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幕末妖怪の章

平和な日常

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雛妃と知世は厨房の外で唖然としていた。

「雛妃!これで何か美味いもん作ってくれよ!!」
鼻に指を当て泥塗れの平助がニッと笑った。

「こんだけありゃ全員分賄えんだろ?」
同じく泥塗れの土方さんが着物の泥を払いながら言った。

「これ…二人で狩って来たんですの?!」
知世ちゃんが土方さんを唖然として見た。

「あぁ、雛妃が節約が何とかって何時も言ってんだろ?」

「だから俺が土方さん誘って食料調達して来たって訳だ。」
平助は自慢げに胸を張った。
確かに節約とは言った、常々なるべく節約してご飯が作れる様に工夫はしていたけど…これは…。

「だからって猪4匹もどうすの?!」
土方と平助は猪を4匹も狩って来たのだ。
私猪なんて料理した事無いよ?
鍋とかにすればいいの?

「解体は俺と土方さんでやるからさ、雛妃と知世は厨房から出るなよ。」
うん、それは任せるけど…。
私と知世ちゃんは斎藤さんに厨房へと押し込まれた。

「知世ちゃん私、猪なんて料理した事無いよ?」

「猪…鍋とかでしょうか?」
やっぱりそうだよね…。

「うーん、どうしようかなぁ。」
悩んでるうちに肉のブロックになった猪さんが運ばれて来た。

「はぁちゃん、このお肉少し凍らせてくれる?」

「あぁ、分かった。」
斎藤さんが息を吹き掛けると丁度包丁が入る位の固さに凍った。

「雛妃どうしますの?」

「まだ切ってみないとわからないけど、ちょっと考えがあるんだ。」
私は島田さんに野菜を斎藤さんに胡麻を擦ってくれるようにお願いして包丁を握った。

「さて、どの位薄く切れるかな?」
凍っているお陰で思いの外薄く切れる事が分かった。

「うん、これなら出来そう。」
それから私は只管肉を薄切りにして大皿に綺麗に並べて冷蔵庫に入れるを繰り返した。
島田さんは野菜を切り、笊に並べていった。

「雛妃、出来た。」
斎藤さんが大きな擂鉢を持って来た。

「ありがとう、はぁちゃん。」
擂鉢を受け取ると味噌や醤油、擦り下ろしたニンニク等を入れて酒とお湯を入れて混ぜた。

「これでタレはバッチリね。あとは…大根おろしも作っておこうかな?」

「俺がやる。」
斎藤さんが私から大根を奪って去って行った。

「雛妃殿、鍋はこの位あれば大丈夫ですか?」
島田さんが沢山の鍋を抱えて来た。

「十分です、一つのお鍋に隊士の方が5人つづくらいと考えて貰えれば。」

「分かりました。後は湯を入れて持って行けば良いのですよね?」

「はい、後は七輪にお鍋を乗せて下さい。」
この時代には煙が出ない炭が無いので、今日は中庭に沢山茣蓙を引いてある。

「へーちゃん達、卓袱台の用意は良い?」
厨房から顔を出して声を上げると直ぐに平助が飛んできた。

「バッチリ、雛妃に言われた通り用意したぞ。」

「ありがとう、なら後は食材を運ぶだけね。島田さん食べ方を教えるので隊士の人達に説明をお願いします。」

「分かりました。」
私は一通り食べ方を島田さんに伝えた。
私達は妖怪の世界にある近藤さん達の屋敷で夕食にする事になった。

「雛妃、知世準備出来たか?そろそろ行くぞ?」
平助以外は既に食材を持って向こうに行っていた。

「今行く!行こう知世ちゃん。」

「はい、楽しみですわ。雛妃は斬新な事を思い付きますわね。」
私達は平助君に連れられて屋敷に向かった。
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