魔女狩り

yk

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失った名前

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ここは異世界。私は転生して異世界人になったのだ
ここでの私は最強の戦士。チート能力バンバン使いまくって世界を助ける勇者様__。


「クッソつまんねぇの」

私は無性に腹が立って無意識にそう呟いていた

新作を見ても、人気作品を見てもあれもこれも異世界にチートに転生の三拍子だ。
たまに見るファンタジーにしては面白みのある題名の小説を読んでみてもしっくりこない。

自分にだって才能がないのは自覚している。
まともな小説を書いたこともない。
だが、流石に見飽きた。本当に飽きた。みんな揃って馬鹿じゃないのかと思うぐらいだ
そんな評論家ぶっている自分も馬鹿らしく思えてきた。

そんなことを思いながらふと時計に目をやる。
もう午前1時を回っていた
いつも3時過ぎまで小説を読んだり書いたり、アニメを見たり、好きなキャラクターのフィギュアを眺めたり、時折ネットサーフィンをしたりとなかなか無駄な時間を過ごしている私からすると、まだまだ時間的に余裕があるし、明日は午前中で学校が終わるからオールするのもいいかななんて考えていた。
毎日毎日そんな生活を繰り返していると慣れてくるものだ。
まぁ不健康であることには変わりないが
先に言っておくが私は不登校ではない。
一応親には迷惑かけたくないと思い不登校のクズ野郎だけにはなるまいと学校だけは真面目に行っているが、私みたいな陰キャで生意気のくせにコミュ障なオタクは誰にも相手されることなく学校生活を送るのである。
1人でいることにはもう慣れているからそこまで苦にはならないが、やっぱり1人や2人心を許せる友達がいたらいいなとか思ったりもする。

まぁ、今の私にはそんなことはどうだっていい。
見たい深夜アニメがあと3分で始まる。しかも今日で最終回だ。
私はすかさずテレビのリモコンを取って電源をつける。


「昨日は各地で魔女が相次いで出没していましたが、今日は大丈夫そうですかね?」

「今日は大丈夫だと思いますねー。まぁ魔女はタチが悪いのとそうでない者がいますからねっ!タチの悪い魔女はそういませんので、そういった意味でも大丈夫だと思います。」

「そうですか。それでは、各地の天気予報を…」






は?????



いや、は?????




言葉がでなかった。出るわけがない。
二次元でしか聞いたことのない「魔女」という単語を3次元で、しかもニュースで聞くなんて思ってもいなかった。


いや、まてそこじゃない。


心の中でツッコミを入れた。


いや、なに森でイノシシが出没したので気おつけてくださいねみたいな感じでサラッと言ってんの。


また心の中でツッコミを入れた。


「よし」

一旦落ち着こうと深呼吸をする。
少し冷静になったのか頭の中を整理しようと思った。
そして私の小さい頭をフル回転させて数分間考えた結果、「疲れている」というあまりにも平凡過ぎる答えにたどり着いた。
いや、でもこの答えが一番正しいのかもしれない。
この答えが出たおかげで落ち着いて深夜アニメを見れる。
いつの間にか私の頭は深夜アニメのことに戻っていた。
そして再度テレビをつける



「まったく、単純な頭ねぇ?」



自分に言われてるようだ。いや、自分に言われてる。

そこにはさっきのニュースの天気予報の背景のままで、なぜか全く動いておらず、代わりにいかにも「魔女」な感じで、キャバクラの一番人気の女みたいな大人な雰囲気のお姉さんが腕を組みながら、全身を舐めるような目で私をみていた。


「あなた名前は……ふぅん?もう要らないわね…」


そう訳の分からないことを言いながら女はテレビの画面越しで、私を指さした。



「それじゃあねぇ~」


甘ったるい声が部屋中に響き渡ったあと、テレビが勝手に砂嵐になった。 もう頭のなかパニック状態で何秒か思考停止していた。
もう「疲れている」なんてただの言い訳にすぎない。
思考回路が正常に機能し始めたのか、さっきよりも頭をフル回転させて、必死にこの非現実的な出来事を現実的な出来事に変えようとする。
だが、そんなことは到底無理だと気付き、諦めた途端意識が遠のいていった。



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