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第2章 卒業試験
接ぎ木実行
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昼食後、タフィたちは接ぎ木に着手した。
「えっと接ぎ木なんですけど、一番大事なことは、両方の木の形成層をしっかりと合わせることなんです。形成層っていうのは……」
ボイヤーは丁寧に説明しながら接ぎ木を行っていこうとしたが、タフィは明らかに退屈そうな顔をしている。
「ボイヤー、そういう説明いらないから」
「あ、そうですか……あの、姉さんは?」
「うちもいらないかな」
「わかりました……」
ボイヤーは黙って作業を進めていったが、その顔は心なしか寂しげだった。
「終わりました」
ボイヤーは接ぎ木した部分をロープで二重に巻いてしっかりと固定し、終了を報告した。
「これが接ぎ木なのかぁ」
タフィは興味深そうにしげしげと接ぎ木を見る。
「それで先生、これはどれくらいでくっつくの?」
「……そうですね、普通だと半月ぐらいで接いだ方の木から芽が出てきたりします」
ボイヤーは諦めたような顔で“先生”呼びされることを受け入れた。
「え、じゃあ半月かかるってこと?」
「ただ、ジェイコブセンさんが言っていた感じだと、そんなに時間はかからないような気がするんですよね」
ボイヤーの言葉どおり、ほどなくして接ぎ木の成果が表れる。
(チャント接ギ木デキタヨウダナ)
「わっ!」
「きゃっ!」
唐突にマレッドの声が響いてきたので、タフィとカリンはびっくりした。
「どうもジェイコブセンさん」
ボイヤーはある程度こういう展開も予想していたので、特段驚くことなくあいさつした。
(話ニハ聞イテイタガ、間一髪ダッタナ)
「なぁ、どういう状況なんだ?」
タフィは状況が飲み込めていない。
「兄やん、接ぎ木っていうのは分身を作るようなものなんですよ」
「ふーん、じゃあ、この木はジョイコブセンさんの分身になったってことなの?」
(ソウイウコトダ。サスガニマダ完璧デハナイガ、ササノハノ連中ヲ相手ニスルニハ十分ダ。デハ、早速取リ掛カルコトニシヨウ)
マレッドはササノハアワダチソウに狙いを定めて、根から強烈な有害物質を放出する。
「ちょっと嘘でしょ、なんか枯れ始めてるんだけど」
カリンが驚くのも無理はない。元気いっぱいに生えていたササノハアワダチソウたちからみるみるうちに生気が失われていき、次々と茎が曲がっていく。
「すげぇけどさ、この後になんか育つの?」
多くの植物が枯れていくさまを見て、タフィはちょっとずつ不安になってきた。
(心配スルナ。コレハササノハニ直接向ケテルカラ、土壌ニ悪影響ハナイ)
「だったらいいけどさ」
タフィが見つめるなか、除草作業はあっという間に終了する。
(終ワッタゾ)
「もう終わったの?」
カリンは念のためにササノハアワダチソウの状態を確認したが、完全に枯れ果てていた。
「すごいわね」
(ササノハナンテ雑魚ダカラナ。ソレヨリ、残ッテルニジイロソウヲ集メテ、ワタシノ周リニ植エテクレ)
3人は手分けしてニジイロソウを探し、先日見つけた分を含めて7本のニジイロソウを確保した。
「マジでギリギリだったな」
タフィはニジイロソウを植えながら改めて痛感した。
「本当ね。もしあと1本少なかったら、集団芸みたいなのが見れなかったわけだしね」
カリンも同様の感想を漏らす。
「しかも7本中3本が病気だからな。念のために聞くけど、これ治るんだよな?」
(モチロンダ。半日経テバ元気ニナリ、1日経テバ全体デ七色ヲ表現スルヨウニナル)
「……本当にこれでいけるかな?」
タフィはカリンとボイヤーに意見を求める。
「大丈夫よ。確かに引きで見たらちょっと寂しい感じだけど、近くで見たらそれなりに絵になるから。それに、今回は復活への道筋をつけたことが大事なんだからさ」
「そうですよ。学園長も、兄やんが思い出の場所を復活させるために、色々と頑張ったんだってわかればきっと喜びます」
「というか失敗したならともかく、一応成功したわけなんだから。チャレンジしないでどうすんのよ!」
カリンはタフィに向かって檄を飛ばす。
