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第三章 希望
第二十一話 一時の休息
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高機動車のエンジン音が静かに途切れ、車内には不安と疲労が重くのしかかった。
「……止まった?」
詩織が小さな声でつぶやく。その視線はフロントガラス越しに見える何もない荒野へと向けられていた。ガソリンが尽き、車両は動かなくなった。
「もう燃料はないのか……」
石田二尉が眉をひそめ、計器を確認する。誰もが心のどこかで予期していた事態だが、現実として突きつけられると重く感じられる。
「このままじゃ動けない。近くに建物でもあれば……」
美奈子が不安げに周囲を見渡す。その視線の先、かすかに廃れたホテルの看板が見える。窓ガラスは割れ、荒廃しているが、雨風をしのぐには十分なようだった。
「とにかく、あそこに行ってみよう。物資があるかもしれないし、今夜はここで休むしかない」
一行は慎重に車を降りた。子どもたちは怯えた表情を浮かべ、詩織が彼らを落ち着かせるように声をかける。
「大丈夫、みんなで一緒にいるからね。怖くないよ」
詩織の言葉に健太と彩花が小さく頷き、ほかの子どもたちもそれに続くようにうなずく。
俺は先頭に立ち、石田二尉とともに廃ホテルの入り口を確認する。銃を構え、物音に注意を払いながら進む。ガラスの破片が足元で鳴り、荒れ果てたロビーには埃と古びた家具が散乱している。
「ここなら、ひとまず身を潜められるか……」
山口一曹が廊下の奥を覗き込み、慎重に確認する。「でも油断はできない。誰かが隠れているかもしれない」
部屋ごとに確認しながら進む中、佐々木隊員が扉の前で立ち止まった。
「……この部屋、施錠されてる。中に誰かいるかも」
俺と石田二尉が互いに目配せし、慎重に銃を構えた。ノブを回し、静かにドアを押し開ける。暗闇の中、何者かの気配がある。
「動くな、武器を捨てろ!」
石田二尉の声が響き、刹那の静寂が続いた後、物陰から現れたのはやつれた中年の男性だった。彼は手を上げ、怯えた表情でこちらを見つめる。
「頼む、撃たないでくれ……俺はただ、隠れていただけなんだ。ここで昔、支配人をしていて、日本中で騒ぎが起こった時に、行く場所が無くて、昔馴染みのこのホテル来たんだ。」
その言葉に詩織が安堵の息をつき、子どもたちもほっとしたような顔を見せる。状況を説明し、一時的な協力関係を築くことにした。
元支配人は「大石」といい、景気が悪くなり、ホテルが潰れた際にも、非常用の物資はそのままになっている事を思い出し、他に行く場所もないので馴染みのここへ来たようだった。
期待通りに食料や水、医薬品、ほこりまみれの毛布やシーツもあり、これらを分けてくれた。
一行は荒廃したロビーに集まり、簡易的な寝床を作った。
夜が更け、疲れ果てた子どもたちは眠りに落ち、大人たちは小声で今後のことを話し合う。
「ここでどれだけ安全にいられるかわからないけど、少しでも休息を取るべきだ」
俺の言葉に皆が頷く。だが、その表情には不安と焦燥が色濃く漂っていた。
石田二尉は窓際に立ち、外の闇を見つめている。その背中に俺は近づき、静かに言葉をかけた。
「大丈夫か?」
石田二尉はわずかに頷き、視線を外に向けたまま答える。
「……子どもたちのことを考えると、不安になる。彼らには未来があるのか、俺たちはそれを守れるのか……」
俺は答えられず、ただその隣に立ち、同じ闇を見つめた。
不確かな未来と、目の前のわずかな安息。彼らはその狭間で揺れ動きながら、ただ生き延びることを目指していた。
「……止まった?」
詩織が小さな声でつぶやく。その視線はフロントガラス越しに見える何もない荒野へと向けられていた。ガソリンが尽き、車両は動かなくなった。
「もう燃料はないのか……」
石田二尉が眉をひそめ、計器を確認する。誰もが心のどこかで予期していた事態だが、現実として突きつけられると重く感じられる。
「このままじゃ動けない。近くに建物でもあれば……」
美奈子が不安げに周囲を見渡す。その視線の先、かすかに廃れたホテルの看板が見える。窓ガラスは割れ、荒廃しているが、雨風をしのぐには十分なようだった。
「とにかく、あそこに行ってみよう。物資があるかもしれないし、今夜はここで休むしかない」
一行は慎重に車を降りた。子どもたちは怯えた表情を浮かべ、詩織が彼らを落ち着かせるように声をかける。
「大丈夫、みんなで一緒にいるからね。怖くないよ」
詩織の言葉に健太と彩花が小さく頷き、ほかの子どもたちもそれに続くようにうなずく。
俺は先頭に立ち、石田二尉とともに廃ホテルの入り口を確認する。銃を構え、物音に注意を払いながら進む。ガラスの破片が足元で鳴り、荒れ果てたロビーには埃と古びた家具が散乱している。
「ここなら、ひとまず身を潜められるか……」
山口一曹が廊下の奥を覗き込み、慎重に確認する。「でも油断はできない。誰かが隠れているかもしれない」
部屋ごとに確認しながら進む中、佐々木隊員が扉の前で立ち止まった。
「……この部屋、施錠されてる。中に誰かいるかも」
俺と石田二尉が互いに目配せし、慎重に銃を構えた。ノブを回し、静かにドアを押し開ける。暗闇の中、何者かの気配がある。
「動くな、武器を捨てろ!」
石田二尉の声が響き、刹那の静寂が続いた後、物陰から現れたのはやつれた中年の男性だった。彼は手を上げ、怯えた表情でこちらを見つめる。
「頼む、撃たないでくれ……俺はただ、隠れていただけなんだ。ここで昔、支配人をしていて、日本中で騒ぎが起こった時に、行く場所が無くて、昔馴染みのこのホテル来たんだ。」
その言葉に詩織が安堵の息をつき、子どもたちもほっとしたような顔を見せる。状況を説明し、一時的な協力関係を築くことにした。
元支配人は「大石」といい、景気が悪くなり、ホテルが潰れた際にも、非常用の物資はそのままになっている事を思い出し、他に行く場所もないので馴染みのここへ来たようだった。
期待通りに食料や水、医薬品、ほこりまみれの毛布やシーツもあり、これらを分けてくれた。
一行は荒廃したロビーに集まり、簡易的な寝床を作った。
夜が更け、疲れ果てた子どもたちは眠りに落ち、大人たちは小声で今後のことを話し合う。
「ここでどれだけ安全にいられるかわからないけど、少しでも休息を取るべきだ」
俺の言葉に皆が頷く。だが、その表情には不安と焦燥が色濃く漂っていた。
石田二尉は窓際に立ち、外の闇を見つめている。その背中に俺は近づき、静かに言葉をかけた。
「大丈夫か?」
石田二尉はわずかに頷き、視線を外に向けたまま答える。
「……子どもたちのことを考えると、不安になる。彼らには未来があるのか、俺たちはそれを守れるのか……」
俺は答えられず、ただその隣に立ち、同じ闇を見つめた。
不確かな未来と、目の前のわずかな安息。彼らはその狭間で揺れ動きながら、ただ生き延びることを目指していた。
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