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幕末妖怪の章

ザワつく気持ち

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うーん…重い…苦し…。

「うーん…」
まだ開かない目を放置して私の上にある重い何かをどかして寝返りを打った。
寝返りを打つと更に温かい何かに包まれた。
ギュッとされ息苦しくて押しやると暖かくて硬い何かに触れた。
眠い目を擦りながら確認すると浴衣からはだけた逞しい男の人の胸が目の前にあった。
見上げるとそこには綺麗な斎藤さんの寝顔が間近にあって、私の心臓は止まりかけた。
昨日斎藤さんは私を愛してると言った。
そんな事今まで誰にも言われた事なんて無かった。
素直に嬉しかったのは本当、でも…私なんかで斎藤さんと釣り合う?
それに私はまど私の気持ちが分からない。
思わず斎藤さんの絹の様な綺麗な頬に手を添えた。
薄らと目を開けた斎藤さんは私を確認すると蕩ける様な笑みを見せた。

「雛妃…」
更に抱き込まれた私は真っ赤になっていた筈だ。
心臓が暴れて煩い。
それを誤魔化す様に私はまた目を閉じた。
次に目覚めた時、息が出来なくて覚醒した。
目を開くと目の前には斎藤さんの顔、直ぐにキスされているのだと分かった私は…斎藤さんを押しやると叫んだ。

「なっ!なっ!なっ!何を朝から!!」
私は後退り襖にぶち当たった。

「接吻だが?」
それがどうしたのかと首を傾げる斎藤さん。

「もう遠慮しない。」
肌けた浴衣姿の斎藤さんは物凄い色気を放っていた。

「雛妃…良いのか?」

「な、な、な、何が?!」

「前…」

「前?」
斎藤さんが指さす先を見下ろして私はまた叫んだ。

「きゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
私の浴衣の前の合せが全開で開いていたのだ。

「雛妃、誘ってるのか?」

「誘ってない!!」
私は堪らず斎藤さんの部屋を飛び出して知世ちゃんと私の部屋に駆け込んだ。

「ハァハァ…」
襖を閉めるとズルズルと座り込んだ。

「あら、雛妃?どうしたんですか?そんなに息を切らして。」
既に起きていた知世ちゃんが私の姿を見て驚き顔を赤らめた。
私は訳が分からず首を傾げた。

「雛妃!!おめでとうございます!!」
知世ちゃんは私の手を握り喜んだ。

「とうとう雛妃も斎藤さんと結ばれたんですね?!」

「はっ?!」

「えっ?違うんですの?だって雛妃…ここ。」
知世ちゃんが指さす所を鏡で確認すると首元に赤い虫刺されが幾つかあった。

「嫌だ!虫刺され?いつ刺されたんだろう?」
心底不思議な顔をする雛妃に知世は溜息を吐いた。

「雛妃、それは虫刺されではありませんわ。」

「えっ?違うの?」

「キスマークですわ。斎藤さんって以外に独占欲が強いのですわね?」
ニッコリと笑う知世ちゃんに私は言葉も出なかった。
知世ちゃん大人だわ。
そうよね、土方さんとそういうことしてるんだし…。
私も斎藤さんと…想像して私は茹でダコになった。

ーパタリ…

「きゃぁぁぁぁぁぁあ!!雛妃!!」
許容範囲を越えた私は倒れた。
次に目を覚ますと斎藤さんの膝枕だった。

「ぎゃぁぁあ!!」

「起きたのか雛妃。」
斎藤さんは叫ぶ私の頭を優しく撫でた。
甘い…甘過ぎるわ、斎藤さん。

「ぶぁぁぁぁぁあ!!斎藤さんが甘い!!」

「煩いよ、平助!!」

「ははは、平助にはちょっと早いかもね?」

「うわぁ、沖田さんも佐之さんも酷えなぁ!!」
いやぁぁぁあ!!皆に見られてたの?!
私は確か自分の部屋に知世ちゃんと居たはず。
何で広間に居るのよ?!

「雛妃起きましたの?」

「知世ちゃん…何で私此処に居るの?」

「それが…」
知世ちゃんは頬に手を当て困った顔をするとチラリと斎藤さんを見た。

「雛妃が倒れて、私が悲鳴を上げると直ぐに斎藤さんが来ましたの。」

「俺が此処に連れて来た。」
起き上がっても私から離れない斎藤さん。
どうしちゃったの?

「はぁちゃん、ちょっと離れて!」

「何故だ?」
私の心臓が持たないのよ!!

「雛妃、それは無理だよ。」

「そうちゃん。」

「思いを伝えた雪男はその相手から絶対に離れない。まぁ、任務の時には強制的に離れて貰うけどねえ。」
そう言ったそうちゃんをはぁちゃんは睨んだ。
それからと言うもの、トイレや任務など以外斎藤さんは片時も私から離れなくなった。
勿論寝る時は斎藤さんの部屋に連行される毎日を送っていた。
そんなある日、問題が発生した。
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