます。……あ、マジでカモだ」

「そんなにカモに似てるの?」

 タフィの味覚を信用していないカリンは、疑いながらカモニゴイにかぶりつく。

「……カモだ」

「だろ」

「これ、目隠しして出されたら、カモ肉と勘違いしちゃうかもね」

「ダジャレか?」

「え? ……違うわよ」

 指摘されて気づいたカリンは、恥ずかしさを誤魔化すようにタフィの頭を軽く叩いた。

「おい、叩くなよ」

「余計なこと言ってないで、さっさと食べちゃいな」

「ほーい」

 そんな風に昼食の時間は過ぎていった。
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