「完結」ゾンビと片腕少女はどのように死んだのか特殊部隊員は語る

leon

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第一章 片腕の少女

第七話 工場での激闘

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工場に夜が訪れ、バリケードの外で変異種の唸り声が近づく。風が鉄骨を揺らし、薄暗い工場内に不気味な響きが広がる。俺は猟銃を手に、バリケードの見張り台に立つ。詩織が金属棒を握り、俺の左側で息を整える。佐藤、田中、由美がそれぞれライフル、鉄パイプ、バールを手に持つ。高橋はテントの中で横たわり、熱にうなされている。感染が進行しているのは明らかだ。

「来るぞ。準備しろ。」俺が低い声で言うと、全員が頷く。詩織が罠のロープを握り直し、目を鋭くする。彼女の成長が頼もしい。浩二が見たら、きっと笑ってるだろう。

その時、バリケードが揺れる。変異種だ。数は50体以上と佐藤が報告していたが、暗闇の中で正確な数は分からない。鉄骨が軋み、ロープ罠が作動する音が響く。詩織の仕掛けた罠が数体を絡め取り、動きを止める。

「今だ!」俺が叫び、猟銃を撃つ。頭を狙い、1体を仕留める。佐藤のライフルが続き、2体が倒れる。田中と由美がバリケードの隙間から鉄パイプとバールで攻撃し、接近する変異種を叩き潰す。だが、数が多い。罠を避け、鉄骨を登るやつまで現れる。

「おじさん、上!」詩織が叫び、金属棒で鉄骨にしがみつく変異種の腕を叩く。骨が砕ける音が響き、落下したところを俺がナイフで仕留める。連携が取れてきた。だが、バリケードの鉄骨が変異種の力で曲がり始め、崩壊の兆しが見える。

「佐藤、田中、援護を厚くしろ!由美、高橋を連れて下がれ!」俺が指示を出す。由美がテントへ走り、高橋を支えて奥へ退く。だが、高橋が突然立ち上がり、叫ぶ。「俺を置いてけ!感染してる…もう駄目だ!」

「黙れ!まだ生きてるだろ!」俺が返すが、彼が首を振る。「お前らを…守りたい…。」その言葉が最期だった。高橋がテントから這い出し、変異種の群れへ突っ込む。ゾンビ化が進んだ体で1体を引き倒し、噛みつかれながらも時間を稼ぐ。

「高橋!」由美が叫ぶが、俺は彼女を引っ張る。「行くぞ!あいつの犠牲を無駄にするな!」


高橋の犠牲で一瞬の隙が生まれるが、変異種の猛攻は止まらない。バリケードが完全に崩れ、鉄骨と車の残骸が地面に散乱する。俺たちは工場内部へ後退し、戦線を縮める。詩織が罠の残骸を使って変異種の足を止め、俺が猟銃で応戦する。残り弾は5発。佐藤のライフルも弾が尽きかけ、田中と由美が接近戦で戦う。

「おじさん、右!」詩織が叫び、金属棒で変異種の膝を叩く。俺がナイフで首を切り裂くが、次の1体が詩織に飛びかかる。彼女が転倒し、金属棒が手から離れる。危機的状況だ。

「詩織!」俺が叫び、猟銃を撃つ。変異種の頭が吹き飛び、詩織が這って立ち上がる。「おじさん、ありがとう…!」彼女が息を切らせながら笑う。だが、笑ってる場合じゃない。変異種が工場内に雪崩れ込み、数で圧倒してくる。

「工場は持たねえ。撤退だ!」俺が叫ぶ。佐藤が最後のライフル弾を撃ち、田中が鉄パイプで道を切り開く。由美が詩織を支え、俺が殿を務める。工場の裏口へ向かうが、変異種が追ってくる。数が減らない。50体どころか、もっと増えてる可能性がある。

