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幕末妖怪の章

夜の帳②

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「雛妃、大丈夫か?」
雛妃は力無く頷いた。
知世ちゃん毎回土方さんとこんな事してるの?
尊敬するわ!と雛妃は思った。

「雛妃!締めるな…」
辛そうにする斎藤に首を傾げると、まだ雛妃の中に居る斎藤がムクムクと大きくなって行くのが分かった。

「雛妃…」
物凄い色気で迫って来る斎藤に雛妃は首を振った。

「はぁちゃんもう無理…あぁ!いやぁぁ…!!」
2回戦が始まってしまった。
雛妃はもう嬌声を上げるだけ、ひたすら斎藤を受け止めた。
空が白み始め、6回戦が終わる頃斎藤も力尽きた。
雛妃はもう気を失っている。
斎藤は申し訳ないと思いながら雛妃を抱き締め眠りについたのだった。

翌朝、昼近くになっても起きてこない斎藤を平助が起こしに来た。

「斎藤さん、もう昼…ぎゃぁぁぁぁあ!!斎藤さんが雛妃を襲った!!あだっ!!」

「煩いよ平助、斎藤さんがそんな事する訳…」
部屋を見て沖田はそっと襖を閉めた。
雛妃は平助の叫び声で目を覚ましていた。
どうしよう、私はなんて事を…斎藤さんとあんな…きゃぁぁぁあ!!
身悶えていた。

「んっ…雛妃、起きたのか?」

「うっ!お、おはよう…はぁちゃん。」
振り向くとどんな女でも腰が砕けてしまいそうな程の蕩ける笑顔を頂きました。
あっ!ヤバい鼻血出そう…。

「雛妃…雛妃は…」

「まっ待って!!それ以上言わないで!!」
遮ると斎藤さんはとても悲しい顔をした。
違うの、そうじゃないの!!
私は斎藤さんに腕枕されたまま深呼吸して意を決した。

「はぁちゃん…私もはぁちゃんが好き。だからね、あの…うわっ!!」
言い終わる前にきつく抱き締められた。

「やっと手に入れた。ずっと手に入らないと思っていた。」
私達は笑い合った。
この日から雛妃と知世の部屋は無くなり、雛妃は斎藤の知世は土方の部屋へと移る事になった。
思いが通じあった雛妃は、両思いとなった雪男の過保護振りを甘く見ていた。
元々情に厚い雪男だ、四六時中雛妃の側を離れず甲斐甲斐しく世話を焼くのだった。
終いには雛妃に包丁や竈の火を使わせるのは危ないと近藤と土方に直談判したが、土方に「また島田の飯に戻るのかよ?」と言われやむ無く黙ったのだった。
それでも心配な斎藤、雛妃は厨房で斎藤の監視の元料理をするのだった。
斎藤の豹変に新選組の面々は追い付けないでいた。
あの無口で無表情な斎藤が雛妃と両思いになった日以来過保護な世話焼きへと変貌したのだ。
直ぐに適応したのは知世だった。
流石と言うべきか、知世曰く「何となくこうなると思っていましたわ。」だそうだ。
雛妃は斎藤を連れて白龍に報告にも行った。
番が決まったと。
白龍はホッとした様だった。

「これで断わるしっかりした口実が出来たわい。しかし、まだ嫁にはやらんからの!」
と斎藤に言っていた。
虹龍の番の噂は直ぐに妖怪界を駆け巡った。
それに伴い不穏な動きが見られるようにもなった。
斎藤の過保護に磨きが掛かったのは言うまでも無いだろう。
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