「よっしゃ、じゃあここに連れてこよう。ジェイコブセンさん、後は頼んだよ」
(任セテオケ)
マレッドに後を託し、3人はベルツハーフェンへと戻っていった。
「えっと接ぎ木なんですけど、一番大事なことは、両方の木の形成層をしっかりと合わせることなんです。形成層っていうのは……」
ボイヤーは丁寧に説明しながら接ぎ木を行っていこうとしたが、タフィは明らかに退屈そうな顔をしている。
「ボイヤー、そういう説明いらないから」
「あ、そうですか……あの、姉さんは?」
「うちもいらないかな」
「わかりました……」
ボイヤーは黙って作業を進めていったが、その顔は心なしか寂しげだった。
「終わりました」
ボイヤーは接ぎ木した部分をロープで二重に巻いてしっかりと固定し、終了を報告した。
「これが接ぎ木なのかぁ」
タフィは興味深そうにしげしげと接ぎ木を見る。
「それで先生、これはどれくらいでくっつくの?」
「……そうですね、普通だと半月ぐらいで接いだ方の木から芽が出てきたりします」
ボイヤーは諦めたような顔で“先生”呼びされることを受け入れた。
「え、じゃあ半月かかるってこと?」
「ただ、ジェイコブセンさんが言っていた感じだと、そんなに時間はかからないような気がするんですよね」
ボイヤーの言葉どおり、ほどなくして接ぎ木の成果が表れる。
(チャント接ギ木デキタヨウダナ)
「わっ!」
「きゃっ!」
唐突にマレッドの声が響いてきたので、タフィとカリンはびっくりした。
「どうもジェイコブセンさん」
ボイヤーはある程度こういう展開も予想していたので、特段驚くことなくあいさつした。
(話ニハ聞イテイタガ、間一髪ダッタナ)
「なぁ、どういう状況なんだ?」
タフィは状況が飲み込めていない。
「兄やん、接ぎ木っていうのは分身を作るようなものなんですよ」
「ふーん、じゃあ、この木はジョイコブセンさんの分身になったってことなの?」
(ソウイウコトダ。サスガニマダ完璧デハナイガ、ササノハノ連中ヲ相手ニスルニハ十分ダ。デハ、早速取リ掛カルコトニシヨウ)
マレッドはササノハアワダチソウに狙いを定めて、根から強烈な有害物質を放出する。
「ちょっと嘘でしょ、なんか枯れ始めてるんだけど」
カリンが驚くのも無理はない。元気いっぱいに生えていたササノハアワダチソウたちからみるみるうちに生気が失われていき、次々と茎が曲がっていく。
「すげぇけどさ、この後になんか育つの?」
多くの植物が枯れていくさまを見て、タフィはちょっとずつ不安になってきた。
(心配スルナ。コレハササノハニ直接向ケテルカラ、土壌ニ悪影響ハナイ)
「だったらいいけどさ」
タフィが見つめるなか、除草作業はあっという間に終了する。
(終ワッタゾ)
「もう終わったの?」
カリンは念のためにササノハアワダチソウの状態を確認したが、完全に枯れ果てていた。
「すごいわね」
(ササノハナンテ雑魚ダカラナ。ソレヨリ、残ッテルニジイロソウヲ集メテ、ワタシノ周リニ植エテクレ)
3人は手分けしてニジイロソウを探し、先日見つけた分を含めて7本のニジイロソウを確保した。
「マジでギリギリだったな」
タフィはニジイロソウを植えながら改めて痛感した。
「本当ね。もしあと1本少なかったら、集団芸みたいなのが見れなかったわけだしね」
カリンも同様の感想を漏らす。
「しかも7本中3本が病気だからな。念のために聞くけど、これ治るんだよな?」
(モチロンダ。半日経テバ元気ニナリ、1日経テバ全体デ七色ヲ表現スルヨウニナル)
「……本当にこれでいけるかな?」
タフィはカリンとボイヤーに意見を求める。
「大丈夫よ。確かに引きで見たらちょっと寂しい感じだけど、近くで見たらそれなりに絵になるから。それに、今回は復活への道筋をつけたことが大事なんだからさ」
「そうですよ。学園長も、兄やんが思い出の場所を復活させるために、色々と頑張ったんだってわかればきっと喜びます」
「というか失敗したならともかく、一応成功したわけなんだから。チャレンジしないでどうすんのよ!」
カリンはタフィに向かって檄を飛ばす。
「よっしゃ、じゃあここに連れてこよう。ジェイコブセンさん、後は頼んだよ」
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