裏口を抜け、俺たちは川沿いの道へ飛び出す。暗闇の中、変異種の唸り声が背後に響く。工場は崩壊し、鉄骨が倒れる音が夜を切り裂く。俺たちは走るしかない。


川沿いの道を全速力で逃げる。詩織が片腕で走り、由美が彼女を支える。佐藤と田中が左右を警戒し、俺が後方をカバーする。猟銃の弾は3発。ナイフを手に持つが、変異種の数が多すぎる。距離が縮まる。

「おじさん、このままじゃ…!」詩織が息を切らせて言う。

「分かってる。隠れ場所を探すぞ!」俺が返す。川沿いに茂みと半壊した小屋が見える。そこへ向かい、全員が茂みに身を隠す。変異種が道を通過し、一部が小屋を過ぎる。息を殺して待つが、心臓の鼓動がうるさい。

「やつら、賢い。隠れても見つかるかもな。」佐藤が囁く。

「なら、移動しながら戦うしかない。川を渡れれば…」俺が言いかけるが、遠くから叫び声が聞こえる。変異種じゃない。人間だ。俺は詩織と目を合わせ、茂みから慎重に覗く。

川の対岸に、懐中電灯の光と人影。子供と大人が数人、ゾンビに追われている。見覚えがある。工場の生存者だ。美奈子たちのグループが逃げた後、分散していたらしい。

「あの人たち…!」詩織が驚く。

「助けるぞ。川を渡れ!」俺が決断する。変異種がこっちにいる以上、合流すれば戦力が増える。俺たちは茂みから飛び出し、川へ向かう。浅瀬を渡り、対岸へ急ぐ。


対岸に着くと、子供2人と大人3人がゾンビに囲まれている。子供は10歳くらいの男の子と女の子、大人は20代の男と30代の男女。武器はナイフと木の棒しかない。ゾンビは10体ほどだが、変異種はいない。

「佐藤、援護!詩織、俺と一緒に子供を連れろ!」俺が叫び、猟銃を撃つ。1体を仕留め、残り弾2発。佐藤がナイフでゾンビを刺し、田中と由美が鉄パイプとバールで応戦。詩織が子供たちの手を取り、大人たちを俺がカバーする。

「お前ら、工場の生存者か?」俺が聞くと、30代の男が頷く。「ああ!美奈子たちと一緒だったが、ゾンビに襲われて分散した!」

「分かった。ここで戦うより移動だ。変異種が近い。」俺が言うと、彼らが頷く。ゾンビを片付け、俺たちは全員で川沿いを北へ進む。変異種の気配が背後に迫るが、距離を稼ぐ。

「ありがとう…!」女の子が詩織にしがみつき、泣きながら言う。詩織が優しく頭を撫でる。「大丈夫だよ。私たち、一緒に戦うから。」その姿に、俺は浩二の優しさを思い出す。


夜明けが近づく頃、俺たちは川沿いの廃墟にたどり着く。半壊した倉庫だ。バリケードを作る資材はないが、一時的な隠れ場所にはなる。子供たちと大人たちを中に入れ、俺と佐藤が外を見張る。

「おじさん、私、父ちゃんみたいに誰かを守れたよ。」詩織が俺の隣で言う。彼女の顔に疲れが滲むが、目は輝いている。

「ああ。お前は立派だ。浩二が誇りに思うよ。」俺はそう答え、彼女の肩を叩く。彼女が笑う。「おじさんもね。私、もっと強くなる。」

倉庫の中で、生存者たちが休息を取る。子供たちは詩織に寄り添い、大人たちは由美と田中に状況を話す。佐藤が俺に近づき、囁く。「変異種、まだ追ってくるぞ。このままじゃ…。」

「分かってる。次の拠点を探す。だが、今は休め。生き残っただけでも勝ちだ。」俺は答える。工場での死闘は終わり、新たな生存者と合流した。だが、変異種の脅威は消えない。俺たちは戦い続けるしかない。

夜明けの光が倉庫に差し込む。俺と詩織は互いを見合い、頷く。次の戦いに備え、俺たちは立ち上がる。
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