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第1章 北条家騒動
友人は鳥を追っていた
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翌日、辰巳たち四人は、辰巳・夏の薬草班と、ユノウ・吉右衛門のツチノコ班とにわかれて行動していた。
本来ならば一緒に行動すべきなのだが、薬草が生えている場所とツチノコが生息している場所が離れているため、効率を考えて別行動となった。
それが提案された時、ユノウと離れて行動することへの不安から、辰巳は少し難色を示していたが、薬草が生えてる場所周辺には危険な生き物はあまりいないという夏の意見や、偶然ではあったが、“陽気に”踊る人のように、呼び出し時に形容詞をつけると、その分だけ紙魔法の力が向上することが判明したこともあって、提案を受け入れた。
「よーし、これで終わりだ」
無事に一〇本目となるアオタネソウを摘み取った辰巳は、ほっと息を吐くと、軽く体を伸ばしながら周囲を見回した。
少し離れた場所では、夏が食材として使えそうな野草やきのこを採っている。
「ああいう風に毎日食材を探してるのか……大変だな」
夏一家は、自分たちで食材を集めることによってギリギリまで材料費を抑え、なんとか店をやり繰りしていた。
「どう、食材は集まった?」
「はい。モクメザリガニをいただいたおかげで、今日はそんなに集めなくても大丈夫なので。辰巳さんこそ、薬草は集まりましたか?」
「うん。じゃあ、帰ろうか」
二人が帰路につこうとしたちょうどその時、どこからか横笛の音色を思わせる鳴き声が聞こえてきた。
「なんの音だ、これ? なんかの鳴き声か?」
辰巳はキョロキョロと周囲を見回したが、鳴き声の正体はわからない。
「あ、これはフエホウジロの鳴き声ですね」
フエホウジロはホウジロの一種で、体は全体的にオリーブ色をしており、大きさは約二〇センチ。名前にもあるように、横笛のような美しい鳴き声を発する。そのため人に飼われている個体も多く、鳴き声の優劣を決める遊びの鳴き合わせも、盛んに行われていた。
「フエホウジロ。あぁ、確かに言われてみれば横笛っぽいな」
辰巳が耳を澄まして鳴き声を聞いていると、突然網が襲いかかってきた。
「わっ! な、なんだ!?」
「ごめんなさーい」
辰巳に向かって大声で駆け寄ってきたのは、紫色の着物を身にまとったボブポニーテールの女の子だ。美人だが少し強面気味の顔立ちをしており、また動きやすさを重視しているのか、着物の丈がミニスカート並みに短かった。
「ごめんなさい。怪我とかしてないですか?」
「うん、大丈夫大丈夫。……はい、これ」
辰巳は頭にかかった網を外すと、女の子に向かって差し出した。
「本当にごめんなさい。……あれ、夏?」
網を受け取ろうとした時、女の子はそばにいた夏と目が合った。
「お久しぶりです、奈々姉様」
夏はペコっとお辞儀をした。
「久しぶり。元気だった?」
「はい」
「え、二人知り合いなの?」
辰巳が聞くと、夏はうなずいた。
「奈々姉様とは幼馴染なんです。奈々姉様、こちらは旅芸人の辰巳さん。紙魔法っていうすごい魔法の使い手なんです」
「どうも、辰巳です」
すごい人風に紹介された辰巳は、照れた様子で挨拶した。
「初めまして、私は河越城家老、大道寺直孝が娘、大道寺奈々と申します」
「あ、これはご丁寧にどうも」
固めの挨拶に加え、相手が武家の娘だとわかり、辰巳は改めてお辞儀をした。
辰巳がわかりやすくかしこまった感じになったので、奈々は思わず吹き出した。
「家老の娘だからって、そんなにかしこまらなくていいですよ。夏と同じように、普通に接してください」
「えっと……わかりました」
二人が一通り挨拶を終えた瞬間、まるで待っていたかのように、再び横笛のような鳴き声が森の中に響いた。
「あ、ごめんなさい。私あれを捕まえないといけないんで」
奈々は断りを入れると、鳴き声がする方へ向かって勢い良く駆け出し、そのまま素早く網を投げた。
「やった」
今度は無事捕獲に成功したようで、奈々は辰巳たちに向かって両手で大きく丸を作って見せる。
そして逃げ出さないよう慎重に網からホウジロを出すと、背負っていた鳥かごの中に入れて戻ってきた。
「へぇ、これがフエホウジロ。確かに、ほっぺたの辺りが白いね」
辰巳は興味深そうに鳥かごの中に入ったホウジロを見た。
「奈々姉様は、まだ森の中で活動されるのですか?」
「ううん、今日はこれで終わり」
「だったら、うちに来て一緒にご飯を食べませんか? 私たちもちょうど帰るところだったので」
「ご飯かぁ……じゃあ、久しぶりに夏の料理を食べさせてもらおうかな」
奈々を含めた三人で店へ戻ることになった。
本来ならば一緒に行動すべきなのだが、薬草が生えている場所とツチノコが生息している場所が離れているため、効率を考えて別行動となった。
それが提案された時、ユノウと離れて行動することへの不安から、辰巳は少し難色を示していたが、薬草が生えてる場所周辺には危険な生き物はあまりいないという夏の意見や、偶然ではあったが、“陽気に”踊る人のように、呼び出し時に形容詞をつけると、その分だけ紙魔法の力が向上することが判明したこともあって、提案を受け入れた。
「よーし、これで終わりだ」
無事に一〇本目となるアオタネソウを摘み取った辰巳は、ほっと息を吐くと、軽く体を伸ばしながら周囲を見回した。
少し離れた場所では、夏が食材として使えそうな野草やきのこを採っている。
「ああいう風に毎日食材を探してるのか……大変だな」
夏一家は、自分たちで食材を集めることによってギリギリまで材料費を抑え、なんとか店をやり繰りしていた。
「どう、食材は集まった?」
「はい。モクメザリガニをいただいたおかげで、今日はそんなに集めなくても大丈夫なので。辰巳さんこそ、薬草は集まりましたか?」
「うん。じゃあ、帰ろうか」
二人が帰路につこうとしたちょうどその時、どこからか横笛の音色を思わせる鳴き声が聞こえてきた。
「なんの音だ、これ? なんかの鳴き声か?」
辰巳はキョロキョロと周囲を見回したが、鳴き声の正体はわからない。
「あ、これはフエホウジロの鳴き声ですね」
フエホウジロはホウジロの一種で、体は全体的にオリーブ色をしており、大きさは約二〇センチ。名前にもあるように、横笛のような美しい鳴き声を発する。そのため人に飼われている個体も多く、鳴き声の優劣を決める遊びの鳴き合わせも、盛んに行われていた。
「フエホウジロ。あぁ、確かに言われてみれば横笛っぽいな」
辰巳が耳を澄まして鳴き声を聞いていると、突然網が襲いかかってきた。
「わっ! な、なんだ!?」
「ごめんなさーい」
辰巳に向かって大声で駆け寄ってきたのは、紫色の着物を身にまとったボブポニーテールの女の子だ。美人だが少し強面気味の顔立ちをしており、また動きやすさを重視しているのか、着物の丈がミニスカート並みに短かった。
「ごめんなさい。怪我とかしてないですか?」
「うん、大丈夫大丈夫。……はい、これ」
辰巳は頭にかかった網を外すと、女の子に向かって差し出した。
「本当にごめんなさい。……あれ、夏?」
網を受け取ろうとした時、女の子はそばにいた夏と目が合った。
「お久しぶりです、奈々姉様」
夏はペコっとお辞儀をした。
「久しぶり。元気だった?」
「はい」
「え、二人知り合いなの?」
辰巳が聞くと、夏はうなずいた。
「奈々姉様とは幼馴染なんです。奈々姉様、こちらは旅芸人の辰巳さん。紙魔法っていうすごい魔法の使い手なんです」
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「あ、これはご丁寧にどうも」
固めの挨拶に加え、相手が武家の娘だとわかり、辰巳は改めてお辞儀をした。
辰巳がわかりやすくかしこまった感じになったので、奈々は思わず吹き出した。
「家老の娘だからって、そんなにかしこまらなくていいですよ。夏と同じように、普通に接してください」
「えっと……わかりました」
二人が一通り挨拶を終えた瞬間、まるで待っていたかのように、再び横笛のような鳴き声が森の中に響いた。
「あ、ごめんなさい。私あれを捕まえないといけないんで」
奈々は断りを入れると、鳴き声がする方へ向かって勢い良く駆け出し、そのまま素早く網を投げた。
「やった」
今度は無事捕獲に成功したようで、奈々は辰巳たちに向かって両手で大きく丸を作って見せる。
そして逃げ出さないよう慎重に網からホウジロを出すと、背負っていた鳥かごの中に入れて戻ってきた。
「へぇ、これがフエホウジロ。確かに、ほっぺたの辺りが白いね」
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「奈々姉様は、まだ森の中で活動されるのですか?」
「ううん、今日はこれで終わり」
「だったら、うちに来て一緒にご飯を食べませんか? 私たちもちょうど帰るところだったので」
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